僕と彼女の非平凡的世界の物語
とある漫画を読んで思いついた。
公開はしたが後悔はしていない。
あと、この世界を非平凡な世界と受け取るかはあなた次第ですが、私にとっては非平凡です
俺の名前は月神 零夜。
ちょっと裏の世界に詳しく、修羅場を多少くぐった事があるだけの、普通の一般男子高校生だ。
そんな俺の目の前には、奇妙な格好をした金髪の美少女が。
「……あんた誰?」
「人に名前を聞く時はまず自分から名乗れと習わなかったか?」
全く、礼儀がなってない奴だ。
しかしここは何処だろうか?
いきなり目の前が光ったと思えば、いきなりこの無礼な女とでっかい城が出てきて……
城?
まさか……
「あんた、私が誰かわからないの?」
「ああ、わからないな」
俺がそう言うと、女はあからさまに怒りながら手から火を……
火!?
まさか魔法か!?
やはりここは……異世界とか言わないよな。
「この私を、偉大なるガーデル王国の王女であり、王国始まって以来最高の魔術師である私を知らないなんて……!いいわ、愚かなあなたに教えてあげる!!」
ガーデル王国……。
それに魔術師か。
やはり、ここは異世界か。
そう思うと同時に、俺はその王女の持つ火の塊を打ち消すように右手ら気の塊を打ち出した。
月神家秘伝の気功術だ、あんな弱そうな火なんかに負けるはずがない。
案の定打ち消された火を見た王女は、驚きを隠せない表情で目を見張り、警戒しながら此方を向いて、問いかけてきた。
「あなた……一体なにもにょ……」
………
「………ごめんなさい」
「はいカットー。もうだいぶ遅いし、何より香苗ちゃんも疲れてるみたいだから、今日はもう終わりにしようか。長い間お疲れ様~」
「ごめんなさい!先輩、本当にごめんなさい!」
「いや、村橋さんは初めてのヒロイン役だし、緊張して仕方ないよ。むしろ最初にしてはがんはったほうだって。つか、謝るんならまず僕より監督でしょ」
そう言いながら僕は少し伸びをしながら、収録室から出て置いておいたスポーツドリンクを口に含む。
すると後ろから、監督に謝った後の不機嫌そうな顔をした村橋さんが……なんで?
「……香苗です」
「はぁ」
僕がそう言うと、彼女はこっちを睨み付けながら叫びじめた。
「香苗って呼んでくださいって前も言ったじゃないですか!全く!先輩は声優やってる時はあんな凛々しいのに、普段はなんでそんな抜けてるんですか!!」
……耳が痛い。
ここは……まぁ言うと色々ファンの方々が殺到してあれだから詳しい場所は伏せるが、とりあえずどこかの収録現場である。
僕こと吉崎 光一と村橋 香苗さんはいわゆる声優。
僕は5歳から今の23歳までやってるベテラン声優で、彼女は16歳から初めて今は17歳の、いわゆる新米声優だ。
ちなみにいうと、僕の容姿は短めに切り揃えた髪をヘアピンで止めてるのと、銀縁メガネが特徴の見た目草食インドア派。
彼女は滑らかな黒髪をポニーテールにした僕の肩くらいの身長の健康的美人。
彼女はもともと僕のファンだったらしく、この世界に入ったきっかけも僕だというから驚きだ。
そしてそんな彼女と僕は、何の因果か彼女が今までにやった4作品(アニメ3本吹き替え1本)のうち、すべて一緒にやることになってしまっている。
なので、いままでの憧れ等もあり、彼女は僕のことを「先輩」と呼んで慕ってくれる。
それどころか、時折お弁当などを作って持ってきてくれたり去年のバレンタインなんかお手製のハート型チョコを持ってきてくれるのだ。
正直、彼女のファンがこれを知った時の報復が怖い。
アイドル声優にはなら無いと彼女は言ってるが、それでもそーいうファンはできるものなのだ。
「いや、さすがにそれは……ファンからなに言われるか怖いし。僕みたいなにんげんでなく、ほんとに好きな人にだけ呼ばせなさい」
僕がそうやんわりたしなめると、彼女はぷぅっとかわいらしく頬を膨らませながら唇を尖らせた。
「……全く、“聖騎士カイル”のゲームではあんなに乙女心わかってる役なのにどうして現実じゃ私の事わかってくれないかな……」
マテマテマテ、今なんかとんでもない事この娘はのたまったぞ。
「むらは「香苗です」……香苗ちゃん、君さっきなんて言った?」
「……聞こえました?」
「バッチリ。それを踏まえて言いたい事があるからこっち来ようか」
僕がそう言いながら村橋さんの手を引くと、彼女は顔を赤くしてもじもじし出した。
そして誰もいない休憩室に入った途端、彼女はこう言ってきた。
「あ……あの…なん、ですか……?こんな……ところに連れ込んで」
「あんな人がいるところで言う訳にもいかないからね」
まぁ、主に彼女の沽券に関わるからね。
だが、何を勘違いしたのか彼女は赤くなった頬に両手をあて
「それって……まさか……キャー!」
とか言っている。
なんか不気味。
「む…香苗ちゃん。そろそろいいかな?」
「は、はい!!」
彼女は決意したような表情をして、こっちをまっすぐ見据えてきた。
なので僕も彼女の眼を見て、しっかり話す。
「……じゃあ言うけどさ。
香苗ちゃん、21禁ゲームはやっちゃダメだよ」
「……は?」
香苗ちゃんは理解出来ないとでも言いたげな顔をして、バカみたいに口を開いた。
上手く伝わらなかったようなので、より詳しく教える事にしよう。
「だからね香苗ちゃん。あれはし―自主規制―やらじ―自主規制―や、果てはご―自主規制―からのに―自主規制―で足や腕を―自主規制―したり生きたまま―自主規制―したり、とにかく17の君には刺激が強過ぎる。そもそもまだ18にもなっていないのに21禁は駆け足しすぎだ!」
「ちょっ!?そんな大声で言わないで下さい!!」
「しかもだよ!?主人公の声をやった僕が言うのもアレだけど、あのゲームは―――――以下自主規制―――――なんだから!あんなの君がやるようなモノじゃありません!!」
肩で息をしながら力説したあと、香苗ちゃんを見ると、彼女は下を向きながら肩を震わせていた。
さすがにここまで言われては女の子としては恥ずかしいやら悲しいやらで、そりゃぁあべしっ!!
僕が一人納得していたところに、彼女は見事なアッパーカットを僕のアゴに決めはじめた。
なぜだぁ!?
綺麗な放物線を描きながら僕の頭は床に向かって落ちていった。
そんな僕を涙目で睨み付けながら彼女は
「ハー…ハー……乙女に向かって触手やら獣姦やら真顔で言うな!!」
そう僕に怒鳴って部屋から飛び出していった。
てか香苗ちゃん。
それじゃあ僕が自主規制した意味がないじゃないか。
「うわーん!先輩のバカァ!女の敵!お母さんに言い付けてやる!!」
こう叫びながら、彼女は鞄をひっつかみスタジオからも飛び出していった。
つかお母さんて。
親御さんがここできますか。
「……こーくん生きてる?」
そう言いながら部屋を覗くのは、お髭が立派な今回の作品の監督、寺門 良樹監督だ。
何だかんだで僕とはもう5年以上の付き合いになるのだが……46のオッサンに“こーくん”言われるのはちょっと、ねぇ。
「……生きてます、なんとか」
僕は監督の問いかけに答えながら、ゆっくりと起き上がる。
いつつ……まだ少し頭がぐわんぐわんする。
「おまえさぁ……もうちょい香苗ちゃんの事考えてやろうや」
まだ残る頭痛に耐えている僕に、監督は憐れそうな眼をしながらそう言ってきた。
つか、香苗ちゃんの事って
「僕は彼女の事を考えてるからああ言ったんですよ?今から変な趣味に目覚めて欲しくないですからね」
そう僕が言うと、監督はため息をつきながらデズミーランドのチケットを二枚取り出し
「やる。香苗ちゃんと明日二人で行ってこい」
とか言いながら押し付けてきた。
いややるって。
「いりませんよ!そもそも明日も収録じゃないですか!!」
「収録は午前だから、午後いけばいいだろ。いいから誘え、今すぐに、電話で。きちんと謝るのが先だぞ」
そう言って監督は部屋から出ていった。
……何だったんだろ。
とりあえず、まず電話だな。
『……もしもし、なんですか先輩』
うーん、明らかに不機嫌だなぁ。
さっさと謝るのが吉が。
なんで謝るかわからんが。
「ごめん!変な事言ったみたいで!本当にごめん!!」
『……』
「……」
……まずったか?
『……デート』
「はい?」
『明日収録の後にデート連れて行ってくれたら許します』
デートって……監督、わかってたのか?
「わ、わかった!じゃあ明日デズミーランドに行こう!!」
そう僕が言うと、彼女は少し考えてるような間を開けた後
『……わかりました、期待してます。ちなみにデートですので、腕を組んで歩きますからね。では、おやすみなさい』
そう言って電話を切ってしまった。
腕って……彼女のファンに会いませんように!!
そう心の中で祈っていると、ケータイがブルブル震えはじめた。
着信相手は香苗ちゃん。
「もしもし」
僕がでると、彼女は一瞬黙った後に
『……私、あのゲームは先輩とのハッピーエンドになるようにしか進めてませんから』
そう早口で言って即座に切られた。
……なんなんだ?
まぁ、いいや。
それより明日、どうしょうか。
そう思いながら僕はビルを出て、車に乗ってその場をあとにした。
全く、いっちゃ悪いけどあの会社は変な人しかいないよな。
まぁ、僕もそれに含まれてるのだが。
軽く自虐しながら僕は、家へと真っ直ぐ帰る事にした。
そして次の日、僕は香苗ちゃんと遊びに行き、バカップルな事をさせられた。
あーんをしたりされたり、腕を組んで歩いたり、お化け屋敷で腰抜かした香苗ちゃんをお姫様だっこさせられたりだ。
そしてその最中、僕は後ろでコソコソしている監督やら同僚やらを見つけてしまった。
彼らに仕事はないのだろうか。
「光一さん、飲まないんですか?」
「……香苗が飲んじゃっていいよ」
「ダメです。一緒に飲むんです」
僕が後ろの監督達に意識をやってると、香苗ちゃん(今は香苗と呼び捨てにさせられてる)がそういいながら、幸せそうにジュース……デカいコップに2つの飲み口があるハート型ストローが付いたリンゴジュースを再び飲み始めた。
しかたなく僕もそれを飲むが……監督、カメラはお断りです。
全く、本当に変な人しかいない会社だ。
男女差別する訳ないじゃないが、うちの会社は女性が社長らしいが……もうちょいなんとかならんのか。
「光一さん、次どこいきます?」
「……香苗の行きたいとこについていくよ」
まぁ、楽しいしなにより香苗ちゃんの幸せそうな顔を見られただけよしとしましょう。
……監督達には後でお灸を据えるとして。
まったく……この会社は本当に平和だな。
「じゃあ、コーヒーカップに行きましょう!」
「ご飯食べた直後で!?」
こうして僕達は夜遅くまで遊園地で遊び倒したのだった。
後日
「こーくん、よかったな」
「あ、監督おはようございます。そして死んでください」
「まぁまて、君は勘違いしている」
「は?なんでですか悪あがきですか」
「いやぁ、あの写真がなければ君は今頃ひどかったよ」
「……なにがいいた……」
「あと、写真を見た社長からの伝言。“あの娘を泣かしたら殺すから”。以上」
「え?ちょまっ……!!」
監督はそう言った後、すぐにどこかに消えてしまった。
僕達の所属する、ムラハシ芸能プロダクションの事務所、一階ロビーでの出来事である。
……え?
ムラハシ……?
…………僕の勘違いだよ、ね?
……少なくとも、僕はそう思いたい。
はい、勢いでつくっただけです。
最近スランプなんでたまにはてけとーもいいかなぁなんて。
とりあえず、あの声優漫画から多大な影響を受けました。
そして声優なんて、どんな世界か知りませんのでそこらの違和感はスルーお願いしま……あ、はい。
マジ、すんません。
出来心です。
そして題名の世界とは、業界的な世界です。
これからもよろしくお願いいたします。