サファイヤ・ブルー
「マリー、そういえばさぁ、アロンの笛って、ロコちゃんが持っていたんじゃないの?」
「はい、そうです、天使の笛とセットにしています」
「じゃぁ、その笛は???」
「今、消えちゃったルルの模造品ですわ」
「へぇ、ルルちゃんは、なんでも作れるのね、金属じゃないのに」
「ロコの木片と、ルルの手先技術みたいですわね」
「もう、模造品じゃないわよね、スーパーコピーより、本物でないホンモノよね」
「はい、そのホンモノきっかけで、ルルは飛んでいっちゃいましたわ」
「仕方ないわねぇ、・・・・・、様子を見ましょうね」
「私も行きたいですわ」
「私も」
「私も~」
「わたしも」
「あたしも~」
「やれやれ、もう少ししたら、考えましょう、三桃ちゃんたちは、行ったら処刑でしょ?」
「こっそり、いきますわよ、それに、ファミリーの技で逃がしてもらいますも~ん」
「ちゃっかり、しているのね、流石に末っ子ちゃんね」
「じゃぁ、様子見ながら、押しかけますかね」
「きっとですよ、クリス様~」
大浴場では、ネーブルによる聞き込みが、ほぼ終了して、カボスとスダチを探すことだけとなった。
それならばと、ゆっくりと身体を洗って、汗をしっかり流していこうと、五人でゴシゴシとシャボンまみれになっている。正に、ソープランド?シャボン天国じゃぁ~。
「ここのお風呂は、本当に大きいわね」
「洗い場もこんなに広い、大自然のジャングル風呂って感じね」
「うんうん、お湯は、湖。洗い場は、ジャングルって、ロコの言う通りね」
「俺もよく洗おうっと」
「ネーブルも、俄然やる気を出してくれているものね」
「だって、ここまできたら、最後まで付き合うわよ」
「いい子だ、いい子だ、いい子にしてれば、さきっちょツンツンしてあげるね」
「アッ、イヤ~ん、マークは、さきっちょ、大好きなのね」
「大好きなんだよ~」
「エッチねぇ」
「マーク、私も・・・、して」
「さきっちょは、毎日、ツンツン約束だったでしょ~」
「エアルは、モテモテなのねぇ~」
「ティーナは、マークにツンツンしてもらわないの?それにエアル?」
「マークは、名前が二つあるのよ、それに、エアルは、私の子供みたいなものだから」
「一番若いティーナの子供???」
「そうよ」
「まあ、いいわ、あなた達は、私たちとは、違う不思議の人間ですものね、気にしないわ」
「ネーブル、声が大きいよ、もう虐めないから、仲間として探索頼むよ」
「まぁ、マーク、また、ネーブルに狙いを付けたのね」
「違うよ」
「悔しい~」
「オロチちゃんも、ロコも、つねっちゃ痛いじゃないか」
洗い場では、俺の身体が温められて赤くなっているだけではなく、抓られて、所々、赤くなっている。
跡が残っちゃうでしょう。加減しておくれよ。
ネーブルも、もう、怖がってはいないし、よそ者の俺達と不思議と馴染んでいる。順応性の高い働きバチさんだこと。
俺の足元、その洗い場の石畳にキーンっと金属音が鳴り響いた。
聞き覚えのある甲高い澄んだ金属音。もしやと、俺だけではなく、ロコ、オロチちゃん、ティーナちゃんが、音のする足元に目を落とした。勿論、聞き覚えのないネーブルも足元の音に引き寄せられるように注目している。
クルリクルリと、銀色に輝く輪っかが、床石にメビウスの輪を描きながら、転がっている。
あららっ、やっぱり、プラムのアンクレットだ。今度は、カランカランと転がり音を響きだし始めている。誰かに気付かれる前にと俺は、転がるアンクレットを拾い上げ、手に取って、胸に抱きかかえる様に咄嗟に隠した。
次の瞬間、身体に纏っていたシャボンが爆発するように飛び散り俺は、洗い場の石畳の床に押し倒されたのだろうと思う。
身体を押さえつけられるような圧迫感と、ずっしりとした重量感を感じながら、起き上がろうとするも起き上がれない?
息苦しいこともさることながら、顔に重みと心地よい柔らかさを感じながら、窒息死しそうな気もしている。
そっと、目を開けるも、シャボンの白さが、七色に反射するように光っているだけしか見えてこない。シャボンを吹き飛ばそうと、フーフーするも、そのフーフーが出来ない。
お口も柔らかいもので塞がれている。
誰か助けてくれ。
顔を左右に振りながら、シャボンを振り払おうと試みると、目の前に、鮮やかな青、輝くサファイヤブルーが広がるというか、密着している。
まさに、濃厚な蒼玉の草叢に飲み込まれてしまったようなのだ。
「あっ、ルルっ」
「ルル!どうして、飛んできちゃったの?アンクレットで」
「な、な、なんだぁ、この青い髪の魅力的なグラマー美人は??????」
「声が大きい、しっ~」
ティーナちゃんが、ネーブルを制して、他の誰にも気が付かれないようにと、囁くような小さい声で、呟いた。
「ブルスカ・ショックっ~」
みるみる輝くようなサファイヤブルーの美少女は、ネーブルも目の錯覚と思えちゃうほどの素早さで、金髪美人に変化している。
「あら?青くないわ?キレイな金髪、長めの髪ね???」
何やら周りの騒がしさが静かになっていくのにつれて、俺の意識が遠くなっていく。
眼の前の蒼き草叢からは、甘い香りが漂っていて、眠りを誘ってくる。このまま、眠ったら、もう目が覚めないぞと自分に言い聞かせるも、眠いのだ。
ここは、雪山か?お風呂場だったはずだ。ジャングル風呂?最後の力を振り絞って、もう一度目を開けると深い色合いのサファイヤブルーの草叢は、俺の顔を完全に覆い隠しているままだ。
「ルル!早く降りなさいよ。お尻の下にマークがいるのよ」
「えっ?」
ルルは、熱い物に触れた時の反応の様に、反射的に立ち上がった後に、すぐ横に腰を降ろした。前にも、同じようなこと、同じような場面ありませんでしたか。
そんな声々が微かに聞こえる中、俺は、呼吸が楽になって、息が出来ていることに気が付く。
サファイヤブルーの草叢は、消え去り、真っ白な柔らかい物が、顔の横にくっついていた。
「ルルちゃん、どうしたの?あら、ドジったのかしら?まだ、下が、金になってなかったわ、青のまま」
「やっぱり、この人、青の人ね」
「ネーブル!黙りなさい」
「それ、ブルスカ・ショックっ」
今度もまた、蚊の鳴くような小さな声でのショックが、ルルの最後の鮮やかな青い部分を金色に変えていく。
「マーク、ごめんね、でも、いっつも、私の秘密の場所に、どうしてチューしちゃうの?エッチ」
「あれ、ルルだったのか、ほら、アンクレット返すよ」
「えっ、秘密の所にチューって?あっ、また俺の顔に座ったの?じゃぁ、あの鮮やかな青い草叢は・・・、チューしちゃったよ」
「バカっ、エッチ」
「エッチって、俺のせい?」
「ほら、マークだって、やっぱり、この人、青い人よ」
「ネーブル、目の錯覚よ、何処を見てもあなたと同じ金でしょ」
「でも~っ」
「マーク、ルルにしたことを、私にもしてね」
「ロコだけズルイわ、私にも」
「ロコ、オロチちゃん、私だって、してもらいたくて、シテイルわけじゃないのよ、マークの希望で」
「マーク、私は、そこにチューされたことないもの、ルルだけなんて許さないわ」
どうして、俺の美しくて、可愛いファミリーは、本質と関係のないことに、こだわるのでしょか。いつものことで、嬉しい気持ちには、させてもらっているけどさ。
「そんなことより」
「そんなこと?」
「いいから、ルルは、どうして、来ちゃったの??」
「今から、寝るところだったのよ、みんなでアロンの笛の幻影を見ていて、アンクレットに触れちゃったら」
「来ちゃったの?」
「うん」
「だって、ペテン師の笛は、ロコが持っているでしょ」
「ああっ、私の木片でルルが作ったヤツを試したの?」
「うん、そしたら、お風呂で、金髪パラダイスが出てきて」
「出てきて?」
「来ちゃった、ゴメンナサイ」
「謝ることは、ないけどさ、ビックリしちゃったよ、俺の方こそ、甘い香りのチュー、ありがとう」
「マーク!」
「この人も、仲間なの?」
「そうだよ、ネーブル」
「ネーブルさん、ルルです」
「ネーブルでいいのよ、あなたも怖い人なのでしょ、私のヴァージンを奪うのね」
「マーク、奪ったの?」
「奪っていません」
「ルルまだ、奪ってないわよ、私が、ペロ~んって、舐めてあげただけ、ガラガラ尻尾も見せて」
「ああっ、だから、尻尾が出ていたのね、ペローンって、マークが私にしたこと思い出しちゃう」
「マーク!」
「どうして、俺が怒られるのさ」
「でも、今は、みんなの髪色が分かるのに、幻影では、分からなかったわ」
「しっ、私たちだけに、見えているのよ」
「えっ」
「ネーブルにも、他の人たちにも、私たち全員金髪に見えているのよ」
「そうなんだ」
「ここでは、金髪以外は、殺されるかもよ」
「なるほど」
「ねぇねぇ、ルルちゃんは、本当は、ブルーなんでしょ」
「えっ、気のせいよ、金髪よ」
「私、あなた達が、ここの人じゃないと知ってるもの」
「ネーブル、知っていても、知らないフリをするのが、オトナの女性よ」
「でも、私、あなた達の事、もっと、知りたいんですもの」
「知ったら、後戻りできないわよ、いいの?」
「う~ん、じゃぁ、本当に教えて欲しくなったら、お願いしちゃうわよ」
「うふふっ、覚悟を決めてからなら、考えてあげるわよ」
「オロチちゃん、ネーブルちゃんをあんまり虐めないのよ」
「はい、イジメていませんよ、ファミリーを守っているんですよ、ティーナ様」
それでは、この城の調査については、俺とロコ、オロチちゃん、ティーナちゃん、ネーブル、そして、ルルを加えた六人で取り組んでみましょうかね。
奇しくも、この城は、ゲトレの賭博場の門構えに酷似していることからも、ルルが飛んできてしまったことも、偶然とは、言い切れないかもしれませんものね。
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