出荷と搬入
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今日の入荷は、少々ではなく、いつもよりかなりの増量、増し増しの様子を見せている。
ここは、港ではなく、広大な庭園の中にある講堂、物凄い人数の金髪娘が、後ろ手で縛られて、ニ、三十人を一塊として並ばされている。
その一塊につき、一人の兵隊ハチの金髪娘が受け持って、ある二人の赤金髪の偉そうなハチさんと見受けられる者の前に移動させていく。
二人の赤金髪娘は、一塊に向かって、パクパクと口を動かすと、次の一塊を促すように、それぞれの受け持ち金髪娘に目配せしている。
二人の赤金髪にパクパクされた集団は、今までしゅんとしていた感じからは嘘のように、朗らかな表情になって、また、恐怖心からも解放された様子で、次々と講堂から連れ出されていく。そして、隣の教会のような建物の中へと吸い込まれていく。
講堂に集められて、次の場所である教会へと流れ作業そのものである。
まるで商品をロット毎に区分け整理して、出荷させるための工場から配送センターといった風にしか見受けられない。
「今回は、上物だけじゃなくて、城の下層階にいたほとんどを送り込んじゃうんでしょ」
「そうらしいわね、禁断の果実よりも、根こそぎ処分ってことなのね」
「でもさぁ、仕損廃棄じゃなくて、叩き売りなんかして、ブランド価値は、大丈夫なのかしら?」
「そこそこ品質は、安定しているでしょ、見る限り、だから、ここで、記憶書き換えと選別をしているんじゃない」
「あと何回、記憶書き換え作業をしないといけないのかしら?」
「まだまだ、城から送られてくるから、今日は、一日中かかるんじゃないかしら?」
「うんざりね、早く、お茶にしたいわよね」
「まぁ、これで、いい生活をしているんだから、これも大事な仕事よ」
「仕事ね、そうね、母上のタマゴ生産に比べれば、まぁ、楽しちゃってるけどさ」
赤金髪の二人は、いつもは、優雅に庭園の東屋で日がな一日をお茶とおしゃべりに費やしている次期女王、リンランとランリンの双子姉妹である。
この二人が母上と呼ぶのは、勿論のこと、この国の頂点、女王であるシトロンなのだ。
隣の教会のような建物の中で、ピンクゴールドの髪が一際目立つ女神の如く眩しい美女が、列をなす金髪娘の最前列に相対している。
ピンクゴールドの女神ごとき美女は、祭壇の中心に置かれている大きな鏡に話しかけている。
話しかけられた鏡は、まるで鏡面を水面の如く波打たせて、一列に並ばされた金髪娘を次から次へと飲み込んでいく。
飲み込んでいく?
鏡の中へと入っていく?
消えていく?
何とも表現しがたい光景だが、絶え間なく続いている金髪娘の行進が、鏡の中へと向かっているのである。
「今回は、品数が多い、ゲトレを中心に倉庫へ搬入して、そのまま、市場へ出してちょうだい、ただし、七掛けまでよ、いつもは、八掛けだから、飛ぶように捌けるはずよ」
「シトロン様、御意にござります、では、行ってまいります」
事付けを授かった隣の講堂から、ロット毎に担当している金髪娘も一緒に鏡の中へと消えていく。
この繰り返しが、半日続き、金髪娘の列が、一区切りとなった。
「本日の出荷は、ここまでです、また、明日、お願いいたします」
「そうか」
「既に、城の下層階の殆どの者を龍の園に連行できました、本日分と併せて半年分くらいの出荷となります」
「選別を厳しくしていない分、安売りだけど、これで、ラッカセイのことも静まるでしょう」
「禁断の果実の時より、大がかりなのは、やはり、この龍の園からの持ち出しだからですか?」
「その通り、ここを知る者は、この国を運営する一部の者のみよ、禁断の果実は、あなた達も知らないでしょ、私以外は、知る者はいない、だから、私的な処分なのよ」
「左様ですか」
「禁断の果実は、ほぼほぼ、見付けられないもの、だから、処刑処分で済ませたのよ、それに、果実を食べた者は、記憶の書き換えができないもの、売り物に適さないわ」
「左様ですか」
禁断の果実の効能は、言葉を操る魔力。女王が持ち合わせているものと言われている。
恐らく女王と次期女王が持ち合わせているものとは、本当は、少し違うのかもしれない。
彼女たちのものは、その上位の力なのだろう。
講堂での口パクパクが、きっとそれだろう。パクパクされた金髪娘は、とっても朗らかに見えたのは、禁断の果実と違って、かけられた者が、かけられたことに気が付かない、記憶操作もオマケつきなのだ。
魔法としては、女王と次期女王たちの使う力の方が、当たり前のような感じもする。正当な魔法の効能といえそうだ。
考え方によっては、禁断の果実の言葉を操る魔力の方が、根底に、優しさがあるのかもしれない。嘘を嘘として認識させてくれるからである。
元々の禁断の果実の樹木は、人の心を表現する力が本質で、求める果実を与えてしまうことこそが、禁断と称される所以と想像できる。
まるで水の中を歩いているようなところから、壁となっている水面に波紋が広がる一点を先導役の金髪娘と大勢の金髪娘が突き抜けるように、抜け出した先は、松明が灯される洞窟の広い空間であった。
待ち構えていたのは、監督官らしき金髪娘と屈強な男ども。
洞窟の壁に掛かった鏡から湧いて出てくる金髪娘一人ひとりに、鉄でできた手枷、足枷を嵌めて、次から次へと美しき金髪娘たちは、洞窟の坑道へと連れていかれる。
坑道を抜け出すと、日の光が眩しく辺りを真っ白な光景にしてしまう。やっと、目が慣れてくると金髪娘たちには、もと居た城に舞い戻ってきたと錯覚するような岸壁彫刻が目に飛び込んでくる。
しっかりと見ると、岸壁も岸壁彫刻も城の物の規模ではなく、小ぢんまりしたものであることを認識する。
金髪娘たちは、向かいのやや大きめのロッジへと送り込まれていく。大き目とはいえこの人数が入れるとは到底思えないのだが、今日ここへやってきた数百人の金髪娘は、一人残らずに大き目のロッジ、素材を生かした丸太小屋に収まってしまった。
「買手は、どんな具合かな?」
「いいところ、十人から十五人ずつ、二、三の商人ってところですな」
「たったそれだけなのか?」
「それでも、市場では多いでしょうな、希少な高級ブランド龍の花ですよ、相場を下げないように小出しに」
「わかった、いつも通りに、在庫は、六角収納で冬眠保管させよ」
「承知しておりますわい、在庫が丁度、捌けていますが、今回は、ちと多いですね、数年分の在庫になりますわ」
「早めに、捌くように、まだまだ、搬入するぞ、このゲトレで余れば、他の市場に回すようにしないとな」
「へいへい、ゴールドを求める者は、多く、人気もありますので、飛ぶように捌けるとは思いますけどね、手間賃も弾んでくださいませな」
「女王からは、八掛までと言われている、その中ならば、お前たちの利幅は、自由にしていいぞ」
「では、いつも通りの百万ゴルゴットで、二十万が、取り分で、八十戻しですな」
「バカ者、それでは、ひとつも勉強していないじゃないか、満額値引きなしか」
「いえいえ、もともと、値引いて百万ってことで、通っておりますからな」
「まぁ、上手くやってくれ」
どこの国でも、どんな商売でも、はたまた、どんな組織でも不正や、ずる賢い者は、いるのだろう。
恐らく担当の金髪監督官によって、卸値が違うのかもしれない。今回は、女王は、七掛といっていたのだから、一割がこの金髪監督官の懐にスルリと入ってきちゃう計算だ。
給金だけでなく、マージンをピンハネするのだから、この強烈な上意下達の国でも統制は行き届いていないのだろう。
そんなものでしょうがな。
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