幻影
海に出てから、一週間が経とうとしている。しかしながら、港らしいものは、なにも発見することができない。ただただ岸辺が連なっている場所に来ていた。
「恐らく、この辺りだと思うんだけれども」
「俺もカモメ情報は、信頼できると思うよ」
「どうせ、私の魔法は、役立たずって言いたいのよね」
「そんなことは、言ってないよ。訳の分からない呪文で、パンツが出せるだけでしょ」
「パンツは、たまたま。状況に応じて、適切なモノが出せるのよ。てか、物が出せるだけじゃないんだから」
「ハイハイ、了解しています。パンツを買う必要がないのは、節約できるよ」
「もう、バカにして」
「もう一度、カモメに聞いてみるわね」
「ああっ、頼むよ」
ロコは、軽やかに歌い始め、カモメを呼び付けた。二羽のカモメがロコの周りをクルリ、クルリと飛び回りながら、大空へと去っていった。
「ここで、いいそうよ。この岸が、ゲトレって言っているわ」
「しかしなぁ、上陸するにも・・・」
「もうすこし、岸に寄せてみましょう」
船は、さらに岸辺に近づいていく。すると、なんと、一直線に見えていた岸の一か所が、互い違いに交差している箇所を見つけ出せた。船を注意深く進めていくと、隠されていた広々とした入り江にたどり着くことができた。ここが、隠された港、ゲトレの港なのだろう。
「あったわ。きっとここが、そうなのね」
「そうらしいね」
「どんなところなのかしら?ロコ笛を吹いてごらんなさいよ」
「ええっ~。また、エッチなのがでてきちゃう」
「吹いてくれるかい」
渋々ロコは、笛に口を当てた。
「キュルルルル」
今回も霧のような物が三人を包み込み、またまた幻影が現れた。この前の美しい娘が、全裸で縛られている情景がハッキリと見えた。
「あっ、またエッチなマークの頭の中が・・・」
「ちょっと待て、この女の子の首に・・・」
「似ているわ」
「何?」
幻影は、すーっと消え失せていった。
「マリーも見えた?」
「うん。革の巾着のようなものを掛けていたわ」
「えっ、これと同じ」
マリーは、自分の首に掛かっている小さな革の巾着を取り出した。
「私達の仲間?」
「そうかもしれない」
「随分とセクシーな出で立ちをしていたわね」
「バカ野郎、出で立ちじゃない。自分で、縛られているヤツがいるか」
「可愛い女の子で、それもヌード姿。そそられるのよねぇ。マークは」
「何言ってんだよ。おそらく、このゲトレのどこかにいるに違いない」
マリーとロコは、少々、俺の動機を疑っているようであるが、このゲトレには、可愛い女の子。いや、俺達の助けを待っている者が必ずいるように感じられた。あくまで、感じであるが。