おうち
風呂から上がった俺達は、部屋で今後の事を検討し始めている。
二人の女神は、それぞれの本拠である、ティーンのクリス教会とモルシンのアルカ教会へと戻っていった。忘れがちなことだけど、女神様だもんね。クリクリの指輪があるから、いつでも会える安心感は、半端ない。俺の親同然の二人には、これからも頭が上がらないことこの上ないことだろう。
まずは、俺も二人に近づけるように魔法使いになる必要があるのかなぁ。勇者には、なれそうもないから、マリーに教えてもらった方がいいのかもしれない。ペテン師にならないように用心することも忘れちゃいけないな。
また、マリー自身も魔法使いとして、もっと修行と訓練を受ける必要があるはずだ。まぁ、二人の女神がそれも担ってくれることだろう。しかし、マリーは、クリスティーの血筋と見て間違いはないはずだ。そうすると、俺とは、血が被っていない。魔法使いの王道の血がマリーには、流れているのだから、焼きもちばかりよりも、頑張って頂きたいものである。
ロコには、船を任せるとともに、お家の建設にも助力してもらう事になった。ルルは、その道具などをお願いしよう。プラムには、冷静な判断を引き続き頼めるだろう。オロチちゃんは、今や単なるプラムのアンクレットの紋章ではなくなり、常に俺達とともに行動してもらうことにした。合体のゾクゾク感は、日常茶飯事になることだろう。
それに、オロチちゃんは、もう俺の身体の一部と言って良いだろう。このことは、四人には、内緒にしておこう。でも俺以外とも合体は、できるだろうから、四人もゾクゾクを体験するかもしれないけどさ。
六人揃って、こんなに清々しい朝を迎えることは、初めてのことかもしれない。
朝食を頂き、プラムのおとっさんである村長への挨拶も終えて、俺達は、荷物をまとめて、プラムの部屋の床に輪になって座っている。そうだ、初めてドラゴンの牙をファミリー全員で体験しようというのだ。現在進行形の場所だけ移動は、俺もオロチちゃんも初めてでドキドキしちゃうけど、他の四人は、もっとドキドキしていることだろう。でもさ、アンクレットでのテレポーテーションは、俺以外のみんなは体験しているのだからさほど変わりないと思っちゃうのは、俺だけなのかなぁ。
「それでは、おのおの方、まいりますわよ」
「さきっちょ、ツンツンされちゃう気がして~」
「そうなのよ、私も、さきっちょが疼いちゃう」
「そうだわ、今日は、まだ、さきっちょネジネジしてもらってないわ」
「オロチちゃん?私だって、まだよ」
「違うのよ、毎日、さきっちょイジイジは、約束したんだもん、二人っきりの時・・」
「マーク!そうなの?オロチちゃんだけ?」
「約束しました、オロチちゃん、ゲリアに着いたらね」
「うん、毎日してくれなきゃイヤよ」
「マーク!」
「ズルイ!まーく!
「マーク、どうして?」
「不公平よ」
「みんなも、その・・、触ってもいいの?」
「いつも、いきなり触るくせにぃ~」
「では、ツンツンは、いきなり、させていただきます」
「わーい、オロチちゃんだけじゃなくて、おねがいよ、いつくるか、ドキドキしちゃうわね」
「うんうん、ドキドキする~」
女の子って、さきっちょをそんなに触られたいのかなぁ。俺は、内緒だけど、触りたいですけれどね。催促されちゃうのは、ちょこっと違う気もするよねぇ。わがままを言わせて頂ければ、口では言えないけれど、美しい五人身体に俺以外の者が触れることは、想像しただけでも、とてつもなく耐えがたいことであると確信できます。これがジェラシーってことなのかしら。
「本当にいいかい、みんな、ルル、魔法陣の紋章を出してくれるかい」
「うん、真ん中におきましょうね」
「オロチちゃんは、このアンクレットをもって、秘密の言葉と、真ん中押し込みをお願いよ」
「うん、わかったわ」
「それでは、おのおの方、手を繋いで、腕を組んで、輪を連ならせてね」
みんなの輪を確認した後、オロチちゃんがアンクレットの石っころを右でもなく左でもなく、真っすぐに押し込む感じで、グイッとすると同時に、秘密の言葉を唱えた。
俺達全員は、ゲリアの村への思いを集中させる。
「エ、ヌ、ジ、ア、イ、ブ、ル、ス、カ」
何度か体験している大きな光の渦が六人を取り囲んで、今回も、回転する波の中にグルングルンと飲み込まれていく。何だか排水溝に水が流れていくように、ルルの魔法陣の紋章メダルに俺達の身体が、吸い込まれていき、スパンっと飲み込まれた後には、微動たりもしない魔法陣のメダルだけが、部屋の床に佇んでいる。
一呼吸遅れて、空間からルルの手が現れて、そのメダルを掴むと、メダル諸とも部屋から消えてなくなった。
「マーク、魔法陣のメダル掴んできたわ」
「ルルありがとう。紋章メダルは、アンクレットみたいに帯同しないのかもね」
「うん、でも、渦巻に入ってから、渦の流れが収まって、おかしいなと思ったのよ」
「着いたら、首から掛けるようにメダルをしようね。大事な物だし、ルルの首飾りにしようね」
「は~い」
真っ白な世界で、ルルのその手に魔法陣メダルが戻ると、渦の回転が再開しだした。かなりの回転なのだけど、不思議と目が回らないでいる。六人で輪になって、胡坐をかいたままの状態がグルングルンしている。そして、渦の流れが優しくなってきたと思うと、静かに地面にお尻が付く感覚を覚えた。
ゆっくりと、目を開くと、お日様に照らされた藪の開けた場所、ゲリア村の井戸跡の横に輪になったファミリーが座っていた。
「戻ってきたよ、ゲリア、ここに住みます」
「ねっ、井戸も枯れて、藪の中なのよ」
見事に何もない藪の中であるが、井戸だって綺麗にして、呼び水して、戻ってもらいましょう。それに、ここは、港町モルシンにも近いから、船旅にもいいのではないだろうか。まぁ、魔法陣を使えば、何処からでも行ったことのある港にいけることは、いけるけれどね。
まずは、この藪を何とかしなくてはいけないだろう。ここは、我がファミリーの優秀なる魔法使いにお願いするしかないだろう。
「マリー、この藪を切り開いて、お家を立てるスペースを作っておくれよ」
「できるかなぁ、そんな大きな目的をもったことが?」
「できるでしょ、津波だって起こせたじゃないの」
「うん、だから、こうしたいって魔法は、パンツを出すくらいしか・・・」
「できるさ、マリーは、成長しているはずだよ」
「ちゃんと、できたら、ご褒美ちょうだいね」
久々にマリーは、化粧筆の様なモノを天に向けて突き出し、お決まりの言葉を叫んだ。
「ブルスカ・ショック~っ」
俺達の座っていた所を中心として、円を描くように、藪が外向きに倒れていく、見ていて凄まじく壮観な光景が目の前で起きている。さながら、遠い星から何から降り立った跡のように、草木が其処だけ倒れていく。そして、モルシンに繋がるであろう一本道も開けていく、空から見たら、丸に棒の形に見えることだろう。キノコの形かな?蛇の頭かな?それとも、カメさんの頭かしら?兎に角、意味深なことは、考えないことにしましょう。
「凄いじゃないか、マリー、ありがとう、チュッ」
「マーク、できたわ。ええ~っ、そんな投げキッスじゃイヤよ~」
「今度は、私ね」
「ロコ、お願いします」
ロコは、巾着から大事な木片を取り出して、ツンツンと突いてみる。小さなロコの木片から、ルルの金属と同じように、元の大きさを変えることなく、大量の木材が出現し、見る見ると地面に積まれていく。
それを、ルルが、金槌で、トントンツーっと叩くと木材が踊り出すように立ち上がり、積み木細工のようにお家の骨組みが組みあがっていく。
プラムとオロチちゃんは、俺と同様にその光景を唯々驚きのまま、見つめている。
そして、マリーが、再び化粧筆を空に向けて突き立てると、稲光が、その先に貫いてくる。その光が、ロコの木片、ルルの金槌に飛び火するように、電撃したところで、その言葉が聞こえる。
「ブルスカ・ショック~っ」
辺りが、稲妻の光に包まれて、目を開けていられない。光が止んだであろう頃合いで、そっと目を開けてみると、俺好みの理想と思える家が、ドドーンっと建ち上がっている。
プラムの館みたいなお城のような家ではなく、木材がそのまま生かされた質素であるが、清潔で落ち着きのある佇まいのお家だ。どことなく、ティーンで借りていた納屋の雰囲気まで感じられて懐かしい趣である。
「マーク!どうよ?」
「マーク、頑張りました」
「そうよ、マーク、私たちの船をイメージしてトントンしたのよ」
そうだったのか、これは、正しく陸の船というイメージがピッタリだ。流石、我がファミリーだ、豪華さを追求する訳でもなく、機能性や使い勝手をわかってくれる素晴らしい女の子であることを再確認できた。俺の目の前の家族は、やればできる子ばかりなのだ。普段は、脱線ばかりしているのにねぇ。
「すばらしいよ、こんなすごいお家、うれしすぎるよ」
「私たちは、見ていただけで、ゴメンナサイ」
プラムとオロチちゃんは、出来上がったお家の掃除をし始めている。なんて、素早い連携なのでしょう。
俺こそ何もしていない。ほとほと、ダメな男でゴメンナサイ。これから、本当に頑張るよ。魔法も覚えて、立派かどうかは分からないけれど、勇者じゃなく、ゲリアの科学者でも目指すよ。できるかな?
俺は、新しい俺達の家に足を踏み入れた。結構な広さの建屋である。
広間に、広い寝室かな、台所に、広々なお風呂、はばかりは、表の小さな小屋がそれだ。六人の家である割には、部屋は、広間と寝床の二つだけだ。すべてが、広々しているが、個室はないらしい。みんなで一緒がイイってのが、ありありと分る間取りの設計なのだろう。いいでしょう、隠しごとなどないわいな、オロチちゃんとは、合体までしておるわけだしね。
「マーク、このお家も、この木片に仕舞って、持ち歩きできるからね」
「おおっ、それは、いいね。お船もお家も、ロコが持ち歩けるって、いいよね」
「何処に行っても、お家で寝れるってことね」
「但し、それなりの広さの場所は、いるわよ」
「今度さ、天幕を持っていくようにもしよう、広くない所用にね」
「わかったわ、それは、裁縫だから、私が作るわよ」
「へぇ、プラムは、裁縫できるの?」
「一応、一通りは」
各々が出来ることをやる、これが家族だよね。さぁ、では、俺は、今日の食べ物でも調達に行こうかな。
「お家は、ありがとう、食べ物を取ってくるよ、ウサギとか、魚とか、みんなは、休んでて」
「私もいくわ」
「オロチちゃんばっかり、ズルいわよ」
「そうよ、今度は、私」
「オロチちゃんは、獲物を捕るのは、上手だから、お願いしたいよ、でも今日は、土臭くないのでお願いします」
「わかってるわよ、あれは、地下の洞窟だからでしょ」
「私も連れてって、チューちゃんが食べ物を探してくれそうよ」
「それもいいね、オロチちゃんが食べちゃわないようにしないとね」
「食べません」
「じゃぁ、オロチちゃんとロコと三人で行ってくるから、三人は、待っててね」
「わかったわよ、でも、ちゃんと見てるからね、念力で」
「井戸を魔法で蘇らせたから、お湯でも沸かしておきますね、オフロも」
マリー、ルル、プラムには、お家での仕事をお願いして、俺とロコ、オロチちゃん、そして、チューちゃんで何か食べ物の調達だ。
里山と川に行ってみよう。モルシンまで買い物は、今日は止めておきましょうね。
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