白い粉
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「あっ、あは~ん」
やったぜ。
なんてカワイイ声を出しちゃっているの
そうじゃないでしょ、見つかっちゃいけなかったのに、本能の力に負けちゃった俺って、悪い子ちゃんなのかしら。
「マーク、何をしているのよ」
「バカねぇ、わざわざそんなことしなくても、私にフゥしてよ」
「ロコ、ズルいわよ、私にフゥよ」
「あらあら、ロコちゃんもルルちゃんも、そこなの?」
「マーク、お耳フゥって私にもしてね、お耳掃除の後に」
「マリーは、お耳掃除をマークにしてもらっているの?」
「うん、やさしく竹の耳かきで、ふわふわ綿毛つきの」
よそからは、何も見えない空間を五、六人の働きバチが取り囲んで間合いをどんどんと詰めてくる。まるで、追い込み漁の魚になった気分です。
「何なの、この人たち、あっちへいってよ、これから、私がお耳フゥしてもらう順番なのよ」
マリーの発した言葉にピクンと反応するように、五、六人の金髪働きバチは、踵を返して振り向くと、元いた持ち場へと戻っていく。
これまた、極自然に、自然な動きをみせる。
「これも、言葉を操る力なのかしら?」
「持ち場に戻って、何もなかったと伝えなさい」
ロコが、マリーの言葉にかぶせるように、追い言葉を投げかける。
「こんな多くの娘たちをどうするの?」
ルルの問いかけに見えない空間に向かって返答を返す働きバチ。
「リンラン様とランリン様の洗礼を受けさせて女王へと引き渡すのよ」
リンラン?ランリン?
女王への引き渡し、分かった様で、よく分からないけれど、ひとまず、大事に至らなくてなによりと心を撫でおろす。
「集団の前の方で別の感じの娘がいるわね」
「あの二人が親玉?かしら?」
二人の女神は、二人の他の金髪娘の働きバチさんと異なる赤みを帯びた金髪娘に気が付いたらしい。
キーンっと金属音に近い耳鳴りが講堂内に響き渡る。聴き慣れたアンクレットの落下音とは、明らかに異なる音が消え去ると、今、振り向いて元へと戻りかけた働きバチが正気を取り戻した様に、俺達のいる空間へと戻って来る。
解けたな
言葉の魔力は、掛けた者が解除しない限り、解けなかったんじゃなかったっけ?
「何者かが紛れ込んでいる、扉を閉じてここから出すな」
澄んだ一際と偉そうな声が講堂内に届いている。これが列の先頭にいる二人、特別な赤い金髪娘、リンランとランリンだろう。こいつらが、言葉の魔力を一瞬にして無効化させてしまったのに違いないだろう。禁断の果実の言葉を操る術を即座に無効化して、解き放てる者なんて、女王?次期女王?位しか考えられない。
「隠れてばかりもいられないわね」
「エアルが、イタズラしちゃうからでしょ」
反省
俺達六人は、カモフラージュを解いて、その姿を講堂内にいる全ての金髪娘達に見せつけた。
勿論、その一際赤みを帯びた二人の金髪娘にもである。
城内をごった返すように人の流れが波となって埋め尽くしていく。
その後ろからネーブルを先頭にカボスとスダチが突き進み、もちろん、しんがりは、頼れるオロチちゃんがどっしりと構えている。
「チューちゃん、城内の探索をお願いよ」
オロチちゃんの肩から飛び降りたチューちゃんが人混みの中へと潜り込むように消えていく。
「オロチちゃん、下の階からいきましょうよ」
「ネーブル、みんなに果実を持たせて、みんなにも、手助けしてもらいましょうよ」
「そうね」
「じゃぁ、アタシに言葉のマホーで指示させて」
「スーチン、大丈夫?」
スダチは、他の者に果実を食らわせる様に、大声を張り上げている。ネーブル、カボスが、次から次へと果実を渡していく。
ここでの果実は、南京豆である。小さくて大量に持てることと、チューちゃんの大好物だからということ。
そもそもの発端となった、容疑の元である南京豆が適当であったのかもしれない。だって、果実の見た目や味に関しては、魔力には、関係のないことなのですもんね。
「鬼は外、福は内」
「スーチン、それは、大豆を撒くときでは?」
「カーチン、いいでしょ、禁断の樹木の所で、ハタンちゃんだってしてたもん」
「ハーイ、みなさん、この実を食べてくださいな」
「これを食べると、みんなも言葉を操りし者になれますよ」
「言葉を操りし者???」
「えっ、ええええ~っ」
城内を歓喜の声の大波が、どよめきながら、隅々へといきわたっていく。その声は、声だけではなく働きバチの人海となり、各階層へと広がって、主力の兵隊バチが南へと行進していってしまった城内全域をほぼ同胞で埋め尽くすことに成功した。
残りは、最上層階のみである。
最上層へと続く扉は、堅く閉ざされており、いくつもの魔法で防御を施されているもようである。
「ここを入って、おエライさんをやっつけましょうよ」
「魔法が掛けられていて、開かないわよね」
「言葉の魔力は、女王だけが対応できるなら、それ以外の者なら、私たちのが優位よね」
しかし、入れなければ言葉の魔力自体が使えないんだよなぁ。
「ネーブルやカボス、スダチは、魔法使えるんだから、何とかできないの?」
「オロチちゃん、無理言わないでよ、私たちより上位の者たちばかりなのよ」
「そうなんだ、どうしようかしら、チューちゃん、得意の壁抜けができないかしら?」
チューちゃんは、そのホッペタに南京豆をいっぱいに忍ばせてオロチちゃんの問いかけを聞いている。ロコの様にチューちゃんと会話は、ここにいる者は、することはできないが、ロコの指示もあって、意味あいは、理解してくれているらしい。
得意の壁抜けをできる空間を探している様であるが、頑丈な扉の前では、ほんのわずかな隙間も見付けることができない状態である。ゴキブリでさえ、通り抜けることのできない密閉性を保つ扉なのだ。
流石と言うべきだろう。
すると、チューちゃんが、ファミリーの巾着同様な黄緑色の蛍光を発しながら、その光をどんどんと強めていく。
「光っているわよ」
「光っているわね」
「ホタルネズミ?」
オロチちゃんが、輝くチューちゃんを覗き込むと、黄緑色の光が一段と強くなり、黄緑色の炎に変化し、ボウボウとチューちゃんの身体を包み込んでいく。更に、激しくボォーっと炎に飲まれたチューちゃんは、燃えながらその姿を消していく。
炎が消え去るとそこには、白い白骨のみが、残っていた。
「燃えて、骨になっちゃったわよ」
「どうなっているのよ?やられちゃったのかしら?」
「私に聞かれても困るわよ」
白骨のみになったチューちゃんは、その姿を維持していられないのだろう、崩れながら床へ粉々になってしまった。何処からともなく吹いてくる風に乗って、白い骨の粉が舞い上がり、頑丈な扉へと登っていく。
不思議なことに風に乗った白い粉は、一筋の線の様になって、扉の鍵穴へと吸い込まれていく。
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