煙と共に
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「チューちゃんの粉、鍵穴に吸い込まれちゃったわ」
風と共に去ってしまった。
チューちゃん、正確には、チューちゃんの白骨、骨の粉ですけれど。
姿が見えなくなって、しばらく、待っているのですけれど、うんとも、すんとも、何も扉からも変化が見えてくることは、一つもない。
「どうしちゃったのかしら?やられちゃったのかしら?」
「チューちゃんが、自ら、骨になったように見えたけれど、違うのかしら?」
扉を開いて、先に進みたいネーブルたちの気持ちをよそに、ドスンと前に立ちはだかる上層階へと続く扉は、いかんともしがたく、微動たりともしていませんことよ。
「待っていても、埒が明かないわね」
「オロチちゃん、どうするつもり?」
「チューちゃんの粉と同じように、鍵穴に入ってみようかなって」
「こんなに小さな穴に、入れるの?」
「頑張れば、ねじ込めると思うんだけれども」
「オロチちゃんって、すごいのね、ねっ、カーチン」
「スーチン、オロチちゃん達は、魔法の上級者よ、すごいのよ」
「カボスちゃん、私は、魔法を使えませんけれど」
「魔法なしで、どうやって、こんな小さな穴へ」
オロチちゃんは、ネーブル、カボス、スダチには、まだ見せていないもう一つの姿を見せつけるように、ネーブルの腿よりも太い大蛇へと変身していく。緑の肌の美しい娘から、緑色に照り光る大蛇が、その鎌首をもたげていた。
二股の良く動くベロちゃんが、ネーブルの頬を舐めまわしている。
「あぎゃっ~っ」
「ネーブル、私よ、失礼ね、お風呂で、尻尾とベロは、見たでしょ」
「そ、そ、そうだったかしら?でも、全身は、初めてでしょ」
「そんなに怖がらないでよ、怖がっていると、食べちゃいますよ」
「た、食べないで」
「わーい、オロチちゃん、すごーい、変身できるのね、カーチンの言うとおり、すごいわね」
三人が、度肝を抜いて、見開いた眼も、既にパチクリともできない様子を見たオロチちゃんは、説明することもなく、今度は、みるみると身体を小さくしていく。そう、ミミズくらいにまで、なったところで、大きな扉をくねくねとよじ登っていく。そして、鍵穴目掛けて、その身体をぐいぐいと、潜りこませていく。
身体の半分くらいまでが、鍵穴に飲み込まれたが、あと半分の尻尾までが、入り込めずに、トンボ採りの指の動きの様にぐるんぐるんと回転している。
「苦しいの?オロチちゃん」
ネーブルがオロチちゃんの尻尾を掴んで、鍵を開けるように、右へと捩じりあげる。捩じられているオロチちゃんは、ネーブルの手を振りほどくように、更に尻尾を回転させる。にっちもさっちもいかないと判断したカボスも加わって、オロチちゃんを掴むと、今度は、捩じることなく、二人がかりで、鍵穴から引き抜くことに成功した。
スパンと音は、しなかったが、オロチちゃんが鍵穴から外れると、すぐさまに、緑の美しい肌をした美少女となって、扉の前に立ち上がった。
「カボスちゃん、ありがとうね、ネーブルは、力任せに押すんだもん、痛いじゃないよ」
「押してないわよ、捩じったのよ」
「身体が、ちぎれそうだったわよ」
「ごめんね」
「それにしても、中にチューちゃんの粉が詰まって、通り抜けできないのよ」
「あら、そうなの?粉が詰まっているの?」
「チューちゃんは、粉になって、中を通り抜けたわけでもないのね」
「何をしているんだか・・・」
また、一から、扉を開ける算段をしなくてはならないと、オロチちゃんとネーブル、カボスが、考え込んでいると、スダチが自らの金髪の髪をを束ねて、その毛先を鍵穴にいれて、あたかも筆で穴を掃除するように、コチョコチョしている。
コチョコチョっとして、フゥ~っと、息を鍵穴に吹き入れた。
「もしもし、きれいになりましたか?くすぐったくありませんか?」
トン・トン・トン
スダチが、扉をノックしながら、鍵穴に話しかけている。話しかけられた鍵穴は、何やらツーンと骨が軋むような音を返してくる。
聞き覚えのあるリズムを連想したカボスが、片方の靴を脱いで、踵で扉を叩く。
トン・トン・トン
ツー
トン・トン・ツー
オロチちゃんも、聞き覚えのあるリズムのノックに、扉を注視している。
扉の鍵穴から、薄っすらと煙が立ち込めてくる。
粉が舞っているのではなく、白い煙が鍵穴から這い出して、扉の淵をなぞるように走っていく。扉が浮き出るように見える感じに、扉を白い、唯々、白い煙が外側を縁取りながら、カボスのトントンに応えるように、ツーを鍵穴から捩じり出している。
カボスのトントンと呼応しながら、白い煙は、揺れている。そして、鍵穴のツーで、揺れをなくして、なだらかに伸びていく。再度、カボスがトントンすると、ツーっと力ない音が鍵穴から漏れて、鍵穴から、白い粉が噴射してきた。まるで、間欠泉をも思い起こさせるその光景に、扉の前の四人は、呆気に取られている。
間欠泉のような噴射が収まると、四人の足元に真っ白い小さな物体が蠢きながら姿を現している。
チューちゃんだ。
「チューちゃん、骨から、元に戻ったのね」
扉の淵から扉の形をした煙が赤く発光している、いや、発光というよりも、燃えているのが見て取れた。
炎は、燃え広がるわけでもなく、扉の淵だけを燃している様に見える。煙が導火線になって扉の淵、枠だけを燃やしているのだ。
チューちゃん、やるな、自分の身を自在に燃やして、骨になったり、元に戻ったりを繰り返しているだけのことはあるな。炎を操れるとは、これは、恐れ入ったとしか言いようがない。
しかしながら、トントンツーが無いと、身を焦がすのと異なり、着火できないとこなんざ、女神の安全装置が効いているのだろう。
扉が燃えている。
淵が、枠が、燃えている。
四人と一匹の目の前で、扉の淵、枠が燃えて、扉本体がバタンと、倒れ落ちてきた。扉が倒れたってことは、そうその通りである、扉の形の穴が最上階へと続く階段を見せて、正に上がってこいと四人と一匹を誘っているのである。
オロチちゃん、ネーブル、カボス、スダチ、今度は、カボス肩に乗ったチューちゃんの一行は、目の前の扉の形の穴を潜って、上へと繋がる階段を登っていく。
最上層へ、繋がるであろう階段は、天国への階段なのか、はたまた、十三階段なのか、登ってみない事には、始まらないことは、俺じゃなくても、分かっちゃっていることのようだ。
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