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冷たい風


 マークとオロチちゃんは、目の前の男が、アロン・スカイと名乗ったのを聞いて、言葉を失った。


 ビックリ仰天して、目ん玉が飛び出ちゃいそうだ。眼の前にいる、穴を掘っている男が、自分の父親と聞かされているアロンなのかもしれない。


 そして、その男は、これまた、恐らく自分の母親マナニーニと思われる者、ひいては、ゲリアの村を抹殺すると言っている。ここまで聞いてくると、ゲリアの魔女は、あの美しくカワイイ三人娘なのだろうと思われてならない。


 この目の前の男は、スカイといった、俺が血を引き継いだと言われている勇者は、アロン・ブルースカイだったはずだ。

 別人なのだろうか、いや、マナという名前を口にしたことと、ゲリアの村、羽の生えた蛇の竜玉、間違いなくこの男が、勇者アロンに相違ない。


 驚きついでに、この男は、勇者でもなんでもない。


 話からも、考え方、立ち居振る舞いからも、我利我利亡者のペテン師そのものだ。


 そして、父親でありながら、仇、そのものなのだ。


 女神から聞かされてきた勇者の何かを探るようなこの冒険の旅は、こんなものを探してきたのか、無理矢理にこの生活へ引きずり込まれたのは、こんなものを探すことだったのか。


 頭の中が、混乱していく。ほんのこの刹那に、様々なことが頭の中を駆け巡る。


「そなたは、アロン・スカイというのか、覚えておこう」

「よく覚えておいてくれ、もう二度と会うことなど、ないだろうが」


「スカイか、我は、ブルースカイという言葉をきいたことがある」

「何?どこでだ?」


「思い出せぬが、スカイと聞いて、ふと」

「どこでだ!思い出せ!」


「無理を言うでない、我とて長い時間を旅しているのだから」

「普通なら、スカイブルーだが、反対にした言葉は、魔女の言葉なのだ、だから・・・」


「なるほど、反対なのだな」

「オロマークといったな、思い出せたら教えてくれ、このドラゴンナイトを見たら何か思い出せるか?」


「そなた、掘り起こしたのか?」

「これは、スーパーではない、これは、麓の村から盗んだ宝だ」


 アロンは、物入から輪っか状の物を取り出して、見せつけた。


 何かの金属の輪っかに、丸い石が嵌めこまれている。見覚えのある物が目の前にある。それは、紛れもなくプラムのアンクレットそのものだ。

 そのアンクレットを見たガンメタちゃんは、本能的なものであろう、いままで、地べたに降ろしていた尻尾を立ててガラガラをカシャカシャと振り出した。その先が、オレンジ色に点滅している。


 その点滅に呼応するように、アンクレットの石も点滅しだした。


「おおっ、お前さんの中にドラゴンナイトが、あるではないか?」

「その輪っかが、そのドラゴンナイトなのか?」


「そうだ、この埋まっている石っころだよ、お前さんの尻尾にも」

「こっこれは、そのような物ではない」


 その時、もう一箇所、ガンメタちゃんの胸の辺りも点滅しだした。こちらは、見慣れた黄緑色の蛍光である。


 その光を見た目の前の男、アロンの目の色が変わっていくのが、とても怖い。


「なんと、お前さん、持っているんだな、スーパー」

「スーパー?何のことだ?そんなもの持っていない」


「そうか、お前さんが、この後、羽が生えた竜とやらになる大蛇なのだな」

「バカを言うでない」


 アロンは、もはや聞く耳を持っていない。山頂の擂鉢の底を掘り返すよりも、俺達の胸の光を奪い取ることを決断したことを理解できた。


 アロン、その男は、鍬を大きく振りかぶって、その鋭い刃を振り下ろしてくる。


 この男は、本気の様だ。


 俺達を倒して、身体の中からスーパードラゴンナイトとドラゴンナイトを取り出したいのだ。山の山頂、擂鉢の底を掘り返すよりも、目の前のオタカラを奪う事の方が、手っ取り早いのだろう。


 しかし、このガンメタちゃんに、たかだか一人の男が叶うわけないだろう。


 男の振り下ろした鍬の刃が、黒光りするガンメタちゃんの身体に突き刺さる。特殊な金属の刃物なのであろうか、いとも容易く鱗を貫通した。


「うわっ、」


(「マーク、大丈夫?かなりの痛みを感じるわ」)

(「うん、信じられないが、危ない刃物らしい」)

(「気を付けて、この男を取り押さえよう」)

 

 ガンメタちゃんは、痛みに耐えながら、素早い動きで、尻尾でアロンを払いのけて、転がったその男の足に巻きついて動きを止めた。


「しぶといヤツだな、可愛そうだが、身体から石を取り出してやる」

「この状況で、それをさせるわけにはいかん」


 大蛇の身体を貫ける鍬は、ガンメタちゃんの腰の辺りに突き刺さったまま、アロンの手を離れている。ガンメタちゃんが、きつくきつく、アロンの身体を締め付けて観念させようとしていると、アロンは、先ほど見せつけたアンクレットの石を摘まんで右に捻る。


 かなり、大きく右に捻る捩じりながら、怒鳴りつけた。


「こうなったら、仕方がない、このまま時間を戻して、お前の中から取り出してやる」

「我に、キズを負わせたお前を、見逃すことはできない」


「もう、ここでお別れだ、お前は、石だけ残して、消えて無くなる、お前の生まれる前に、この場所を戻してやる、そこで、この場所で、お前の中の石を拾ってやる」


「狂ったペテン師め」

「神様と呼べ、もう、会う事もない」


 アロンは、さらに、アンクレットの石を右に捻り、聞き覚えのある言葉を叫んだ。


「カ・シ・ム・カ・シ・ム・シ・マ・ウ・ラ」


 アロンと大蛇のガンメタちゃんを白い光が取り囲み包んでいく、そして、隠れ教会で石に飲み込まれた時のように、轟音と共に大きな渦巻に巻き込まれて、足元に吸い込まれていく。


 そして、火の噴いていないダハスの火の山の山頂には、何もなくなり、只々、冷たく寒い風だけが、吹きすさんでいるだけとなった。



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