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真実

いつも読んでいただいている方、ありがとうございます。がんばります。


 本当は、仲良しのはずだった二人の女神は、現在、仲違いすることもなく、協力的にマークの探索に努めている。

 

 ネズミの偵察した穴に入ろうにも、人の頭くらいの大きさで、ぽっかりと口をあいている状態なので、潜り込むには、難しいと判断したアルカティーナは、いつものように、指をクルクルっと回した後、全員の頭をクルクルパーっと撫でまわした。


 みんなの視界が地面に近づいていく、手も地面についてしまっている。穴の前には、六匹の猫が現れた。これは、かわいいセクシーキャットちゃん達だ。この姿で、六匹の猫は、次々と穴に飛び込んでいく。


 狭い穴を潜り抜けると、広い坑道に入ることができた、大きな広間までは、まだまだ、奥へと進んでいくのであろう。六匹の猫が坑道内を素早い動きで走り抜ける。

 偵察が見つけたであろう空間に辿り着いた。猫の目なので、暗闇でも空間を把握できるが、その詳細を確認はできない。

 パチンとアルカティーナが指を鳴らすと、それぞれが元の姿に戻り、そして、それぞれの人差し指が松明のように光を灯していた。


「この灯りで、この空間を探索よ」

「はい」


「わっ、床に、グルグル模様が、まるでヘビみたいに描かれている」

「これが、いっぱいのヘビってことかしら」


「ちょっと、ティーナ」

「なによ」


「この模様、なんだったっけ?思い出せる?」

「羽生えたグルグル、なんだっけなぁ、この・・・」


 アルカティーナとクリスティーが思い出すように、壁に刻まれている焼け焦げた羽の生えた印に手を触れさせると二人の耳飾りが、黄緑色に輝きだす。それに合わせるように、マリーの巾着も同様に黄緑の蛍光を発してきた。壁に埋め込まれている尖った石の先からも、同じと思われる光が二人の耳飾りに注がれて、光の線がアルカティーナ、クリスティー、尖った石の三角形を作り出した。その三角形の中心をマリーの巾着の光が貫いた。


「あっ、これは、竜の玉、魔法研究所だわ」

「そうだわね、思い出した、ペテン師アロンから、村の宝を取り返したところよ」


「そうよ、アロンは、勇者じゃないわ、どうして、勇者ブルースカイって思いこまされたのかしら?」

「アロンの魔法、アロンの発明の技だろう、私たちを混乱させて、仲違いさせるように」


「だんだん思い出して来たわ、私が、マナと相談して、数々の宝を奪い返したのよ」

「ただひとつ、持ち出されたままだわ」


「全て、アロンが仕組んだことか、奴は、私たちと村を騙して、竜の玉の秘密を利用して、いろいろ作り出した、私たちと、村自体を破滅させた」


 二人の記憶の扉が、なかなか開かったさっきまでとは、異なり、祠の自動扉みたいに完全に開かれたらしい。


 思い出を辿ると、ここは、村の魔法研究所、村の中でも、古より、不可思議な力を扱える者が、その技量を修練して、学ぶところだった。


 当時のその技を学んでいたのは、アルカティーナ、クリスティー、マナニーニの三人だった。そして、村の技、村の宝である竜の玉、その力と教え継承し、伝えていたのが、クリスティーの母ティアラだったのだ。


 アルカティーナとクリスティーは、この継承から、魔法使いから女神へと変貌していったということだろう。魔女も女神も、そうそう変わりない者で見る側の呼び名に過ぎない。その不思議な力をどのように使うかで、女神を称されるものとなり得たのであろう。


「クリス様、ティーナ様、何がどうなっているのですか?」

「マリー、ここは、私たちの魔法を学ぶところだった、お前も、ここで学ぶはずだった」


「この、焼け焦げた穴から、マークは、どこに飛ばされたのかしら?」

「時が、わからない」


「ここから、マークは、どこかにいったのですか?」

「恐らく、そういうことになるだろう」


「これは?」


 マリーが、尖った石のそばに、丁度コイン位の大きさの物を見つけてみんなに見せる。煤塗れのその薄べったい物は、かなりの年代物の何某かの鱗のように見えた。思い当たるは、幻影で見た黒光りの大蛇だ。


「この鱗は、あの幻影、やっぱり、マークとオロチちゃんなのでは?」

「恐らくそうだろう、しかし、かなり、古いものね」


「昔の世界に飛び込んでしまったのかも、しれないな、昨日いた村自体も、昔の村だったわけだし」

「追いかけましょう」


「追いかけるにも、間違えたら、また、行き違いだ、それに、アロンの罠ということも有り得る」

「呪文ひとつで、変わってしまうからな」


 六人は、かつての特殊な寺子屋で頭を突き合わせながら、結論の出せない問題の答えを模索している。


 ルルが何を思ったのか、尖った石の周りの模様に、自らの巾着より取り出した金属を金槌を使って、押し込んでいく、羽の生えた渦巻模様と、取り囲むような細かい模様が、型を取るように浮かび上がり、壁から分離して出て来た。


 見ようによっては、オブジェのようにも見える。


 このオブジェを器用に金槌を使って、掌サイズに縮小させると、掲げるようにみんなにみせた。


「この紋章を写したわよ、これで、魔法研究所を再興できますわよ」

「ルル、ありがとう、ここは、使えないからな」

「それなら、このドラゴンナイトも」


 クリスティーは、壁の尖った石のさきっちょを粉砕させると、その欠片をルルの作り出したメダルの様な物の中心に嵌めこんであげた。粉砕された石は、さきっちょを失って、そこいらの只の石と同じになってしまった。


「その紋章にした、羽の生えた渦巻と模様には、意味があるのですか?」

「ああっ、羽の生えた蛇で竜というもの、現実にはいないが、それと、呪文だ」


「呪文?」

「それは、文字なのだ、ドラゴンナイトと、竜の石、つまり、ドラゴンの牙、その言葉で発動する魔法陣なのよ」


「魔法陣?ドラゴンナイト、ドラゴンの牙」


「ドラゴンの牙って、この賽子ですか?」

「そうよ、それと、私たちの耳飾り、だけよ」


「だけ?」

「世界に五つだけなのよ、マークは二つ、男の子だもん」

「エアルは、マナの分と併せて、二つか、正に、男の子だな」


 男の子は、やっぱり、二つなのです。納得できますね。


「それじゃ、外にでましょうか」

「えっ、出ちゃうんですか?」


「出ちゃいますわよ、ここに、これ以上いても、仕方ない」

「そうね、では、ここを完全に、破壊しましょう、アロンにも使わせないためにも」


 アルカティーナとクリスティーは、計ったように、合図すると、アルカティーナは、指を鳴らし、クリスティーは、指を天に掲げる。


 そして、二人して、お決まりの言葉を唱えた。


「ブルスカ・ショックっ~」


 瞬く間に、六人は、里山の森、穴の前に出て来た。


 間髪を入れずに地面の中が、爆発してあの空間が完全に破壊されるのが、確信できる。少し、地面も下がった感じがして、山の傾斜に変化が生じている。


 記憶が戻った二人の女神は、仲違いしている理由がなくなった。


 アロンによって、記憶を操作されて、互いを恋敵、妹の恋敵などと思い込まされ、また、アロンを勇者ブルースカイと信じさせられて、これまで、広めてきたことを後悔してならない気持ちを共有していた。


 二人は、まだいいだろう、アロンから村の宝であるドラゴンの牙、つまりは、竜の玉を取り戻し、隠す為に、子供まで授かり、犠牲となったマナニーニが、本当の功労者であろう。


 マナニーニは、クリスティーの色仕掛け作戦の失敗に続き、アロンを騙し、懐柔する為に、二人を欺きながらも、二人と誰にも望まれない我が子を救ったのだ。


 自らを犠牲にすることが、我が子に対するせめてもの罪滅ぼしと考えたことだろう。魔法陣を使い、我が子エアルを時空の先に送り、自らは、その痕跡を消すために、時の渦の泡となったのだった。

そして、村自体も、吹き飛ばしてしまったらしい。


 感傷にひたる二人に、思いつめたように、マリーが懇願する。


「私を、マークの元に飛ばしてください」

「マリー、私がいくわ」

「いえ、今度は、私」

「私が」


 ルルの写した紋章とドラゴンの牙を相関させると時間操作ができるらしいことが、四人には、想像できた。しかし、二人の女神は、よくよく考えたい面持ちで、答えた。


「みんな、だから、今、すぐは、無理なのよ。時間と場所の特定が必要なのよ」

「とりあえず、本拠地に戻りましょう」


 時間と場所これが、大事である。


 二人の魔法使いは、今や、女神様である。


 魔法、言い換えれば強大な神業を操り、この世の中の拠り所となる二人の存在であるが、時代によっては、その効力を使えないらしい。

 自らが存在していない昔に辿り着いた場合は、魔力のない普通の女性という事だ。


 そりゃ、当たり前かもしれないが。





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