帰還
赤い瓦の大きな館を前にして、俺とオロチちゃんは、まさに、門を潜ろうとしている。
ここまで来る間に、今朝ほど連行された兵隊さん達には、遭遇していない。門を抜けて、中庭を進んでいくと、見知った守備隊の男がこちらへ向かってくる。
今朝見た兵隊さんの装備とは異なる格好であることにも気付かされる。
「マークさん、オロチさん、今日、お戻りになったのですか」
「ああっ、ここは、ダハスですよね。俺達が岬を目指して船出したダハスですよね」
「何を冗談いっているのですか?半月前に出航したではありませんか」
「おおっ、それは、すばらしいです。村長にあえますか?」
「ええっ、どうぞ、お帰りをお待ちかねです」
村長の館に通された俺達は、玉座に座っている村長の姿を確認して、確証を得るように、安心した。
そこには、まさに、この前、ここから岬を目指した時と同様に、プラムのおとっさんが、こちらへ手招きしている。
「マーク殿、岬の先に、大地を生み出せたのかな、あと、みなさんは?」
「いろいろと不思議なことが、重なりまして、みんなとは、逸れてしまったのです」
「なんと、とりあえず、休息を取りなさい、詳細は、対策とともに」
「ありがとうございます」
俺達は、この前まで宛がわれていた部屋に戻ってきた。
アロンが村から盗んだというアンクレットは、まだ、返していない。
いにしえの村から盗まれたものであるので、プラムの実物を確認してからの方が良いと判断したためだ。
「マーク、本当に、戻ってこれたのね、とっても、疲れちゃったわね」
「ああっ、オロチちゃん、本当にありがとうね、みんなを探さなきゃだけど、少し、眠りたいね」
「うん、そうね、マークは、昨日から、牢屋に入れられて、クタクタだもん」
「オロチちゃんもでしょ」
「私は、マークと一緒にいられるなら、大丈夫よ」
「でも、少し、ここで、眠らせて頂こうね」
俺とオロチちゃんは、布団も敷かずに、床に仰向けになって、天井を見上げている。
みんなは、時空を超えた現在とは異なるゲリア村にいる。
まず、どうして、時間を遡ってあの村に舞い込んだのであろうか。
ドラゴンナイトの捩じりも、秘密の言葉も発していない。モルシンから、山を越えていっただけの事だ。あの小さな里山を超えることが、時の間なのだろうか?俺の爺さんでもある村長のところの納屋で待っているだろう四人をどうやって迎えにいこうか。
秘密の言葉と果物ナイフの目盛りを駆使して、あの納屋で流れている時間の進行形をどう捕まえれば良いのであろうか。
もう、あの可愛い三人娘には、会うことは叶わないのであろうか。
オロチちゃんは、プラムのアンクレットに戻ることが出来るのかもしれないが、これまた、時間軸の違うところへの移動自体がそもそも危険である。
そうだ、伯母さんのメダルあったんだ。俺が、今、元の現在にいるのなら、このメダルが使えるはずだ。
天井を見上げたままで、首飾りのメダルに、チューをする。
メダルは、前回に口づけした時よりも、激しい光を発してその光の柱で天井を突き抜けていく。
「それは、何なの?マーク、凄いわね。何とか光線みたいだわ、天井をすり抜けていくわね」
「ああ、この前、使った時と、少し感じが違うな」
天井を貫いたままの光の柱。
本来ならば、ここまで大げさでない光の中からブルネットの栗毛の美少女ティーナちゃんが、出てきてくれる約束のはずだが。
光の先がどこまで続いているのか想像しながら、二人して、天井を見上げていると、瞬間的に天井が無くなり、部屋も無くなり、何もない空間に青空だけが見えている。
お空の遠い所から、何かがキラリと輝くのが見えたかと思うと、天井と部屋が元通りとなって、天井の光の柱が舞い降りると同時に、女神アルカティーナが真ん前に出現した。
大人バージョンのティーナちゃん?
女神の姿が半透明で見るからに念力による姿のように見えた。
「伯母上、ティーナちゃんじゃないんですね」
「おおっ、マーク、そうか、お前もメダルを」
「メダルは、ティーナちゃんでしょ。それに半透明?」
「私もメダルでお前を探している、お前のメダルとダブルだったから、少女版ではないのだ」
「無事でなりよりだ、そして、現在に戻れたのだな」
「はい、なんとか、みんなは?」
「大丈夫だ、アルカ教会にいる」
「よかった、昔のゲリアではないんですね、もう、三人娘にはあえないのかしら?」
「あの村は、本来、もうない。私も、入り口で気づくべきだった」
「ないんですか?」
「生家の跡をお前にみせておきたかったのだ」
「跡」
「それに、この前入り込んだ村は、時間を旅している、過去も未来もないだろう」
「時間を調整すれば、また、会えますか?本物の伯母さまの子供姿に」
「まぁ、あえるんだろうな、調整?できるようになったのか?」
「おぼろげながら・・・、錬金術師のアロンから技を盗みましたので」
「なんと!アロン?」
俺が、詳細を説明しようとすると、女神は、はたと気が付いたように、話しかける。
「みんなで話をしましょう、呼んでくる、私も、メダルじゃない指輪で呼び出してくれ」
言い終わると、アルカティーナは、今度は、光の柱を登っていくように、天井に吸い込まれていった。
「あの女神様は、オバケクラゲの時の女神よね」
「そうだよ、失神したオロチちゃんを救ってくれたんだよ」
「もぅ~っ」
時を同じくして、アルカ教会では、目を閉じたままの半透明のアルカティーナが、その眼をパチリと見開いて、半透明ではなくなった。
「マーク達がいたぞ!」
「どこですか?」
「現実世界にいる、同じ世界にいるから、メダルで追跡できた」
「どこですか?」
「あっ、そうだな、ダハスの村長の館だ」
「私のお家ですか」
「今から、そちらに飛べ、アンクレットで、みんなもできるのだろう?」
「はい、わかりました」
「着いたら、渡した指輪で、私たち二人も呼んでくれ」
「了解いたしました」
「では、お先にいってまいります」
「みんなで輪になりましょう」
「四人で塊になって」
「それぞれのアンクレットに触れて、マークへの思いを」
四人は、アンクレットのドラゴンナイトに触れながら、マークへの思いを募らせていく。
全員テレポは、もはや経験済みなので、要領を得ているようだ。
それぞれの身体が、アンクレットの石に吸い込まれていく。
そして、床には、四つのアンクレットがメビウスの輪を描くようにクルクリと転がり回りながら、パタンと倒れ、一呼吸遅れて、パッと、消え去った。
「行ったようね」
「私たちも、呼ばれるのを待っていましょう」
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