拾い物は、お宝?罠?
海に揺られて小一時間が経った頃、ロコは、カモメが伝えた船を視認することが出来た様で、声を掛けてくる。
「見えたわ、火事かしら?」
「直ぐに、あんまり、船を寄せないで、まず、確認からだよ」
「でも、救出しないと」
「確認だよ、罠だったら危ないから」
「ロコ、火事だったら、もっと、燃えているんじゃ、煙だけだよ」
「どう確認するの?」
俺は、船底の倉庫から食べ物を取ってきて、甲板で食べている白いチューちゃんを掌に載せて、ロコに提案する。
「ロコ、チューちゃんに探らせよう、その船の中を調査するようにお願いしてくれ」
「わかったわ」
ロコがチューちゃんに耳打ちをする。
それが終わると、俺は、チューちゃんをそのまま煙の上がっている向かいの船に目掛けて、放り投げた。
チューちゃんが、お空に綺麗な放物線を描きながら、隣の船に辛うじて届いて、見えなくなった。
「チューちゃん大丈夫かなぁ?」
「大丈夫だよ、チューちゃんに任せるのが一番だよ、そのあと乗り込めばいい」
「何なら、私も斥候部隊に参加しましょうか?」
「オロチちゃんは、まだ、待っていて、チューちゃん位の小さな斥候がいいんだよ」
「あらっ、オロチちゃんには、優しいのね」
「意地悪な事言わないでよ、チューちゃんなら、大丈夫さ、適任だよ」
ロコは、少し不満気だけれども、俺の意見に賛同できることは、分かっているらしい。気を紛らわすように、久しぶりに、天使の笛を取り出して、口に銜えた。
「キュルルル」
甲板の俺達三人を霧が包み、久しぶりの幻影が浮かび上がった。
なんと、暗い部屋の床で下着姿の美しい娘が、後ろ手に腕を縛られ、両足首も縛り上げられて、転がっている光景だった。
それも、一人ではなく、三人の娘さんが、同じ様に転がっていた。
「なんだか、ルルが縛られていた時の様だね、あの時は、丸裸だったけど」
「また、エッチな笛になっちゃったんじゃないの?マークの頭の中なんでしょ」
「それだけじゃないでしょ、だって、この幻影は、本当のことなんでしょ」
三人の想像は、一致していた。
この幻影は、恐らく向かいの船の中でのことだろう。こんなことならば、チューちゃんじゃなくて、俺が斥候に立候補すれば良かったかな?エヘヘ。
冗談は、ともかく、向かいの船には、この三人の娘以外にも、彼女たちをこのようにした者どももいることであろう。もしくは、この娘たちを捨てて逃げ去った後なのかもしれない。兎に角、気を付けながら救出を検討しなくてはいけないだろう。
「セミヌードの女の子が出てきて、俄然マークは、救出に前向きになったわね」
「何を言うんだい、ロコ、セミなんだよ。ミンミンゼミだよ」
「本当にマークは、エッチねぇ、女の子だとやる気出して、現金なんだから」
俺のやる気は、隠していても、二人は、御承知のようで、オロチちゃんまで、呆れている様子だ。でも、いいじゃないか、やる気が出ることは、とってもいいことでしょ。
さて、どうやって、乗り込みましょうか。チューちゃんは、まだ、見えるところに戻ってきていない。チューちゃんの報告を受けてから、船を横づけすることになるだろう。ロコもそのつもりで、舫綱を準備している。流石に仕事が早いですね。
あと気になるのが、船から立ち上る煙である。火事なら俺達が遠くから発見していたのだから、延焼が広がっていてもおかしくない。炎は、見たところ確認できない。まるで、狼煙のような煙なのだ。
向かいの船の縁に白い影が蠢いている、チューちゃん斥候部隊が何かの情報を得た様子である。ロコは、舫綱を向かいの船に放り投げて引っかけるとチューちゃんにその綱を渡って戻ってくるように合図する。
チューちゃんが綱の橋として使うには、十分な太さがあり、スルリスルリと綱を渡ってロコの手元に戻ってきた。
ロコは、チューちゃんからの偵察情報をよくよく聞いている。
「マーク、やっぱり、この船には、三人の娘さんがいるらしいわ」
「幻影の通りってこと?」
「他には、誰もいないらしいわよ」
「それが分かれば、危険性はないかな、後は、煙が気になるけど」
「煙は、なんでしょうね」
「チューちゃんは、何ていっているんだい?」
「煙の報告は、ないわよ」
「では、まず、ロコ、船をその舫綱で横づけにしておくれよ、乗り込むよ」
「了解、マークが乗り込むの?やっぱり、エッチねぇ」
「いいわよ、私が第二斥候で、見てくるから」
ロコが、綱を回している最中、オロチちゃんが、その綱の上を青大将くらいの蛇の姿になって渡っていく。
俺もロコと一緒に綱を手繰り寄せて、二つの船の右舷と左舷を接触させて、固定を完了する。
俺とロコも隣の船の甲板に飛び移った。
俺達の船よりも、一回り小さいその船は、帆がなく帆柱だけが立っている。甲板は、ひどく荒れていてところどころ捲れあがっている。
見た感じは、襲われたのか、捨てられた船が、漂流しているといったところである。
先ほどまで狼煙のように立ち上がっていた煙は、船に乗り込んでしまうと不思議と何処にも見当たらない。やはり、火事ではないようだ。
先ほどチューちゃんが偵察した船底から、オロチちゃんも戻ってきて、俺とロコの足元まで来ると、いまや、通常の姿である緑の肌の女の子に戻ってくれた。
「幻影の通り、マーク好みの美しい娘さんが、縛られていたわ、あと、チューちゃんの言う通り、三人しかこの船には、居ないわね」
「三人だけなのかい?見た感じ何もない、がらんどうだよね、荷物なんかは?」
「なんにもないわね、女の子だけ、それも自由の効かないオンナノコ・・・」
「なんだよ、その目は?」
「しらない!」
俺もと、船底へとつながる入り口に、近づいていくと、ロコが割って入ってきた。
「マークは、ここで待っていて、私とオロチちゃんで見てくるわ、それとマークのナイフを貸して」
「いいとも、これで、縄を切るんでしょ、でも、いきなり、自由を解かないで、ちゃんと確認するんだよ」
「何を確認するの?」
「罠かもしれないでしょ、俺みたいなオトコを釣るため・・・、なんかこの船、不自然だと思わないかい?」
「エッチなマークにしては、今日はどうして、冷静なの?わかったわ、気を付けます」
「うんうん、私も、気を付けます、では、ロコの護衛も兼ねて、大き目なヘビでいくわね」
オロチちゃんが、先ほどの青大将よりも大きいロコの太腿と同じくらいの太さの蛇に変身して、これまた、ロコの太腿から足首にまで巻き付いてしまった。
「オロチちゃん、ありがとう、でも、歩きにくいわよ~」
「ガマンガマン、さぁ、いきましょ」
本当に歩きにくそうにロコが巻き付かれた左脚を蟹股に引きずるように、進んでいく。
ロコもある意味で、縛られて自由が効かないようにも見える。お揃いということで、親近感を湧かせられるか、それとも、オロチちゃんの恐ろしさで、威圧できるのか。
どちらにしても、当方に有利なことは、間違いないだろう。
そこまで、考えて変身してくれているのならば、オロチちゃんは、本当に頼りになるなぁと、安心して二人に任せられる。
ここで、待つことにします。
広い海の上で、広いお空でも見ていることにしますね。
二人して、転がるように船底へと繋がる入口へと消えていった。
俺は、ロコの白いハツカネズミのチューちゃんと甲板に腰を降ろして、俺達の船から持ってきた南京豆の渋皮剥きながら、口に放り込んだ。
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