二人の女神
彫刻の施された大きな扉が、ギュ~っと軋む音と共に、静かに開く。
鍵が掛かっていないのであろうか、ノックに応えるように自動扉が稼働したかのように、四人を招き入れる。四人の身体が、完全に建物に入り切ると、この前訪れた時と同じように、ガチンっと扉は締まり鍵が掛かった。
真っ暗だった建物に四人のいる場所から、奥へと奥へ次々に燭台に灯がともっていく。最も奥の祭壇まで、歩み進んでいくと、大きな美しい女神像がほんのりと光ながら、その光を強めていく。光の筋が女神像の目から四人の前に降りてくると、実体化したアルカティーナが姿を現した。
「夜中にどうしたのだ?」
「アルカティーナ様」
「おおっ、岬であった娘もいるのか、村の井戸で何かわかったのかな?」
「井戸よりも、村がおかしいです。もう、村に続く道もなくなりました」
「なんと?そういえば、エアル、いや、マークは?どこにいる?」
「それが、村と一緒に消えちゃいました」
「魔法も、クリスティー様より頂いた品々の力も効かなくなりました」
「そうなの?変ね」
四人は、村での出来事を事細かく女神に説明する。アルカティーナ自身もマークにメダルによって呼び出されたティーナちゃんとして、村の入り口では同行していたので、にわかには、信じられない感じである。
しかし、マークがいないことが、心配であるのと、自らの少女姿、ましてや、マナ、クリスティーの少女姿、村長や、ティアラの事まで細かく説明されると、段々と真相を掴みかけているようであった。
ロコが、ネズミの頭蓋骨をアルカティーナに差し出して、この頭蓋骨が、時を超えたことを告げだことを切っ掛けとして村を後にしたことを話し出した。
アルカティーナは、白い小さな塊を受け取って、掌に載せるとフゥ~っと息を吹きかけた。掌の上で頭蓋骨のみであった白いものが、組み立て式の模型のように脊椎が生えて、足、腰、尻尾と骨格を再現していく、そして、再度フゥ~っと息を吹きかけると、真っ白い毛に覆われた赤い目を持つハツカネズミが生き生きと動いている。
「わっ、ネズミちゃん、頭だけだったのに、生き返っちゃった」
「これで、もっと詳しく、聞けるでしょ」
「ありがとうございます」
「チューちゃん、さっきの続きをおしえて」
ネズミは、ロコに話をしているが、シャレコウベの時に話してくれたこと以外は、新しいことは、知らないようであるが、時を超える際、仲間が、骸骨になる寸前に、村の外れ、山の方に光が放ったことを思い出してくれた。このことを、ロコは、みんなに説明すると、アルカティーナが記憶を確認しながら、村はずれにあった実験場のことに気が付いた。ただ、自身が少女時代にそれが存在していたかは、なかなか思い出せない様子である。
「マークは、どこにいったの?村の外れにいったのか?」
「わかりません、井戸のところには、いませんでした」
「私が渡した、メダルは?」
「使ったかは、わかりません。井戸に行く前しか・・・」
マリーが、右手の拳を握りしめるように力をこめて、五人の髪の毛の念力をここで、試そうとしている。魔法そのものと、アンクレットが効かなかったが、五人の髪の毛のパワーは、どうであろうかと。五本の髪の念力通信を送り続けていると、かすかに何かが見えてきた。
黒光りする光沢のある濃いグレーの大きな大蛇が、森の中を歩いている?くねっている?その大蛇は、オロチちゃんの姿ではなかった。
「見えたわ」
「えっ、こちらに来てごらん」
アルカティーナが、マリーを抱き寄せると、マリーの頭の上に念力の幻影が、其処に居るみんなにも見えるようになった。黒光りする大蛇は、大きくて特徴的な形の山を仰ぎながら、森を進んでいた。
「ダハスの火の山」
「似ているわね、でも、火を噴いていないわ」
「・・・・」
「見覚えのある所なの?この大蛇は?」
「女神様、ここは、私の故郷のダハスに似ていますが、山が火を噴いていないのは、はるか昔のことです」
「ヘビは?岬で助けた、緑の女の子は、確か、蛇だったのでは?」
「女神様、その通りですが、オロチちゃんは、こんなに黒光っていません」
「どうにも、こまったわね。でも、この光景とヘビちゃんは、マークに関係があるのでしょうね」
「ここへ、いくことは、できませんか?」
「ここが、どこなのか?わからないと。それに、あなたの言うように、今のあなたの故郷でないとしたら?」
蛇、蛇、アルカティーナには、蛇に心当たりが無いでもなかった。羽の生えたヘビ、渦巻に羽の模様、記憶を辿り、マナ、クリスティー、そして、アロン、ネズミのいう村はずれの光、実験場、考えながら、そして、ため息をつきながら、ある結論を出した様だ。
「マリーといったな、クリスティーによく似たお嬢ちゃん」
「はい、マリーです」
「そなたは、クリスティーを呼び出せるのか?」
「いいえ、呼び出せないです、時々、来てくれるだけです」
「どうすると、来てくれるのかしら?」
「マークだけが、呼び出せる、呼び鈴があるんです」
「呼び鈴?その呼び鈴を出しなさい」
「でも、マークが鈴をならさないと・・・」
「いいから、出しなさい」
四人は、女神アルカティーナに大きく迫り出した自慢の胸を突き出した。
「どういうこと?私と比べたいの?まだまだ、勝てないでしょ~」
「そうじゃありません、私たち四人の胸を触ると、お出ましになるので、呼び鈴なのです」
「なんと、はしたない呼び方なの?」
「でも、これしか・・・でも、マークがさわらないと・・・」
アルカティーナは、指先にフゥ~っと息を吹きかけた後、デコピンでもする要領で、四人のさきっちょを順番に弾いていく。
「あんっ」
「あっ、ちょっと、きつめっ」
「いつもより、効くかも」
「あっは~ん」
間を置くことなく、アルカティーナの指先に光が灯り、小さな祠が光の中から出現してくる。その祠と光を導くように床に降ろすと、中から、いつものクリスティーの少女バージョン、村であった背格好のクリスちゃんが、姿を現した。
「新月の逢引も忘れて、どうしちゃったの?ちびっこちゃんの呼び出しも久々じゃないよぉ~」
「・・・・・」
「あらっ?げっ、ティーナじゃないの?」
「クリス。お久しぶりね」
アルカティーナは、人差し指をクリスちゃんに向けて、クリクリ、クルクルっと、回す。みるみるとクリスちゃんは、本来のクリスティーナの姿となって、大人バージョンの女神クリスティーがここに現れた。
「クリス、これは、どういうことだ、エアル、今は、マークか、おまえが、ここまでよこしたのか?」
「あれから、やっとのことで、探し当てたのよ、マリーの祠を仕掛けてね」
「クリスティー様、私は、仕掛けなんですか?」
「まぁ、それは、あとで詳しく聞くとして、今は、マークも消えた。ゲリアの村も消えた」
「ゲリア村は、消えているでしょ。とっくに」
「そうではない、昨日は、あった」
「村は、マナが消えた時の吹き飛ばしで、村跡しかないでしょ、あの家は、カケラはあるかもで」
「井戸は?」
「井戸も跡だけなのでは?ティーナも知っているでしょ」
「その吹き飛ばしされた家をマークに見せるために向かわせたのだが」
「それで、また、あの子が消えちゃったの?難儀なことねぇ、あたしがどれだけの時間を費やして探したのか分かっているの?」
大人のティーナもクリスも一歩も引かない激論を交わしている。二人の記憶の共通点から、村はずれの実験場が浮かび上がった。
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