ダブル
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「処分組?」
「あなた達は、何をして、ここに連れて来られたの?」
「何も、していないわよ」
「私たちは・・・」
「カーチン、おしゃべりは、気を付けて」
「俺達は、お風呂に、入りに来た、だけだよ」
「俺?男言葉なのね、珍しい」
「君たちは?」
「私たちは、一日の報告をしただけよ」
「この子達、カボスちゃんとスダチちゃん、なんじゃないの?」
「えっ、どうして、この場で処分するための、処分屋さんだったの?」
カボスとスダチは、後ずさりするように、俺達から距離を取っていく。
恐怖と心細さから、スダチは、先ほどから涙目になっている。スダチを庇う様にカボスが俺達との間に身体を入れている。
「やっぱり、カボスちゃんとスダチちゃんだったのか、俺達は、君たちの事を尋ねたら、捕まっちゃったんだものな」
「えっ、私たちのことを」
「俺は、マーク、左から、ロコ、オロチ、ルル、ティーナだ」
「私は、カボス、隣が、妹のスダチよ」
「よろしく」
「よろしく」
俺とカボスが、握手をしようと差し出した掌が、空を掴む。
えっ、カボスに触ろうとしても、どうしても触ることが出来ない。幽霊のように透明でもないのに、実体を成していない。
そうだこれは、幻影なのだと気が付いた。
今までの幻影と違うのは、現在進行形の状況投影で、対象を実体と見紛う程の鮮明さで、また、会話もできる。
ロコの横着が大成功だったのだろう。ダブル笛吹きの成せる業だと理解した。
「そうか、同じ牢屋にいるわけじゃないんだね」
「えっ、どういうこと?魔法?」
「ああっ、魔法って思ってくれてもいいさ」
「あなた達は、上級者なの?」
「まぁ、なんとか連絡できそうだから、待っていておくれよ、何かあれば、トン・トン・ツーで」
「待って」
俺達を取り巻くモヤモヤが晴れて、またまた、薄暗い牢屋に戻ってきた。
勿論、俺の周りには、ロコ、ルル、オロチちゃん、ティーナちゃんしかいない。
カボスとスダチの姿は、ない。
「なんだか今回の幻影は、すごくリアルだったわよね」
「リアルそのものだよ、離れているだけで」
しかしながら、ダブル笛吹きって、すごい幻影投影機になっちゃったね。
二倍・二倍って、叫びたくなっちゃうのは、俺だけでしょうか?
勿論、声は、かすれ声でお願いしますね。
「うん、じゃぁ、これから、どうしましょうか?」
「それだよなぁ、でも、カボスとスダチに会えたんだから、かなりの収穫だよ」
「チューちゃんのことも、ネーブルのことも、何とかしてね、マーク」
「考えているよ、どうするかを」
「しかし暗いわよね」
「ティーナちゃんの魔法で明るくしてちょうだいよ」
「いいけど、明るすぎるのも、かえって目立つんじゃないのかしら?」
「なるほどね」
「エアル、ペテン師の鍬の柄を出してごらんなさい」
「これですか」
俺は、物入から短くなった先の焦げた棒を差し出した。
ティーナちゃんが、棒の焦げた部分を人差し指でツンツンと弾くと、焦げた部分が、ぼぉっと、オレンジ色に灯を灯し出した。
驚くことに灯った火は、熱くもなく、煙も出すこともなく、これ以上焦げた柄が燃え尽きるわけでもなく、只々丁度良く明るい。
ティーナちゃんって本当に流石だ。
「ありがとう、ティーナちゃん、すごいよ」
「あらあら、でも、その柄の力が大なのよ」
「おそるべし、アロンの代物、こんな燃えかけの木の棒でも、特別だなんてね」
「ねぇ~」
丁度良い照度になった牢屋で、俺達の周りを見渡して見ると、足元に何か黒い小さな塊が右から左へと素早く動いたように見えた。
左に目を追っていくと黒い塊は、ロコの脚元から肩までと登っていく。
「イヤっ~っ」
「どうしたの?その黒いモノは何だ?」
「取って~」
「ナンダ、コノヤロッ」
即座に尻尾を出したオロチちゃんが、その先っぽでロコの肩に乗った拳大の黒い塊を払いのけた。黒い塊は、床に転がりながら、ぱたっと動きを止めた。
そして、ぼっと黄緑色に発光しだした。
「なんだこれ?ネズミじゃないか」
「えっ、ネズミ?」
ロコが床から黒い塊を拾い上げて掌に載せて、覗き込んでいる。ロコの脚元からコンコンが実体化してその塊を銜えて、首を左右に振り続けると、黒いすす汚れが取れて、まだまだすすけているが、白みがかってきた。
「あっ、これ、チューちゃんじゃないの?」
「そうなの?コンコン」
コンコンが食べちゃわないところを見ると、普通のネズミでは無さそうだ。
再びロコは、黄緑色に発光し続けるネズミを拾い上げて、ドロや、砂埃を払っていくと、確かに元々は、白いネズミであることが判明出来た。
白いネズミで、発光までする。そして、ロコの肩に呼びもしないのに登ってくる。もう、チューちゃんで間違いないでしょ。
「チューちゃん、ゴメンネ、黒くて気持ち悪かったから」
「大丈夫よ、そうっと、尻尾で、はたいただけだもん」
「本当?」
「そうだね、そのうち起きるさ、息をしているもんね」
「マーク、本当?」
「待っていてごらんよ」
暫くすると、黄緑色の発光が収まって、ビクッビクッと、チューちゃんの身体が震えたかと思うと、ロコの掌の上で、チューちゃんは、ムクムクっと起き上がってきた。
「チューちゃん!」
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