ペテン師
人の姿よりも、今の大蛇姿、そうガンメタちゃんの身体で穴を登ることの方が、とてもスムーズに進んでいけることが実感できている。この前は、赤い光を目印に登っていったが、今日は、明るい日の光と空の青を目掛けて、穴を登る。
そして、穴を抜け出すと、前回よりの各段爽やかな涼しい風を身体に感じられる擂鉢状形のてっぺんに到達した。
この前、来たときは、とても長くは居られないくらいに熱かった山頂は、とても静かで、とても寒い場所になっていた。今回は、大地がドロドロに溶けて煮えたぎるものがないので、深い擂鉢の全貌、底まで見渡すことができる。
擂鉢状の火の噴きあげていない中心部分をよくよくと、見下ろすと、遠くて確信は持てないものの、人影のような、何かの生き物のような黒い影が小刻みに揺れているように見える。
「なんだろう?ヒトかな?」
「なんでしょうか?私たち以外のヒト?カラスかも?」
俺達二人は、ガンメタちゃんの姿のまま身体を球体の毬のように丸めて、擂鉢の淵から底を目掛けて転がり落ちるように降りていく。静かに、降りていきたかったのだが、細かい石や岩の落石を伴って、下へ下へと落ちていく。
「んんっ、デカイ落石だ」
擂鉢の底で、穴を掘っていた男が上から落ちてくる俺達を見上げて叫んでいる。こんな山のてっぺんに、俺達以外のもの、ましてや人に遭遇するなんてことを想像していなかった。
俺達は、毬のようになっている大蛇のガンメタちゃんの姿のまま、男の横まで転がり降りて来た。そして、丸めた身体を解くように戻しながら、男に声を掛けてみる。
「ここで、何をしている」
「おおおおっ、デカイ大蛇、オロチだ、口をきけるのか」
「ここで、何をしている?お前は何者だ」
「見れば、わかるだろ、掘っているんだよ」
「何を掘っているんだ」
「空から降ってきた、流れ星を掘っているんだよ」
男は、普通なら腰を抜かしてもおかしくないガンメタちゃんの姿の大蛇に相対しても、動じることもなく、作業の手を止めることもなく、答えた。
何を掘り出しているって?流れ星?
それにしても、よくここまで登って来られたものである。見たところ、大した装備もない。殆ど身一つの状態だ。一見したところ、若い男で、身体も屈強ということもなく、小ぎれいな優男が、鍬一本を手に擂鉢の底を掘り返している。
「流れ星?それがここにあるのか?」
「お前さん、この山の守り神かなんかか?知らないのか?この擂鉢の穴は、天から星が落ちてきて、できた穴なんだよ」
「その、流れ星を見つけてどうするのだ」
「騙されて、奪われた俺の道具を取り返すんだよ」
「どうやら、お主、頭の病気なのだな」
「バカにするな、俺は、この世の中で神様にもなれる才能をもっている」
「いよいよ、病気だな」
「お前のような、ヘビにわかるはずもない、流れ星の力を、ドラゴンナイトの力を」
「なんと、流れ星は、ドラゴンナイトというのか?」
「そうだ、俺の探しているのは、その中のスーパードラゴンナイトだけどな」
「・・・・スーパー?・・・・」
「そうよ、特別なナイトさ」
(「ねぇ、マーク、スーパーなドラゴンナイトだって」)
(「このまま、ガンメタちゃんで通そう、何か聞き出せるかも」)
俺とオロチちゃんは、心の声で相談して、山の守り神の大蛇という、この男の勝手な思い込みを利用させて頂いて、その設定を演じ切ることを決めた。
この男は、ガンメタちゃんには、何を話しても利害関係にないと思っているのか、それとも、独りきりで誰かと話がしたかっただけなのか、警戒することなく、意味不明にみえる行動の本質について、語り出した。
男によると、男は、錬金術を生業とする、自称、神と同等の創造者とのことだった。
元々は、生活必需品の鍬などを作っていた鍛冶職人のようなことをしていたらしいが、このダハスの隣の島でドラゴンナイトを発見し、それを用いていろいろな物を発明したしてからは、狂気じみた変人として、各地を追われたらしい。
また、土地によっては、英雄視されることもあったが、この身の上になる直前は、盗人ペテン師の烙印を押されたらしい。
男は、ある時、ある村で特別なドラゴンナイトを見つけ、その摩訶不思議な力を利用する実験を繰り返したらしい。そして、ついに、その力を不安定ながら制御することに成功したというのだ。
しかし、その地で、美貌を武器にした、色仕掛けの魔女たちに騙されて、今までの発明品も、新たな発見も全てを奪われてしまったらしい。しかし、最後の悪足掻きで、その魔女たちの記憶を操作して、自身の身体一つを逃がすことに成功したらしい。
辿り着けたのが、かつてドラゴンナイトを発掘したダハスの隣の島で、書物で読み知っていたダハスの山の山頂に、最後の流れ星の欠片があるであろうことを思い出して、ここまで来たらしい。
よく無傷でここまで、来られたものである。俺は、全身傷だらけであるが、ここまでの男の道のりには、俺達の道のりと共通点がいくつか思い当たる節があった。
ここまで、男の話を聞いてくると、意外なほどに口が軽い感じがする。どこまでが、本当で、どこからが作り話なのかが、よく分からない。
手八丁口八丁の男の言葉を聞いているだけで、男の間合いに引き込まれ、何事にも説得されながら、納得してしまっている自分に気が付かされる。
これが、ペテン師の技なのかもしれない。スーパーなのは、この男がスーパーペテン師なのかもしれないと冷静になれる俺は、やはり、独りきりではなく、オロチちゃんとの合体姿のおかげらしい。
「それで、その特別なナイトは、見付けたのか?」
「いいや、まだだ、となりの島は、普通のナイトの発掘場だったが、今は、もうない」
「そうなのか?」
「ああっ、俺の発明があれば、昔に戻って掘り返すこともできるが、そもそも、スーパーはあそこにはない」
「スーパーは特別なのだな、ここには、あるのか?」
「当り前だ、特別なのは、直に流れ星が落ちたところにある、弾け飛んだものではない」
「弾けたのは、普通で、直接のが、特別か」
「そう単純じゃないが、まぁ、そんなところだ」
この男は、どこから来たのだろう。言い草から道具があれば、昔に戻れるらしい。時間を遡るように、時の流れを歪められるとしたら、俺達も元の村に戻れるかもしれない。
何か手掛かりを聞き出す方法はないだろうか?先ほどから、男は、本当に俺達を山の守り神と信じて疑ってはいないらしい。
「そなたは、どこから来て、どこへいこうとしているのか?」
「俺か、俺は、時を旅する者、自分が思うように暮らせる所を求めているだけだ」
「それは、どこなのだ、特別が見つかれば、いけるところなのか?」
「そうだな、まずは、後にも先にも、俺に盾突いた魔女どもを抹殺しにいくかな」
「執念深いのだな」
「ああっ、俺のウソを見抜いた奴らだからな」
「では、其処に、これからいくのか?」
「そうだな、ゲリアにまず、一回戻るか、奴らが生まれる前のゲリアにいって、村ごと焼き払ってしまおう、そうだ、決めた。早くでてこい、ナイトちゃん」
「なんと、ゲリア?ゲリアというところに魔女がいるのか?」
「ああっ、ゲリアってのはな、海のずっと向こうの果ての果ての大地にある、小さな村だ」
「その村はな、大昔に、お前さんの様なヘビを祭っていた、なんでも、羽の生えた蛇で竜とかいうものが、玉を握っていたとのことで」
「羽が、はえているのか?タマ?」
「ああ、本当かどうかは、わからんが、玉ってのが、スーパーちゃんだった、恐らくゲリアにも、流れ星が落ちたことがあったのかもしれないな」
羽の生えている蛇、ゲリア、いままで、共通点として、点と点でしかなかった話が、かなりの角度で、一本の線に繋がっていく。
「ほほっ~、ベビにしても、魔女にしても、恐ろしいことだな」
「何をいってる。お前さんだって、十分怖い」
「怖くないだろう、我を初めから怖がっておらぬようだが」
「今更、怖がっても仕方ない、ナイトを探さないと、何も俺には、ないのだ」
「錬金術師なのだろ、ナイトなしでも」
「一度知ってしまうと、元には戻れない、これが、真理ってヤツだ」
「そういうものなのか」
「お前さんは、ヘビだから、わからんかもな、蛇なのだから、ナイトを掴みだしてほしいくらいだよ、いかん、お前さんは、羽も生えてなければ、掴む手足もなかったわな」
「魔女は、今も居るのか?そのゲリアってところには?」
「今、居るかは、わからんな、時間を調整しないと」
「難しいことをいうのだな」
「思い出させるから、だんだん、腹が立ってきた、感情を抑える訓練をしているのに、抑えられなくなってきたぞ」
男は、誰もいない高い山の山頂であることから、逆鱗に触れられた感情を鎮める為なのか、叫ぶように言葉を発した。
「覚えていろー、マナ!許さんからな!」
「・・・・」
「そなたの名前を教えてくれんか?」
「お前さんも教えてくれるのかい?」
「我は、山の守り神、オロマークと言っておこう」
「いいか、この名前を忘れるなよ、俺は、創造者アロン・スカイだ」
「・・・・」
なんだと。
ぜひブックマークと評価をよろしくお願いいたします。
ご感想もお聞かせください。
執筆と更新の励みになりますので、作品と併せてよろしくお願いいたします。




