ゴールド・ラッシュ
マリーが、腰に手を当てて、床に座る位置を指示している。
正面に三桃娘、隣には、マリーが座るようだ。
俺、ロコ、ルル、プラム、オロチちゃんは、正面の四人に対峙するように座らされている。
うちの広間では、夕食を済ませた今夜、魔法講義が行われることになった。
どうして、こうなったのかは、三桃ちゃんに刺激されたマリーが主任講師を買って出たのである。
三桃ちゃんが主任じゃないのかしら?光と火と水の魔法をご教授するのではないのかしら?
マリーは、何を教えようとしているのかなぁ。我が家の魔法使いの主導権を握るが如く、夕食後は、やる気満々で、マリーの教官色が際立っている。
大丈夫ですか?
デザートの水菓子をまだ頂いておりませんけれども、三桃ちゃんがいるんだから、桃でも剥いてもらいたかったんだけどなぁ。あとで、プラムのプラムちゃんでもいただきましょうかね。
そんなふざけたことを考えながら、実際には、指示通り、定位置に腰を降ろして待っている。
三桃ちゃんの隣に腰を降ろしたマリーは、化粧筆を振り回しながら、饒舌に口上を述べ始めた。
「エッヘン、ネクター、ボタン、ハタンの魔法使いが家族に加わったこともありますし、魔法について、すこし、みんなで考えていきたいと思います」
「マリー、三桃ちゃんが先生じゃないんですか?」
「マーク君、もちろん先生ですよ、三人は、私の助手先生です」
「先生、反対じゃありませんか?マリー先生は、教育実習中じゃないんですか?」
「マーク君、マホーのマの字もわからない悪い子は、お口にチャックしちゃいますよ」
「おっ~、こわ~、まだ、寝る前の水菓子が楽しみなんだから、イジワル言わないでください」
「みんなも、センセイの悪口言うと、マーク君とおんなじですよ、いいですか?」
「はぁ~い」
疲れるけど、魔法の勉強は必要なことだ。女神様たちにも言われている。女神様に教えてもらうのが本当は一番いいだろう。素人が素人同士で勉強って、試験前の勉強会と同じ感じで、正解を導けるのかしら?
いけね、マリーは素人じゃなかった。セミプロかな?
どう見ても、三桃ちゃんのが、きちんと勉強してきていると思われるのに、どうして、助手なんですかね。 マリー先生。
「エッヘン、魔法は、誰にでも使えるモノでは、ありません、まずは、適性をみていきましょう」
そりゃ、そうだろう。
誰だって、魔法使いになれないだろうさ。三桃ちゃんの故郷カルボーアじゃあるまいしね。
適性?
難しいことは、いいから、今日は、ほどほどにして、もう、お風呂に入らせて欲しいなぁ。
「先生、お風呂もまだですし、眠たくなってきちゃうので、今夜は、軽めにお願いします」
「ルルちゃん、わかりました、今日は、さわりだけ、感じを試してみましょう」
それではと、マリーが、リンゴを一つ床に置いた。
リンゴが一つアップル、リンゴが二つアップルプル、リンゴが三つアップルプルプル、リンゴが四つアップルプルプルプル。懐かしい何処かで聞いたことのあるような歌じゃありまんか。
一つのリンゴを化粧筆を指し棒のようにしながら、一つずつ増やしていく。こんな便利な魔法を使えるんだね。マリー先生、尊敬しちゃいます。これから、リンゴに困ることは、ないじゃないですか。
「はい、みなさんも、リンゴを増やして見ましょう」
「出来るわけありませ~ん」
「無理で~す、そのリンゴ食べてもいいですか?」
「みんなは、リンゴが食べたいですか?」
「はぁ~い」
「人数分に、増やさないと、数がたりませんね」
「先生が、増やしてください」
「いいですか、もう一つ、増えて欲しいなぁと強く思いながら、リンゴにお願いしてみましょう」
「ううう~ん」
「増えて~」
「増えません」
マリーは、増やしたリンゴをどけて、一つだけを俺達の前に残した。
そして、食べたい気持ちをそのリンゴに激しくぶつけるように、念を送るように促した。リンゴが、極わずかに振動で揺れるような感じが、したような、しないような。
マリーと三桃娘は、それを見逃さなかったようで、希望の光を見出した顔を見合わせている。
「いい感じです、震えています、ブルっとしています、リンゴちゃん」
「いいんですか、もうおしまいにしてくれるんですか?」
「もうすこし、試してみましょう」
「先生、これから、毎日勉強会するんですか?」
「そうですね、先生の気分が良かったら、やりましょう」
「気分なんですね」
「では、今度は、一人ずつ、試してみましょう」
「ひとりずつ?」
「マーク君、こちらに来てください」
「オレから?」
マリー先生が仕切る中、みんなの輪から一人、一歩前へ、三桃先生の前に呼び寄せられる。俺以外の生徒は、俺を囲むように成り行きを見守っている。
まぁ、いいか、今夜は、俺が、マリーのお遊びの生贄になって、気分良くなって頂いて、早くお風呂の時間にしてもらいましょう。
「集中できるように、題材を変えてみましょう」
「ボタン先生、パンツを脱いでください」
「えっ、私?マリー先生、私、どうして?パンツ????」
「早くしてください」
マリーは、また、おかしなことを言いだしたぞ。マリーのイタズラが始まったんだな。三桃ちゃんたちに、マウントをとるように、有無を言わさんとばかりに、強要しちゃってるぞ。
「はっ、恥ずかしいです、マリー先生、許してください」
「・・・・、じゃぁ、私が、脱ぎます・・・」
嫌がるボタンを遮るように、ハタンが、顔を赤くしながら、名乗り出て来た。
ハタンちゃん、マリーの言う事をあまり聞かない方がいいと思いますよ。マリーは、ボタンを早々に諦めて、既に、ハタンを標的に変えたようである。ネクターは、名前が挙がらなかったことに、ホッとしている感じだ。
「あらっ、ハタンちゃんは、見込みがあるわね、では、パンツを脱いで、渡しなさい」
「えっ、センセイに渡すんですか?」
ハタンは、立ち上がると後ろを向きながら、衣を捲り、パンツを脱いで、マリーに渡した。マリーは、そのパンツを先ほどのリンゴに変わる題材として床に置いた。
題材を変えるって、リンゴをパンツに変えるってことだけだったのか、ハタンにもマリーの意図が理解出来た様で、予想だにしない要求を突き付けられることがない安心感が顔に出てきた。
「今度は、エッチなマーク君のために、大好きなハタンちゃんのパンツが題材です」
「待ってください。センセイ、大好きなパンツは、私のパンツのはずです」
「いいんです、ロコちゃんは、黙ってらっしゃい」
「やっぱり、私が、題材になります」
「ボタンちゃんも、もう、結構ですから」
パンツ一つで揉めることもなかろう。
大体、どうして、パンツなんだ。マリーの三桃ちゃんに対するイタズラか、リンゴより、パンツが好きって、エッチ、エッチって俺をバカにしているのかのいずれかだよね。
まぁ、いいだろう。今夜は、マリー先生が主役だ。食後の余興をみんなで楽しんじゃう約束だったもんね。
「マーク君、さっきのリンゴと同じように、大好きなおパンツに念を集中させてみてちょうだい」
「パンツをどうするんですか?」
「マーク君が、ハタンちゃんのパンツに触れることなく、動かせたら、ご褒美をあげます」
リンゴが、パンツに変わっただけと思えば、魔法の訓練に他ならない。リンゴよりも軽いパンツのが、もしかしたら、動かせるような気持ちにもなるんだから、案外とマリーの教え方も満更でもないのかもしれませんね。
「ううっ~ん」
俺は、目の前のハタンのパンツに、動くように念を送り続ける。
パンツだと思うとやっていることにバカバカしさが脳裏を走るけど、リンゴだと思えばといいと言い聞かせながら、頑張ってみる。全員が、俺とハタンのパンツに釘付けになっている。
リンゴは、さっき極わずかに震えたけれども、パンツは、微動だにしない。もっと、ハタンのパンツを欲しないといけないのかもしれない。リンゴを食べたいって強く思ったように。
「マーク君、ハタンちゃんのパンツが欲しくないんですか?」
「欲しいような?欲しくないような?」
「酷いわ、マーク、私のパンツに興味ないなんて・・・」
「そういうことじゃないよ、パンツまで脱がせてゴメンヨ、ハタン」
「そうですよ、失礼ですよ、マーク君、やっぱり、センセイのパンツに変えましょうか?」
「異議あーり、センセイのパンツじゃ、効果ありませーん」
「ルルちゃん、授業中ですよ、お静かに」
俺だって、頑張っているんだよ。
大体、魔法の適性もあるのかわからないまま、やっているんだし、ハタンのパンツに魅力を感じない訳じゃないけど、パンツをどうするのさ。もう、目の前にパンツがあって、よく観察できているんだものなぁ。
「もう一度、やってから、今夜の実習を終えますよ、もっと、よーく見たい見たいって、思いながら、念を送ってちょうだいな」
「先生、もう、すでに、十分よく見えてますけど」
「では、中の中まで、透すように見えるように、見たいんだって、手に取りたいって、感情を爆発させるように」
「わかりました、やってみます、これやったら、本当に、おしまいにしてくれますよね」
「今日は、おしまいにしましょう、だから、真剣にやってくださいね」
「ちょっと、恥ずかしいけど、もっと、見たい気持ちをぶつけてみます」
これで、お終いにしてくれるという言葉が、嬉しくて、ラスト一発、頑張ってみる気が起きてきます。
ハタンのパンツに全神経を集中させて、中の中まで見たいという気持ちを頭の中で増幅させていく。
俺以外のみんなも床に置かれたパンツの動向の一点に注視している。
バカバカしさを消し去って、頭の中が真っ白になるくらい念を送った瞬間、何か眩しいものがキラリと光った。
そこからの時間が、俺の目には、ストップモーションで映し出されていく。
「イヤっ~ん」
「・・・・・」
当然、床のパンツは、震えもしないまま置かれたままの状態を保持している。一方、ハタンの衣が裾風によってヒラリと翻り、中の中まで、よく見えている。
ゴールド・ラッシュ!!!!
「ダメっ、エッチっ~」
ハタンが透かさず裾を抑えて、ノーパンの太腿を抑えている。ほんの一瞬の出来事のはずであるが、その光景は、絵画の様に瞼に焼き付いている。
グレイト。
この言葉が自然と口に出ちゃう。
「マーク!ハタンのゴールドが見たかったのね~っ」
「ちちっ、違うよ、違わないけど、マリーが、いったんだろ、中の中まで見たいって思えって」
「パンツよ、パンツ、今日は、パンツなのよ」
「俺だって、パンツに念を送ったよ」
「マークに、見られた、みんなにも・・・」
「ごめんよ、ハタン」
「でも、それほど、見たかったんでしょ、私の金、なら、うれしい」
「ハタンのだけ?私が脱げばよかったわ」
「ボタンより、私」
「ネクターまで、いいから、金よりも、マークは、赤いのが好きなのよ」
「いいえ、ブルーです」
「違うわ、グリーンが一番すきなのよ」
カラフルなことですね。我が家の美女軍団は。
「いろいろあるけど、マークに魔法の邪な適性があることだけは、わかったわ」
「ヨコシマまって、どういうことだよ」
「これだけのことを見せられたら、わかるわよねぇ~」
「マリー先生、明日は、私を題材にしてくださいね」
「考えておきます。センセイは、今後は、マークに個人授業をしなくてはいけませんので」
「マリー、ズルーイ、みんなの勉強会でしょ~」
やっぱり、次回があるんだな。
本当に、俺に魔法の適性があるのかしら?
それはそれで喜ばしいことに違いはないけど、裾風の正体が、無意識のハタンの念だったら、ぬか喜びになっちゃうと思いませんか。
でも、素敵なゴールドを拝めて、胸のドキドキが収まらないことは、デザートの水菓子を味わうことに引けを取らないって、感じているのは、俺だけの様ですね。
ゴールド・ラッシュ!
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