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七つの子

今日もご覧いただき、ありがとうございます

ぜひ、ご感想をお聞かせください


「マーク、四・五の賽子が光っているわよ」


 切り株の上に投じられた賽子二つは、出目を出したまま、いつもの黄緑色の蛍光を点滅させている。


 何か意味があるのだろうか、賽子が光ることは、今までもあったが、何処かへと導かれる様な、シグナルというような印は、どこにも見当たらない。


「チカチカ光るだけで、特段、何もないんだよなぁ」

「でも、光るのは、普通じゃないんでしょ?」


「うん、珍しいというか、いつもは、光ってないってくらいだよ、光って祠が出てくるとかさ」

「女神様は、もう、祠無しでも、いつでも来てくれるものね」


 賽子の点滅は、まだ続いている。


 結構長い感じがする。点滅以外は、何も起こらないが、やまない点滅っていうのも、意外と珍しい感じがしてきたぞ。


 アンクレットやオロチちゃんの尻尾は、点滅していないことから、スーパードラゴンナイトが原因で点滅しているのだろうか、それとも、俺の賽子だけが、点滅しているのだろうか、女神がいないので、耳飾りのスーパー石を確認できない。


 一応、確認だけでもしてみるかな。


 俺は、巾着に結び付けられている一本の金髪を握りしめて、念を投じてみる。


「おおっ、俺の可愛いマリーちゃん、七つの可愛いマリーちゃん、俺の声が聞こえるかい、応答願いま~す」


「あっ、マリーを呼び出すの?」

「しっ、呼び出すんじゃないよ、髪の毛の念通信で、マリーの賽子の様子を確認するんだ」


「マリーのことだから、来ちゃうんじゃないの」

「そうかなぁ、そうだよねぇ」


「来ちゃうかな?」

「来ちゃうでしょ」

「来ちゃうわね」


 マリーもまた、プラムと一緒に、六の出目を出したまま点滅している賽子を見つめている最中である。プラムが賽子に顔を近づけて凝視していると、マリーが突拍子もない声を上げる。


「きゃっ」

「どうしたの?マリー」


「あっ、あっ、マークが呼んでいるわ」

「えっ、お呼びが掛かったの?」


「うん、掛かったみたい、ヤッター」

「マリーだけ?」


 マリーは、指輪の石に触れて、今にも押し込んで合言葉を唱えそうな感じで喜んでいる。


「マリーちゃん、俺の可愛いマリーちゃん」

「あっ、マーク、私を呼んでいるのね」


「聞こえるかい、マリー」

「うん、聞こえるわ、髪の毛の念通信なの?」


 マリー自身がマークに施した髪の毛の念通信が、送受信を確認した。


 マリーの頭の上に通信相手の幻影も浮かんでくる。映像付きの通信の成功だ。


 傍にいるプラムは、勿論の事、回りにいる三桃娘にも、音声も映像も明瞭に確認できる状態になって、感度良好です。

 マリーは、やっとのことで、自分にもお呼びが掛かったと大喜びで声を発する。


「マーク、会いたかったわ、寂しかったのよ、いい子でお留守番していたんだから、ご褒美お願いね」

「マーク、マリーだけじゃなくて、私も呼んでちょうだいよ」

「私たちも~」


「あっ、みんなにも通信、ちゃんと、聞こえているんだね、見えているんだね」


「うん、ちゃんとみえてま~す」


「流石に、俺のマリーの髪の毛通信だ、優秀、優秀、こちらも見えてまーす」

「嬉しいわぁ、俺のマリーって、かわいい・かわいいマリーちゃんって、嬉しすぎる」


「えっ、俺のかわいいマリーなんていったの?私というものがありながら、私は~」

「プラム、忘れていないよ、かわいい俺のプラムちゃん、チュー」


「あっ、ダメっ、私だけの通信よ」


「そうだ、マリー、一つ確認したくて、念を送ったんだよ」


「なに?なに?なんでも聞いてちょうだいな」


 ウキウキのマリー、こんなにご機嫌なマリーを見るのは、久しぶりのことである。呼び出しじゃないことが分かったら、ご機嫌もナナメに急降下しちゃうのかしら?


「マリー、マリーの賽子を見てくれよ、光ってないかい?」

「光っているわよ、ついさっきから、チカチカしているわ」


「本当、俺のもチカチカしているんだよ、出目の四、五を出したまま」

「私のは、六を出して、チカチカ光っているのよ」


 四・五・六 チンチロリンのシゴロ 倍額


「俺は、これからを念じてサイコロを投げたんだ、丁半でなくて、チンチロリンだったんだね」

「私も、マークを思って、賽子を転がしてみたのよ」


「幸先良いってことだね、それで光っていたのか、三つの出目を見せる為だったのか」

「そうなのね、いいことしたの?私」


 俺の手元の賽子とマリーの囲炉裏端に転がっている賽子は、黄緑色の点滅がとけて、普通のサイコロに戻っている。ということは、本当に、出目を確認させるために光っていたことが分かった。


「オッケー、マリーありがとう、意味が分ったよ、じゃぁ、また、連絡するね」

「えっ~っ、待って、マーク、私を呼んでくれたんじゃないの?かわいいマリーちゃんを求ムって」


「呼び出そうとは、していないよ、かわいい七つのマリーちゃんって言っただろ、うふふっ」


「あっ、マークのイジワル~、じゃぁ、七つの私なら、連れていってくれるのね」


「あっ、待ってくれ、マリー、後で呼ぶから、呼ぶからさぁ」


 マリーは、化粧筆ならぬドラゴンの杖を掲げて、お決まりの言葉を発しちゃった。


「ブルスカ・ショック~っ」


 この頃は、失敗の少ないマリーの冴えた魔法が、マリー自身をマークと出会った二日目の七つの美少女へと変身されてゆく。プラムと三桃娘の目の前に、金髪に青い瞳のおしゃまなカワイコちゃんが現れた。


 勿論の事、髪の毛通信を通して、カルボーアにいる俺達にも金髪カワイコちゃんの出現が目に入った。


「あれっ、ここは、どこ?」

「マリー、七つのマリーちゃんに変身しちゃったのね」


「あなた?誰?」

「ふざけないでよ、私よ、プラム、マリーちゃん、ここは、お家でしょ」


「おねえたま、ハタンを忘れちゃったの?」

「マークは、どこ?」


「ここだよ、マリー」

「あっ、マーク、このモヤモヤは、何?早く、何か食べに行きましょうよ」


 通信映像からでも理解できた。


 マリーは、自身を七つの少女に変身させた訳では、ないのだと。あの日のマリーに戻しちゃったってことなのだろう。


 どうして、いつも、やらなくてもいいことをしちゃうのだろう。少しばかり、イライラを起こしそうになるけれど、元々は、俺がおふざけで、七つのマリーちゃんなんて言っちゃったのが原因なのだと思うと、怒るわけにもいかないねぇ。俺のことは、認識できるけど、今までの事を何も覚えていないマリーをこのままにはしておけないな。


「マーク、どこなのよ、モヤモヤから出てきて頂戴、迎えに来て~っ」

「わかったよ、ちょっと、待っていてね」


「マリー、どうしちゃったの?」


 俺は、指輪の石を押し込んで、羽の生えた蛇の言葉を唱える。自分で唱えることは、珍しいから、ちゃんとできるかしら。


「エ・ヌ・ジ・ア・イ・ブルスカ」


 おおっと、そうだこの感覚だ、轟々と水でもなく風でもなく、渦を巻いて何かに吸い込まれていく感じを身体中で受け止めながら、何処ともない空間を流れていく。その流れが、急に治まると俺の目には、我が家の広間、囲炉裏が映し出される。


「マーク、私を独りぼっちにして、バカ~っ、寂しいでしょ」

「ああ、マリー、よしよし」


 マリーは、俺の姿を見るなり、飛びついて、抱っこしてと言う様に抱きついてきた。もう絶対に放さないと言わんばかりに、誰の事も目に入っていないようで、俺を抱きしめたまま泣きじゃくんでいる。


「マリー、魔法で十七歳のマリーに戻れるかい?」

「えっ、マーク、私は、まだ魔法は使えないのよ、今は、祠の出待ちなのよ」


「ですよねぇ~」


「マーク、おかえりなさい、どういうことなの?」

「ああっ、プラム、参っちゃったよ、マリーは、本当に七つのマリーになっちゃったんだよ、だから、記憶もその時点のモノに戻っちゃったわけで、プラムのことも、この家のことも、分からないんだよ」


「マーク、はやく、何か食べて、塒で干し草に寝転びましょうよ」

「わかったよ、マリー、塒には、今すぐに帰れないから、俺から離れるなよ」


「うん、手を繋いでね、離さないでね」


 マリーは、本当にあの日の様に、頼れるものは俺しかいないというように、握った手にしっかりと力を込めている。可愛いことこの上ないけど、マリーを連れてこれからハチの巣にどうやって挑むのかしら。兎に角、女神たちにお願いすれば、何とかなるだろう。


 俺が繋いだマリーの手を解くと、イヤイヤしながら、また握り返してくるマリーの頬をその手で包んで、言い聞かせる。


「離さないから、心配しないでいいよ、おんぶしてあげるだけだよ」


 納得したマリーは、すぐさま俺の背中にしがみ付いて、離さないと自己主張している。


「仕方ないから、マリーを連れて行くよ、ゴメンネ、プラム、後で、力を借りるまで、ネクターとボタン、ハタンを頼む」

「はい、呼ばれるのを待っているわ、ホントよ」


「マーク、私たちも、お役にたてますわ、まっていますね」

「ああっ、ティーナちゃんのオミヤを堪能していておくれ」


「あっそうだ、ティーナ様とクリス様は、もう行きましたよ」

「じゃぁ、行き違いだな、むこうでマリーをなんとかしてもらうよ」


「プラム、気になるのなら、念通信でライブ中継をつけっぱなしにしておいてもいいからね」

「うん、そうするわ、そうすれば、いつでも一緒で寂しくないもん」


「ハタンもそうしたい」

「ボタンも」

「わたくしも・・・・、ネクターですよ」


「分かっているよ、ネクター」


 俺は、マリーをおんぶしたまま、再び指輪の石を真っすぐに押し込んで、羽の生えた蛇の合言葉を発する。


「エ・ヌ・ジ・ア・イ・ブルスカ」




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