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ちょっとそこまで


 この前、この村では、かわいい三人娘や俺の爺さん達と束の間ではあったが、過ごすことができた。今歩いている同じ村は、村というものではなく、井戸と我が家一軒しかない所なのだ。


 昔の家の跡さえもない。只々、藪に覆われているのだ。何もない所に草木が生い茂った感じがしている。これから、整備していかなくては、ならないだろう。


 今歩いている一本道は、モルシンの港町に続くようにマリーが魔法で作ってくれた道である。道は、この道のみがあるだけだ。ということは、里山とか、川に行こうと言って出て来た訳だけれど、まさか、この背丈ほどもある藪の中を分け入っていくことは、土台無理な話であることを気が付かなかった。


 マリーのように魔法を使えるわけでもない俺には、三人娘がウサギや魚を獲った所へは、到底たどり着けまい。この一本道を道なりに進んでいくことしか、今現在、為す術がないことにやっと気が付きました。


 やはり、俺ってクルクルパーだねぇ。


「ねぇ、マーク、このままだと、モルシンに買い物になっちゃうわね」

「やっぱり、ロコは、気が付いた?この一本道」

「だって、一本しか道できてないもんね」


「マーク、本気で藪に入るなら、合体してオロマークに変身できるけど、三人での合体は戻れなくなっちゃうかも?」

「三人で、合体????アブノーマル?」


「オロチちゃん、今は、やめとこう、このまま、モルシンの方へ行ってみようよ」

「アルカ教会に寄るの?」


「いいでしょ、伯母上とは、別れたばかりだし、いつでも、お出ましお願いできるし」

「そうね、買い物はいいけど、マーク、お金もってきたの?」


「お金か、持ってないよ、いつもロコに船の物を出してもらっているもんね」

「お船を港に着いたら出しましょうか?」


「まぁ、その時は、その時だよ」


「おデート、うれしいなぁ」

「あっ、オロチちゃん、私も」


 左右の腕に、オロチちゃんとロコにぶら下がれて、坂道を下っていく。開けた道まで辿り着くと眼下に遠く港町が見えている。意外と近い感じだ。


 そもそも、モルシンの街は、船から上陸しただけで、素通りした街だった。教会にしか寄っていないものね。港町として賑やかで活気に満ちていた印象しかない。ティーンの港よりも大きくて賑わっている。まぁ、街を散歩するだけでもいいかなぁ、日がな一日、休日の過ごし方を満喫するのもいいでしょう。

 

 お家の掃除や片付けから逃げ出してきたことは、みんなには、バレてません。


 こうなったら、ロコとオロチちゃんと本格的におデートにしちゃおうかしら。


「お金もないから、何も買えないし、俺の賽子で博打をしようかと思ったけど、また形に取れちゃうとね」

「サイコロは、もう、やめて。それは、大事な宝物なのよ」


「じゃぁ、船で沖に出て、魚でも釣りますかな、川にいけなかったから、海で」

「いいわよ、直ぐに出せるもん」


「私は、どこでも、ついていくだけよ、刺青になっても」

「今日は、いいのよ、オロチちゃん」


 ワイワイガヤガヤと話をしていると、港の波止場まで意外と早く辿り着けた。多くの荷物を荷揚げや荷積みをしている大きな船から、細々とした船まで結構な数の船が停泊している。


 ロコは、巾着から木片を取り出し、縁日の型抜きの様になっている船の彫り物をチョンチョンっとする。

 波止場にドドーンっと俺達の船が出現した。初めて見る技に俺は、腰が抜ける程にびっくり仰天していると、もはや、体験済みのロコとオロチちゃんは、早々と、縄梯子を伝って船に乗り上がっていく。


 待っておくんなまし。置いていかないでおくれよ。俺も続けとばかりに、あたふたと縄梯子に足を掛ける。


 魚釣りに出すには、大きすぎる船だけど、ロコがいてくれれば、難なく船は、移動できるから安心だ。沢山釣れたら、港で売ることも出来るかもしれない。釣りじゃなくて、漁になっちゃうかな、そんなに甘くはないだろうけどさ。でもでも、資金調達も可能かもと、取らぬ狸の皮算用をしてしまう。悪い癖だね。これだから、博打もやりたくなっちゃうのかなぁ。そうだ今回は、タヌキじゃないよね、今日は、あくまで、魚釣りだけどね。


「すこし、沖に出るわね」

「お任せします、船長さん」


 ロコは、港を離れて、沖へ沖へと船を向かわせる。久しぶりに海上にて浴びる潮風は、実に心地よい気分にさせてくれる。船での旅をここのところしてきているので、船に乗ると、不思議と安心感が湧いてきちゃう。やっと、陸でもお家も出来たばかりというのに、この船の方が落ち着いちゃうのは、単に慣れているからだろうね。


 ロコは、連れて来た白いハツカネズミのチューちゃんを甲板に放した後、口笛を吹いて、カモメを呼び出して、魚釣りの情報収集をしてくれている。カモメと話しているロコは、何やら頷きながら沖の遠い先を指さしている。


「マーク、もっと遠い沖に、何か船があるみたいよ」

「船、そりゃ、他の船だって出ているでしょ」


「そういうことじゃなくて、遭難みたいな?」

「遭難?」


「おかしな動きの船なんですって」

「マーク、いってみましょうよ」


「そうだね、いってみようか、でも、慎重にしようね、何かの罠かもしれないからさ」

「アイアイサー、進路、おかしな船に向かいます」


 ロコは、カモメ調査員の報告から、その進路を見極めて、船を進めていく。この分だと、今夜のおかずのお魚さんは、獲れないかもしれないぞ。お腹を空かして待っているマリー、ルルやプラムに、怒られちゃうかもしれないなぁ。


 さっきから、未知の船の探索に賛成したオロチちゃんは、甲板に寝転んで、チューちゃんと遊んでいる。食べちゃわないようにね。ロコに怒られますよ。


 チューちゃんが船底の倉庫へと降りていく。オロチちゃんは、甲板の下へと続く入り口でチューちゃんを見送ると、俺の方へ、転がりながら、寄ってきた。


「マーク、久しぶりのお船、いいわねぇ」

「俺も、海風とこの揺れが、いい気持ちだよ」


「そうなのよねぇ」

「釣りをしないといけないけど、ロコの言うお船は、近いのかなぁ」


 ロコは、見張り台から望遠鏡で遠くを見ている。


 流石に船乗りだけあって、海での救難については、放っておけないのであろう。そして、ロコの覗いている望遠鏡が一筋の煙を捕らえた。


 未だ、俺とオロチちゃんは、甲板でゴロゴロしているだけだけど。



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