四人の金髪
本年も宜しくお願いいたします。
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頑張ります。
高い絶壁の壁がどこまでもそそり立っている。
その岩壁の内部が、目指す本拠である城そのものだと見ただけで分かってしまう。
「入り口は、ここだけなのかしらね」
「分からないよね、ハチの巣だとしたら、ここだけだね」
「ハチの巣みたいってだけで、蜂じゃないもの、人よ、魔法使いってだけで」
「そりゃそうだけど、ここからは、入れてくれないだろ」
「ねぇねぇ、チューちゃんを助けてあげないと」
「それも、分かっているけど、まずは、入れない事には・・・」
俺達は、要塞のような壮大なお城を前に、圧倒されている気持ちをどのように落ち着けたらいいのか分からないでいる。
「ハチなのよね、じゃぁ、こちらもハチを飛ばしてみる?」
ティーナちゃんは、マリーがよくするようなポーズで人差し指を頭の上に掲げると、クルクルっと回した。
すると、その指の先に、小さくて可愛らしいミツバチがピコンと現れた。
「あらっ、かわいいビーちゃんが出て来たわ」
「我がハニービーよ、蜜を探すが如く、目の前の穴の内部を詮索せよ」
ティーナちゃんの作り出したビーちゃんが、人差し指を離れて舞い上がり、お城目掛けて飛んで行く。そして、入り口から中へと消えていった。
それにしても、人が多すぎる。
人じゃなかった、魔法使いだった。
いや、だから、人だった。
頭おかしくなりそうだ。人だか、ハチだか、魔法使いだか、少々参ってしまう。だって、人にしても、少しおかしい。
みんな同じような目鼻立ち、家の三桃娘が、三つ子だから同じ顔だと思い込んでいたけれど、確かに、それもそうなのだけれども、目の前の城にウヨウヨしている美女軍団もみんな同じ顔にしか見えない。恰も、同じ人が一杯いるのだ。
いや、年齢の違いはあるようだが、みんな家の三桃娘と同じ顔にしか見えない。背格好も同じだ。身に着けている衣が同じだからではない。本当に、みんな同じにしかみえないのである。
まことしやかに、みんな姉妹、みんな一人の女王の娘、そうのようにネクターたちに聞いていたことの有様が、段々と理解できるようになってきた。
「ティーナちゃん、みんな同じ顔だよね、一人の人間のコピーなのかなぁ」
「ハチだとすると、ネクターの言う通り働きバチは、みんな姉妹よね」
「只の姉妹って言うよりも、全員が双子って感じよね」
「でもさぁ、家の三桃ちゃんだって、三つ子だけど、微妙に違うし、見分けられるじゃないよ」
「オロチちゃんの言うように、そりゃ、見分けられるさ、家族だもん、でも、三つ子ってわかるでしょ」
「じゃぁ、ここにいるのは、何百万っ子?ってことなの?」
「何百万じゃすまないんじゃないの?かなりの世代を重ねている姉妹みたいだね」
「初代から、変わっていないってことなのかしら?」
「オスバチ次第じゃないの?」
「普通、蜂の巣にいるオスバチは、同じ巣の女王とは、婚姻しないでしょ、別の巣の女王と婚姻するんだ、そうしないと、血がどんどん濃くなって同じになっちゃうもんね」
「でも、ここには、他の巣はないのよ、だから、オスは、いないって言っていたわよね」
「それなら、ますます、クローンに近い姉妹なんじゃないの?初代から、魔法使いの純血種を守っているってことかな」
「魔法の根本がここにあるってことか?それは、興味深いことであるな」
「わーい、ティーナちゃんが、やる気出してくれた」
「そうすると、ここにいる人たちは、人であっても、やっぱり、俺達とは違う種類の人だよね」
「そうね、魔法使いは、もともとは、私たちとは、違う種類の人だったのかもしれないわね」
「ちょっと、怖いし、気色わるいね」
「バカね、エアルお前にも、その気色の悪い血が、受け継がれているってことになるのよ」
「ホント???ここの魔法使いの血なの?」
「魔法の根源がここなら、そういうことになっちゃうよね」
「そう考えると、マークの顔、みんなの顔と似ているわよねぇ、ブルネットだけど」
「これは、ティーナちゃんが作ってくれたガール版だもの」
「バカねぇ、髪の色はともかく、お顔は、エアルそのものよ」
「そうなの?俺そんなに、働きバチと似ているの?」
「そうか、ここでは、似ていないことの方が、目立ってしまうわね、待ってて」
ティーナちゃんは、ロコとオロチちゃんに人差し指を向けて、ズキューンっとすると、ロコとオロチちゃんの顔立ちが、次第に変化していく。
俺は、自分の顔が確認できていないが、二人の顔がほとんど同じ様に見えている。髪の色が、赤いか、茶色いかだけの違いだ。俺とティーナちゃんは、根本は、似ているのだろう、これ以上加工しなくても溶け込めると判断したようで、ティーナちゃんは、魔法を施さない。
でも、髪の色は、ブルネットです。
三人とも、ブルネット、赤、茶で、大勢の金髪からは、目立っています。俺は、本来は、茶色だから、オロチちゃんが、今の俺の姿と考えればいいだろう。結構カワイイ。
「ティーナちゃん、髪の毛の色も金髪にしたらいいんじゃないの?」
「金髪ねぇ、下品でしょ、クリスみたいで」
「下品とかじゃなくて、金髪じゃないと、目立っちゃうでしょ」
「そのくらいは、目だっていいのよ」
「目立っちゃダメでしょ」
「いいのよ、よそ者だもの」
「そのよそ者の感じを消すんじゃないの?」
「だって、そんなに金髪がいいの?」
「いいとかじゃなくて、もともと、おれは、茶色ですし」
「ブルネットが嫌いなの?茶色よりも濃い、綺麗な深みのある栗色よ、クリイロ」
「マーク、金髪じゃなくてもいいわ、わけわからなくなっちゃうもん」
「そうね、色なんて気にしないわ」
「気にするよ、金なら、入り口から、紛れ込めるかもしれないじゃんか」
「仕方ないわねぇ、エアルは、どうしてこんなにワガママなのかしら」
ティーナちゃんは、人差し指を頭の上に掲げて、いつものように、クルクルっと回した。
これだけかい?
見たところ、なんの変化も見られない。俺に気休めにポーズだけしてくれたのらしい。
「エアルのワガママ、聞いてあげたんだから感謝しなさい」
「ティーナちゃん、恐れ入りますが、何も変わっていませんけれど?」
「バカねぇ、外から見たら、全員金髪なのよ、私たちからは、変わらなく見えても、紛らわしいでしょ」
「ほほ~っ、ティーナちゃんて、頭良いんだね」
「お前、女神を馬鹿にしているのか、お前の伯母さんだぞ」
「御見それいたしました」
なるほど、外から見たら、そうなのか、本当なのかしら?
ねぇ~。
森の茂みを抜け出して、俺は、塀伝いに置いてある水瓶に自身の姿を映してみようと。
すぐにロコも近寄ってきた。
二人して水瓶を覗き込んだ水面に映る姿は、まるで金髪美人の双子そのものだった。
「エアルは、本当に、疑り深いんだから、伯母さん信用してもらえないなんて、スネちゃう」
「本当だ、パッキンだ、しかも、ソックリ、でも、俺の方が、ボインだね」
「バカ~っ、そのオッパイは、アルカティーナ様がモデルだからでしょ、マークって、意地悪でいけ好かないわねぇ」
「そうそう、いけ好かないのよ」
「オロチちゃんまで、なんだよ、でも、オッパイだけじゃなくて、背丈もやっぱり、違うね」
「全部同じじゃ、つまらないでしょ、紛れるにしても、ここの娘達の様には、しないわ、これは、私の拘りね」
「ありがとう、ティーナちゃん、チュッ」
「あっ、マーク、私も」
「私も」
仕方がないので、娘姿のボインの俺は、同じ顔の赤毛と茶色毛のかわいこちゃんにもチューしてあげた。
外見は、金髪なんだけどね。
こうして、壮大なお城の塀に佇んでいても違和感が無くなったらしい。周りの働きバチさんも威嚇してきてはいない。上々であるね。
外見は、金髪の四人が塀伝いに歩いているだけなのだ。
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