白骨
「キャーっ」
美少女Bが瓶から掴みだしたものは、白いモノは、白いモノでも、ネズミの白骨だったのだ。
「なんなのよ、これ、気持ち悪いわっ」
「やっぱり、ガイコツよね」
美少女Bは、その手に掴んでいたものを振り払うように、床に放り投げた。やっとのことで、ネズミの形状を保っていたその白骨は、床に叩きつけられたことで、バラバラになってしまった。
美少女Aが、瓶を持ち上げて、逆さまにして振っているが、もう何も出てくるものは、なかった。手を入れて確認しても、瓶のツルツルとした底しか触れるものは、なかった。
白骨を掴みだした美少女Bは、その指についた気色の悪いモノを取り除くように、払ったり、フーフーと息を吹きかけた後に、箒を手に取って、床に撒き散らした骨を集めると、窓からサラサラと捨て去ってスッキリした表情を取り戻していた。
「一体、何なのかしら?ネズミが、ガイコツになっちゃっていたわ」
「そうなのよ、私は、自分と同じ大きさの大きなガイコツを見て、瓶から飛び出したのよ」
「でも、おかしいわよね、入れた時は、丸々と肉付きの良いネズミだったわよね」
「うん、まるで、魔法よね、誰かの悪戯かしら?」
「そうかもね」
「でもさぁ、テーブルのラッカセイは、そのままあるのよね」
美少女Aは、チューちゃんが残した南京豆を掌にのせてじっくりと観察をしている。
一方、窓から風と共に撒き散らされたチューちゃんの白骨と思われるモノは、地面にバラバラとそこかしこに注がれていた。その中で頭蓋骨のみが、ぼうっと光り出した。それは、過去のゲリアの井戸端で光った時の同じようだが、今回は、巻き散らかされた細々とした骨々が光る頭蓋骨の元に一つ一つと集まってきている。
その動きは、見るからに素早いという速度感ではなく、ある意味気が付かない様に、こつそりと一体化を進めているという感じである。完全なる骨格標本みたいまで合体すると、骨全体が、さらに強く光り出した。すると今度は、目にも留まらぬ速さでモリモリと肉が付き、モジャモジャと毛が生えて、元通りの白いハツカネズミの姿に舞い戻ってしまった。
キョロキョロとしながら、チューちゃんは、一目散に地面を走り出していく。
デザートとしての白玉ぜんざいをご賞味した我が家の留守番部隊、いや、後発部隊は、ゆっくり寛ぎモードといったところでしょうか。クリスティーは、紅茶を片手に文字通りに寛いでいる。他のファミリーはというと、なかなかどうして、お食事の後片付けをみんなで手際よく行っている。
洗い物をするネクターとハタン、流れ作業の様に、洗われた食器を拭き上げていくルルとプラム。マリーは、食卓を布巾がけと、焜炉を片付けている。ゴミの整理をしているのは、ボタンだ。我が家のお食事というメインイベントを全員で楽しんでいる感じが伺えて嬉しいね。
仲良しファミリーであることは、そうなのだけれども、こんなにせっせと片付けているのには、理由があるらしい。御飯も終わって、大好きなお風呂に入って寝るんだろうと思っているのだが、お風呂の前に、先発部隊を覗き見しましょうということになったらしい。食後の寛ぎのお供として、映画でも観るのと同じような物なのであろう。喜んで頂けるのならば、それは、良いことなのだろう。
「さぁ、終わったわね」
「クリスティー様、お待ちかねの余興のお時間ですわ、先ほどのは、予告編でしたので、本編を」
「マリーちゃんは、覗き趣味なのね」
「違いますよ、じゃぁ、クリスティー様は、見ないんですか?」
「もちろん、みんなと一緒に、鑑賞いたしますわ」
「でしょ~」
「ルルもプラムも早く」
「お姉たまたち、私たちのことも忘れちゃイヤよ」
「忘れてないわよ」
「よかった」
「あなた達のふるさと、説明してちょうだいね、また、無音だったら、弁士の役をするのよ」
「お姉たま~、べんしですか~、私も集中して、見たいから、話せないかもしれませ~ん」
「大丈夫よ、弁士なら三人いるもの」
「ネクターに任せた、私とハタンは、見るのに集中するわね」
「ボタン、ずるいわよ、ハタンは、仕様がないにしても」
そろそろ上映会が始まるようで、クリスティーを中心に六人が取り囲むように腰を降ろした。六人は、待っているクリスティーに準備オッケーとばかりに、マークの巾着に結び付けてある自身のそれそれの髪の毛を呼び出すように、念を送りだした。六人の顔を真っ赤にするほど、力んでいる姿を目の前にしているクリスティーは、美少女の念にブースターを効かせる為に、本家本元のお決まりの言葉を呟いた。
「ブルスカ・ショックっ~」
クリスティーを含めて七人が輪になっている頭上の中心にモヤモヤと靄が掛かり始めている。クリスティーのショックが効いているのか、その靄の中に稲光が走り始めて、宛ら夏の入道雲のような感じになってきている。
モクモクの靄からネクター、ボタン、ハタンの三桃娘の脳天に稲妻が走る。三桃娘は、黄色に光りながらビリビリと戦っている。やはり、三桃娘の故郷を覗き込むことと関連しているのであろうことが、みんなの共通認識となってきた。ということは、先発部隊は、無事に目的地である魔法使いの国カルボーアに辿り着いたのであろうか。
「ネクター、ボタン、ハタン、頑張ってちょうだい、私たちよりも、あなた達の念がメインパワーみたいだから」
「マークたちは、おそらく、着いたのね、だから、三人の念が共鳴しているんでしょ?」
「多分そうでしょ、ショックに慣れてなくて、感電しているだけだったら、お仕置きよ」
「イヤ~ん、女神様、頑張っていますのよ、私たちぃ~」
モヤモヤの中から、風景が見えてきた。
右手に青々とした森、左手にそそり立つ赤い土と岩肌の崖に連なる要塞が見える。どちらも、迫りくるような凄い迫力映像だ。景色も流れていく。地面が異様に近い感じがする。景色の流れが止まったと思った瞬間に肌色のミミズの様であるが、細かな毛の生えたものが、映し出された。またまた、景色がかなりの速さで、流れ始めたところで、モヤモヤが晴れてきてしまった。
「どういう、映像なのかしら?」
「地面が近かったわよね」
「あの肌色のミミズみたいのは、チューちゃんの尻尾じゃないかしら?」
「なるほど、そうだとすると、今のは、チューちゃん目線の景色ってこと?かしら?」
「みんなは、どうしたのかしら?チューちゃん一匹だけ?」
「わからないわ、でも、ここが、カルボーアってことは、確かですわ」
「そう、じゃぁ、やっぱり、着いたのね」
「断崖絶壁の城が、見えたもんね」
「うん、見えたわ、お城」
「うんうん、怖いお城、私たちのお部屋は、もう無いんでしょうね」
ネクター、ボタン、ハタン、我が家の三桃娘が、今見えた念力の映像は、カルボーアのものであることを証明してくれたことで、先発部隊は、目的地に辿り着けたであろうことが、推測できる。
ただ、本当に今見えたものが、チューちゃんの目線のものだとするならば、マーク達の姿が見当たらないのも不可思議な事である。
本当にチューちゃんなのであろうか、肌色の尻尾からは、白いネズミと思われ、野にいるグレーのネズミのものとは、異なっているので、チューちゃんであると信じたいという事も、みんなの共通認識であることは、間違いのないことだ。
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