しあわせ
ダハスの村長は、プラムを含めた全員の帰還を大喜びで迎えてくれた。
そして、とてつもなく美しい神々しい二人の美女も加わったことで、以前の宴席よりも、大歓待をしてくれている。
本当に人間の姿の食事って、最高のものであるとしみじみ噛み締めている。
お腹が満たされた俺達は、俺達の部屋に戻り、寛いでいる。
こんなにも、のんびりとできるのは、この前、この同じ部屋で過ごさせてもらった時以来のことだ。
ダハスの火の山がここの所、火を多く噴き出していることについては、まだ解決してはいないが、そもそも、大本の噴き出しの原因が、俺の鍬の一撃であるとすると、火の噴き上げの調節も、俺達で可能なのかもしれない。そんなことを考えながら、相談と検討にそれぞれの声が飛び交っている。
そんな中、村長との話を終えたプラムが、俺達の部屋に戻ってきた。
「それでは、みなさま、お待ちかねのお風呂の時間ですよ」
「お風呂いいですね、ゲリアのおしくらまんじゅうも良かったけど、手足を伸ばして入りたいよね」
「お風呂は、久しぶりよね」
「女神様は、お風呂入らないのですか?」
「みんなで入りましょう、マークは、男湯だからねっ」
「わかっているよ、だいたい女湯に入ったことないじゃないか」
「でも、貸し切りにしてもらったから、どっちもいいのよ~」
プラムは、みんなを促すように、お風呂へとお部屋から連れ出してくれた。
みんなとお風呂、いいねぇ、本当に、本当の家族風呂だ。家族風呂?だよね。
大きなお風呂、この前も入ったお気に入りの温泉施設の湯に浸かりながら、もうこのまま眠ってしまいそうに、気持ち良い感覚がとても嬉しい。垣根越しの隣の女湯からは、いつもよりも増して大きな声と水しぶきの音が聞こえてくる。男湯も女湯もプラムの親父さんの計らいで、貸し切りにしてくれたので、本当に俺達八人しか入っていない。
広すぎることは、この上ない。
「マーク、マーク、気持ちいいわね」
「ああっ、生き返った感じだよ」
「こっちにいらっしゃいよ、オンナゆ~」
「広々、ここで、十分だよ、もう、動きたくないんだ」
「仕様がないわねぇ~、じゃぁ、こっちがいってあげるわね、うふふ」
マリーが垣根の隙間から、いつもより、小さな声とこっそりとした動きで、俺の横に浸かってきた。
マリーの肌が俺の肌に触れると、なんだかゾクゾクしてきちゃうような、今夜のマリーは、素直なお淑やかな女の子になっている。初めて会った頃の、俺の手を握って離さなかった七つのマリーの目をして、俺の顔を覗き込んでくる。
「ねぇ、マーク、ずっと会えなかったから、心配だし、寂しかったんだからね」
「ああっ、心配かけてゴメンナサイ」
「オロチちゃんと合体したって?私にもしてね」
「ガッタイ?」
「チューも何回もしたんでしょ」
「・・・・」
「私にもしてね」
「・・・・」
「さきっちょ、弄んだの?」
「・・・・」
「私にも・・・」
「あっ、マリー、私にもしてね」
「私にも」
「あたしにも」
「毎日してくれる約束ですもんね」
「毎日?オロチちゃん、オロチちゃんにしたことをまず、私にしてちょいだい」
「マリーばっかり、ズルイわ」
「そうよ」
「今度は、私からでしょ」
「プラムは、黙ってなさい」
「あらあら、エアルは、モテモテなのね」
「血筋かしらね、でも、マークは、ペテン師にはならないわよ、スケコマシになっても」
二人の女神は、湯に浸かりながら、俺をゲリア村の継承者として、育てていくことを確認したようだ。
根源をゲリア村に持つ同門と言える二人の魔法使い、現時点で、クリスティーもアルカティーナもクリス教とアルカ教そのものの存在、女神になってしまっている。
ある意味で、アロンと同じくして、時空を飛び越えて生きる存在なのだ。二人は、俺をも時空の旅人にするために、冒険生活に引きずり込んだわけでもない。
そもそも、二人の女神もアロンに記憶を書き換えられていたが、クリスティーは、ドラゴンの牙に導かれるように、当初、勇者の血筋探しと思い込んでいたが、本来のゲリアの血筋でマナニーニの忘れ形見という本物の宝を探していたことに気が付いたらしい。
そして、特に何もできないし、ましてや、血筋といえども魔法も使えない者が、三人の魔法使いとアロンとが作り出したものを取り返すことができた。良いのか悪いのかよく分からないが、一応、成り行きとはいえ、まずまずの結果を見出したように思える。
まぁ、俺には、あんまり関係ないかなって、もう、思ってもいられない。
いままで、独りぼっちで、寂しくやさぐれていた俺では、もうないのだ。眼の前ではしゃいでくれる家族ができたのだ。今回の十六歳の誕生日以降、次から次へと転がされてきたけれども、俺が得た物は、お宝だけじゃない、一緒に笑ってくれる家族が最大のお宝と、今、お湯に浸かりながら、しみじみと実感している。
「マーク、ぼーっとして、のぼせたの?」
「えっ、ああ、そろそろ上がるかな」
「マークの蒲の帆蒲は?」
「・・・・」
「マークのは、蒲の穂綿っていうより、チビッコヘビちゃんよね」
「どうして、オロチちゃんは、知ってるのよ」
「だって、ホクロ方まで、舐めて治療したもん」
「どういうことよ」
「マーク、私たちは、教会に戻るけど、いつでも、呼び出していいからね」
「そうよ、四六時中、一緒には、いられなくても、四六時中一緒と同じよ」
「あっ、はい、クリスティーも、伯母上も、呼びます、クリスちゃんとティーナちゃんを呼ぶには、どうしたら?」
「何を言ってるのよ、指輪は、オトナ。メダルは、ちゃんよ」
「私のは、ツンツンで、ちゃん」
「そうでした、思い出しました」
「ツンツンまたされちゃうのね。イヤ~ん」
「今、してみる?」
「今は、必要ないでしょ」
いつでも、我がファミリーは、ブレることもなく、視点が独特だよね。そこが、我々の良い所。一人ひとりが、ユニーク極まりなく、これまた、とっても、可愛く美しい美少女の集まりだ。
可愛いクルクルパーファミリー、一番のクルクルパーは、もちろん俺だけどさ。知ってるさ、みんなに負けないように頑張らないとね。
湯に浸かりながら、俺達も、落ち着ける本拠地が必要だと思い始めた。生まれ育ったティーンに戻ることも考えられるが、やっぱり、ゲリアを本拠としたいと思う。いまは、なんにもない村だけど、一から再興するには、あそこしかない気がする。
「俺達の家を作りたいと思う、もちろん、お船もお家だけど、陸に本拠をつくりたいんだ」
「いいわね、私たちのお家」
「どこに?このダハスにする?父上に建ててもらうわ」
「ティーンに戻りましょうよ」
「ゲトレは、もう、イヤなのかな?」
「私は、マークと一緒なら、どこでも・・・」
「ロコは、また、いい子になって~」
「私は、マークと合体すれば、一つの身体だも~ん」
「オロチちゃんは、本当にズルいわねぇ~」
「ゲリアに家を作りたいんだ」
「えっ、何もない藪の中よ」
「そうらしいね、でも、そこでやり直したいんだ、時間操作で三人娘にも会いにいけるし」
「いけるの?」
「それに、ルルの紋章メダルがあれば、ドラゴンの牙で場所移動の魔法もできるはず・・・」
「そのはずよ、はず」
「それなら、何処に家を作っても、何処へでもいけるよ」
「マークでも、自分が行ったことのある所以外へは、いけないからね」
「なるほど、そういうことか、当たり前と言えば、当たり前ですね、伯母上」
「わかったわ、では、ゲリアに住みましょう」
「お家は、私が」
「ロコは、そうだったね、家を成す木片だものね」
「うん、お船も仕舞えたから、お家も仕舞えるかも」
「頼りにしています」
お風呂でこんなにも、まじめなお話をしたのは、初めての事だろう。俺でさえ、蒲の穂綿を隠すのも忘れて、お家の事に夢中になってしまっている。
お湯が滴っている、金、赤、青、緑、茶、そして、光り輝く黄金と栗色。こちらにもちゃんと、夢中になっていることに、本当は、みんな気が付いているんでしょう。
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