龍の花
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切り株の前で、俺は、しっかりとした重みを背中に感じて立っている。
眼の前には、これまた、可愛い美少女が二人、金髪とブルネットの髪を靡かせてこちらを見つめている。七つの子ばかり、三人になっちゃった。
ロコとオロチちゃんが、俺の背中から、金髪のカワイコちゃんを降ろそうとすると、悲鳴にも似た声が草原に響き渡る。
「マーク、ここは、どこなの?早く、ティーンに帰りましょうよ」
「マリー、大丈夫だから、降りておくれ、独りにしないから、手を繋いであげる」
「もう、しない???独りぼっちに・・・」
「しないよ、でも、お仕事のときは、お留守番出来たでしょ」
「できないもん、見えるところで、待っているだけだもん」
「じゃぁ、見えないところにいかないよ、手を離さないから」
「うん」
「どうなっているの?見ていたけれど、マリーは、ショックで七つの女の子に戻っちゃったのね」
「そうみたいなんだよ、ロコ」
「おおっ、女神さま、クリスちゃん、ティーナちゃん、何とかしておくれよ」
「自分で自分に掛けた魔法は、自分でしか解けないわよ、ねぇ~、ティーナ」
「そうよね、そのうち思い出すんじゃないの?」
「そんな、他人事な、そのうちって、どのくらいなの?」
「マークが、マリーを待たせ続けた二百年くらい?」
「冗談は、よしてくれ、あっ、そういえば、どうして、クリスちゃんまで、美少女バージョンで来たの?」
「バカね、マークがご所望って聞いたからよ、それに、ティーナより、可愛いでしょ」
「何を言っているのよ、このカワイ過ぎる私に勝るわけないでしょ、クリスごときが」
「何言っているんですか?女神様でしょ、お願いしますよ」
美少女が目の前に三人、なかなかどうして、マリーって本当に器量よしなんだな、肩越しから覗く顔を眺めているけれど、長い睫毛、青い瞳、靡く金髪、本当に美少女だ。
本当にカワイイ。
将来が楽しみでしかないって、成長したマリーも知っているけどね。成長したマリーも本当に女神様みたいな美形だものね。改めて。
「しばらくすると、思い出してくれるんですよね?マリーは」
「そうね多分ね、しばらくこのまま、様子を見ましょうよ、楽しそうだし、可愛いじゃないよ、マークの大好きな金髪美少女でしょ」
「やっぱり、マークは、ゴールド好きなのね」
「ちびっこは、まだ、綿菓子も、かた焼きそばもないでしょ、私の勝ちよ」
「スーチン何言っているの」
やっとのことで、背中から降りてくれたマリーは、俺の左手を独占して二度と離してはくれそうもない。空いている右手に握っている囲炉裏端から拾ってきたマリーの化粧筆と賽子を見つめて、大事な物まで忘れてくるマリーが本当に心配になる。
大勢の金髪娘が、押し寄せる波のように城の中を移動していく。大勢の金髪娘たちをこれを凌ぐ大勢の金髪娘たちが飲み込んで制圧していく。
そう、ここは、カルボーア本拠の岸壁城郭。
破られることのない地下の空間をひん曲げたような牢屋から罪人が消え失せた。
三施設から合わせて七人の罪人が跡形もなく姿を消したことで、上層部でもみ消すこともできずに、ついに、この国の意思決定そのものである女王の耳に、南京豆騒動が伝わった。
「戒厳令ですって?」
「軍が、城内にいる者を手あたり次第に捕らえているぞ」
「逃げましょう」
「何処へ」
「外だ、とりあえず、外に、森へ逃げよう」
城内は、スズメバチの襲撃を受けるミツバチのように、力の差は歴然である。
ただし、本当のミツバチの様に戦いを挑むものは皆無で、逃げ惑う者と無抵抗に捕らわれるで、ごった返して大混乱、収拾のつかない有様である。城の外では、捕らえられた者が縛り上げられて繋がれて列をなして何処かへと連行されていく。
それを逃れた者たちは、西の森、東の森、北の森、南の森へと散り散りに逃げていく。そして、これを追う兵隊ハチ。
縛られて自由を奪われた大勢は、腰ひものような物で数珠繋がりになって、南の森の方向へと連行されていく。南の森の方角は、足を踏み入れてはならない場所として、いにしえの頃からこの国に伝わっている方角である。
ある者は、南の森は、棄老伝説より不要者を処分する所と言ってみたり、河原の辺りは、処刑場であると言い出す者もいて、連行の列では、諦めと恐怖心で騒ぎ出すことよりも、どうにもならない状況に、一言たりとも発することも出来ないというほどに、静かに歩く、歩みの音以外は、何も聞こえてこない。
足音のみしか音を発しない隊列は、途切れることなく南の森へと進み入れていく。
「ラッカセイね、ここから持ち出した者がいるのかしらね」
「よくこれが、落花生とわかったわよね」
「彼方の土地から持ってきたものが、よく育ったものよね」
「もっと珍しい物も育ててみましょうよ」
「良い物を手に入れるには、良い物を売りに出さないといけないから、選別が必要ね」
いわゆる黄色の強い金髪ではなく、銅のような赤みを帯びた金髪の二人が大きな庭園の東屋で話をしている。見た目、物腰から他のハチさん金髪娘とは、明らかに異なる美人さんは、ことも有ろうか南京豆をお供にお茶を優雅に飲んでいる。
「リンランは、今度、何が欲しいの?」
「私はねぇ、遠い異国にあるらしい、明日が見えるお告げの笛が欲しいわね、ランリンは?」
「そうねぇ、欲しいものは、なんでも持っているけれど、あえて言うなら、竜の涙と言われる流れ星の欠片かな、空想の代物よね」
二人がいるのは、勿論カルボーアである。
今まさに、大勢の者たちが連行されつつある城から見て南の森の中、上層部でも、最上層、女王と次期女王、その側近が運営するカルボーアの真の本拠地だ。
龍の園、ドラゴンガーデンなのである。
のちのち知ることになるのだが、この国では、一部の者のみが知る呼び名らしい。女王を頂点の龍に見立てた隠語らしい。外の世界では、龍の園、龍の花とその筋には知られていることもあるらしい。龍の花というと一部の世界では、超一流品のブランドであり、その産地として龍の園が名を馳せているらしいのだ。
それは、金髪奴隷
「マーク、禁断の果実も、樹木本体も、手に入ったことだし、この切り株ちゃんにサヨナラしましょうよ」
「そうだね、ルル」
「樹木の事は、何か分かったのかい?美少女お二人さん?」
「祠にしても、ロコちゃんの木片や、笛については、分からないままよ」
「そうなんだ、でも、ロコの木片への同化具合といい、恐らく同じ木だよね」
「うん、そうだと思うわ、だとすると、切り株でも残しておくのは危険?タイムトンネルも塞いじゃったら」
「それな、壊さないなら、塞いじゃうくらいは、いいかな」
「そうね、女王に悪用させないために、軽めに塞いじゃいましょ」
「ルル、いつものことだけど、万能金属で、塞いでおくれ、切り株にバターを塗るようになでつければ、穴も一緒に塞がるはずだよ」
「マーク、了解、やってみるわね」
ルルは、いつものように巾着からひとつまみの金属を捩じり取ると、もう既に元の大きさに戻っている金属を巾着にしまって、摘まみ出した金属片を切り株において、何にでも加工できる金槌で塗り伸ばすように押し広げていく。鉛色の金属が、金箔の様に押し広がり、あたかも切り株全体をクロムメッキしたように仕上げていく。
そのキラキラした滑らかな切り株を俺は手で撫でてみたところ、吸い込まれることもなくなった。時間のトンネルも、トントンが掘り開いた狐穴も、見事に塞がっている。
コーティングされたのだ。ルル、一段と腕を上げたんだね。
「マーク、仕上がりは、どう?満足できる?」
「大満足だよ」
「ルルちゃん、その金槌を使いこなしているのね」
「クリスが、渡したの、それ、じゃあ、私も、何かあげるわね」
「ティーナ様からは、この羽の蛇紋章を預かっていますので」
「それ以外を考えておくわね」
「ティーナ様、私にも」
「私にも」
「そうね、ロコちゃんとオロチちゃんにも、考えとくわ」
「お願いします」
「楽しみにしています」
「女神も揃ったことだし、エアル、かわいいミツバチちゃんを解放しにいきましょうか」
「はい、そうしましょう、ロコ、果実の箱を忘れないでね」
「はい、しまったわよ」
「マーク、この人たちは、マークのオトモダチなの?」
「マリー、やっと、ちゃんと話せる気分になったんだね」
「みんな綺麗な女の人たちだし、かわいい女の子もいるのね」
「マリー、マークの手を離さないことよ」
「あなたは、どなた?」
「私のことも分からないなんて、重症ね、マークのことだけしか、頭になかったってことよね」
クリスティーじゃなくて、クリスちゃんだから、分からないんでしょ。
そう、信じたいと思う俺をピッタリと隣から見上げているマリーは、本当に可愛いじゃないか。
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