葛藤
「マリー、そろそろ寝ましょうかねぇ」
「あっ、はい。クリスティー様も、お泊りしていってくれますの?」
「ええっ、この一件が終わるまで、帰らないつもりだけど、ダメかしら?」
「いえいえ、いつまでも、いてくださいな」
「まぁ、プラムちゃん、可愛いこと言ってくれるのね」
「女神様、私たちの魔法も見て欲しんですわ」
「そうね、この家は、魔法使いが増えたんだもんね」
そろそろ我が家では、留守番、いや違った、待機組の第二部隊であるマリー、ルル、プラム、ネクタリン、ボタンキョウ、ハタンキョウ、そして、クリスティーの七人は、みんなの寝室である我が家で唯一の寝るお部屋で、床に就く準備を終えたところである。
食後の髪の毛による幻影では、ミミズのような尻尾くらいしか見えなかったことから、全員ともに、悶々とした感情を抑えながらの就寝となる。
マリーは、部屋の棚に置いてあったアロンから奪った天使の笛によく似た笛を持ち出して、寝床に入った。
「マリー、それを吹いてみるつもりなの?」
「天使の笛だと、予言と予知みたいな感じを見通せたから・・・」
「いいわ、吹いてごらんなさいよ」
「マリーお姉さま、吹いて見せてちょうだいな」
みんな同じように寝付けないでいるようで、マリーの寝床を囲んで集まってきた。
まだ、誰も試していないアロンの笛は、実際の所、どんな効果があるのかも分からない。また、何も起こらないことだって、あるかもしれないのだ。
まぁ、アロンが大切に持っていた代物から、その可能性は、低いとは思われるけれど。
何とかして、先行部隊の状況を知りたいのは、みんな同じである。
マリーは、持ってきたアロンの笛を口に銜えて、恐る恐る息を吹き入れてみた。
「キュルルルルルぅ~」
聞き覚えのある天使の笛と良く似た音を響かせたアロンの笛は、その尻の部分から煙を立ちこませると、天使の笛よりも大きくて、大量のモヤモヤを部屋中に充満させていく。
そのモヤモヤの中心部分だけが、霧が晴れるようになると、恰もその場所に潜り込んだような、幻影というよりも現実的な光景を映し出して来た。いや、その光景に飛び込ませてくれた。
その場にいるように錯覚してしまう程の幻影の中も、モヤモヤが立ち込めている。
映像のみなので、音声は伺えないが、モヤモヤではなく、湯気のようである。
そして、金髪美人が全裸で、入り乱れている光景が、目の前に飛び込んでくる。とてつもなく、楽しそうな施設で伸び伸びと、寛いでいたり、燥いでいる場所に入り込んでしまったことは、確かなようである。
その中心、幻影の真ん中、マリー達の真ん前に、一際、目を引く五人の金髪美人が映し出されている。
右から二人目の金髪は、ガラガラの着いた尻尾を覗かせていた。
丁度ここまでで、部屋中のモヤモヤが消えて無くなってしまった。
「なんなのでしょう?」
「金髪娘のてんこ盛りね」
「ここは、お風呂場ですわよ」
「うんうん、確かに、みんなが入るお風呂ですわ」
「私もここで、毎日、入っていましたもの」
三桃娘は、ここがお城の浴場であることを教えてくれた。お風呂場自体は、全く不自然なことは、ないとの事で、危ないことは、アロンの笛からは伝えられなかったことになる。
「金髪美人の一人に、見覚えのあるガラガラの尻尾の娘がいたのを気が付いた?」
「ええ、あれは、オロチちゃんの尻尾だったわよね」
「そうすると、オロチちゃんの周りにいた四人は、マーク達かしら?」
「全部で五人?」
「マーク、ロコ、オロチちゃんでしょ、あと二人は?????」
「分からないわねぇ。アルカティーナ様は、雪の中の時から、いなかったものね」
「早く、私を呼べば良いのにねぇ」
「ズルイですわ、クリスティー様より、私を呼んで欲しいですわよ、金髪は、需要ありですもの」
「マリー、こんなに金髪はいるんだから、需要あるかしら?」
「あるわよ、オロチちゃんだって、金髪になっていたじゃないよ」
「本当に、あれは、オロチンなのかい?」
「クリス様、あの先端のドラゴンナイトの尻尾は、間違いなくオロチちゃんです」
「でもね、どうして、オロチンは、あれだけ化けているのに、尻尾を出しちゃっているの?」
「それは、どうしてかは?分りませんけれど・・・」
オールヌードの金髪美人だらけの光景を目の当たりにした三桃娘以外のファミリーは、いかにお風呂といえども、動揺が隠しきれない様子である。
これでは、ますます眼が冴えてしまって、床に就くどころの騒ぎではなくなってしまっている。そして、この幻影は、今現在のものとは、言えないのである。これから起ることを幻影はいままで予知してくれた。これは、天使の笛から学習したことである。アロンの笛が同じか分からないが、同じでないにしても、既に起きたことなのか、今起こっていることなのか、これから起ることなのかの三通りしかないのである。
いずれにしても、この光景は、現実化するのであると予想される。
風呂に夢中になって、もう一回入りたかったなどと三人でキャッキャとしている三桃娘と異なり、マリー、ルル、プラムは、どうやって我慢しようかと、眉を捩じらせて自問自答している顔をあからさまにしている。
それに気が付いているクリスティーもまた、金髪繋がりで、女神である自分にお呼びがかからないかと内心期待しているのであった。
いつもなら我慢強いはずのルルが、ネズミの尻尾、ガラガラのオロチちゃんの尻尾を連想しながら、自らもゲトレの賭博場にて、ロコの放ったネズミに助けられてことを思い出していた。
暗くて狭い部屋に閉じ込められていた時に、ネズミが現れて、そして、女の姿のマークが飛び込んできたことが、昨日のことのように思い起こされてきた。
自分も力になりたいと思う気持ちが、固く握りしめられている拳が表している。その拳を抑えるように覆いかぶせた手が、ブレスレットにしていたプラムのアンクレットを抑えるようになり、その埋め込まれた石を包み込んでしまった。
ルルの身体が、ぼわっと光り出している。
「あっ、ルル!アンクレットで行っちゃうつもりなの?」
「まだ、呼ばれてないもの、だめよ」
「違うのよ、行くつもりは、ないのよ、ただ、マークのことを思って、石に触れちゃったら」
「ストップできないの?」
「どうやって、ストップするの?」
ルルの身体が、だんだんと薄くなってきている。
いつものように、すんなりとアンクレットの石に吸い込まれていかないのは、行く行かないのルルの葛藤がそうしているのであろう。
ルルの身体全身が蛍光色に輝いて、スゥーっと、アンクレットに吸い込まれていった。
ルルの寝床には、いつもの通りアンクレットが転がっている。一呼吸後に、そのアンクレットもルルを追いかけるように消えていった。
ところが、今回は、不思議なことにルルの衣服も寝床に残されている。上着も下着も・・・。
ということは、光り輝いたルルの身体だけが、アンクレットに吸い込まれたことになるのであろう。葛藤は、こんなことを引き起こすのだと、アンクレットによるテレポーテーションの仕方に新しい知識が加わった。
こんなことで、使い方の勉強になってるのかな、いきなりのルルのテレポに、マリー、プラム、クリスティーは、唖然の表情。三桃娘は、ワクワクドキドキを募らせているようだ。
ルルは、丸裸のまま飛んで行ったってことは、真っ裸、マッパのまま飛び出してくるのかな?
マッパGO・GO・GO。
早くコイコイ、マッパちゃん。
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