鍵開け方式
真っ暗な坑道の突き当りに、大きな黒光りする大蛇が、佇んでいる。さきっちょを押し込む前とは、違うところに移動したはずであるが、場所は、変わっていない様に見える。
「場所は、変わっていないよね」
「多分、そう思うわ」
「今、降りて来た穴だけどさ、これ、ルルに塞いでもらった状態に見えるんだけど」
「私は、ルルが塞いだところ見ていないから・・・」
「そうか、オロチちゃんは、失神して、プラムのアンクレットの中だったからね」
「もぉ~っ、私を失神させるのが、大好きなのよね。マークって、本当にエッチなんだから」
とにかく、確認をしたいことと、俺自身で見るための明るさを求めて、オロチちゃんに出口である山の入り口に急いでもらう。
ダハスの兵隊さんに投げ込まれた時のままならば、入り口も塞がれたままであろう。長く複雑な坑道の中も、もともとの棲み処であるオロチちゃんには、造作もないことである。
程なくして、合体版のガンメタちゃんの姿が入り口に辿り着いた。藪の間から光が見える。塞がれては、いなかった。
ガンメタちゃんは、俺とオロチちゃんの二人に分離して、各々が地べたに腰を降ろした。
「塞がれてないね、これで、兵隊さんに捕まることは、ないかもね」
「ここは、私たちがモルシンに旅立ったときのダハスだと思うわ」
「右でも、左でもなくて、ツンツンだったからでしょ」
「うん、そうよ、エッチなんだから」
「それに、言葉もね」
「うん、右、左、真ん中、それに、言葉、これが秘密だったなんて、呼び鈴方式、鍵開け方式、鍵閉め方式、エッチなマークにピッタリね」
「よく、読み解いてくれました、ありがとう、オロチちゃん。チュッ」
「わーい、ご褒美のチュー、もう一回」
このあと、何回もせがまれて、チューしたおかげで、唇が腫れちゃいそうだ。
持ち物もちゃんと忘れずに持ってこられたことも確認できた。
新しいものとしては、アロンから奪ったダハス村のアンクレット、拾ってきた鍬、それと何ができるのか分からない小さな笛、この三つである。
鍬の柄は、山頂でドロドロを被ったのであろうか半分焼け焦げて炭のようになっている。しかし、その刃は、ルルに鍛えた貰ったおれの果物ナイフのように、幻惑されそうなほどに美しい波紋を輝かせている。俺は、果物ナイフと比べるように波紋と波紋を並べて見比べる。その色と形、ともに見紛うほどである。
俺の果物ナイフで鍬の波紋をそっとなぞると、硬いはずの鍬の刃が溶け落ちるように俺の果物ナイフと同化していく。たちまち鍬は柄だけを残して、一回り大きくなった果物ナイフだけが手に残った。
「オロチちゃん、見たかい?果物ナイフが鍬の刃を飲み込んじゃった」
「ええっ、見ていたわ、飲み込まれるっていうより、流れこんだって感じだったわね」
「峰の部分の溝がまた、増えたぞ」
「本当ね、真ん中が深くなっているわ」
「三本になったよ」
「やっぱり、目盛りなのよ」
「きっと、呼び鈴でイカされると、真ん中。右でイカされると、根元方向。左でイカされると切っ先方向って、具合なんだわ」
「流石、オロチちゃん、そうだね。そうすると、今は、真ん中が一番深い溝だから・・・」
真剣に聞いているオロチちゃんのさきっちょをオロチちゃんの今言ったことを確認するように、呼び鈴で弾いて、摘まんで、右にネジネジ、左にネジネジ、最後は、引っ張り出しちゃえ。
「いやぁ~ん、マーク、触りたいなら言ってからにしてちょうだいよ」
「だって、真剣な顔しているんだもん」
「みんなの所に戻れても、私のさきっちょ、ちゃんと可愛がってよ、誰かの代用品じゃイヤよ」
「もちろん、可愛がるに決まっているじゃないか。コレ、これ」
「んんっ、エッチな触り方ね、うれしいっ~っ」
俺の果物ナイフ自体も、狂気的で、天才的な錬金術師のあのアロンが作り出した代物であることが想像できた。
オロチちゃんの言う通りこの溝は、時間の目盛りなのだろう。俺達が体験した時間の目安を示すもので、過去、現在、未来という感じなのであることを予想させる。
そうすると、今いる世界は、現在進行形なのだろうか?本当にこの前、島の反対側の岬を目指して出航したダハスということなのだろうか。下手をしたら、兵隊さんに、今度こそ命を奪われかねないが、村長の館を訪れることしか、確認する術は、無いだろう。
「オロチちゃん、村長の所へ行ってみよう」
「はい、プラムのお家へ行くのね。刺青に戻りましょうか?」
「その必要はないよ、二人のままでいこう」
「はい、腕組んでね」
オロチちゃんは、俺の左手に抱き着くようにしがみ付いた。鍬は、柄だけになってしまったが、一応持っていこう。
俺達は、立ち上がり、山の入り口を出ていく。俺が人の目につかないように施した藪が生い茂っている。ここからは、半日山を下ることになる。
今頃になって、オロチちゃんに刺青になってもらって、スーパーアシスト歩行をしてもらえば良かったと思っても、今更、遅いようである。
オロチちゃんは、腕を組んでデート気分満載で上機嫌なのだから。
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