下り坂
白い小さな物体を覗き込む四人は、はたと我に返った。
「マークは?どこ?なの」
「マークは、この村からでたのかしら?」
「そういうこともあるわね、テレポもできないし」
「えっ、私たちは、今、マークと違う世界にいるの?かしら?」
「そこまでは、わからないわ、だって、マークが出掛けてからも、三人娘に変化ないもの」
「モルシンに戻ってみない」
「そうね、港町の方向へ、村を出てみましょう」
「道のりは、分かるのよね?私とプラムは、港から直接テレポしてきたから、わからないわよ」
「そうよね、ロコ」
「待って、ロコとプラムは、テレポでここに来られたのに、どうして、今日は、テレポできないの」
「・・・・・」
「やっぱり、違う世界、違う時代?なの」
「とにかく、一回、今から村を出て、港町にむかいましょうよ」
四人の結論は、一致したらしい。確認をする前に、四人の足は、村はずれを目指して歩き出した。
皮肉なことに、マークとオロチちゃんの向かった隠れ教会とは正反対の方向では、あるのだが。
四人は、村はずれ、反対から考えれば、村の入り口にやってきた。
ここから村に入ってきたはずなのに、マリーとルルは、首を傾げている。来たときは、マークと三人だったこともあるが、なんとなく、雰囲気が違う気がしてしまうのだ。夜中なので、明るい時とは、異なった感じに見えることもあるのだろうが、二人して、感じるこの違和感は何なのであろうか。
「ここから、この村に、はいったのよね」
「多分・・・」
「多分って?この道って、いったじゃないよ」
「だって、夜中だし分かりにくいのよ」
「そんなに、ここまで、道のりは、迷うような道ではなかったわ」
「わかってるわ、でも、なんか、雰囲気が違うような・・・、ねぇ、マリー」
「ルルの言う通りなのよね、ほぼ一本道で、迷子になっちゃったのかしら?」
「バカ言わないで、マリー、一本道で迷うわけが、ないでしょ」
「でもさぁ、この傾斜をずーっと降りていくと港のはずだけど、港にいけるのかしら?」
「かしら、って、どういうことよ」
「まぁ、いくしかないでしょ、ロコも落ち着いて」
「プラムは、冷静ね」
四人は、村を出る為に、道を更に下り、傾斜を降りていく。
暫く歩いていると、道端から、虫の声や、鳥のさえずりが耳に届くようになってきた。いままで、無音で、地面を蹴る足音しか聞こえていなかったはずだった。
先頭でシャカリキになって先を急ぐロコ、不安定な道案内しかできないで、いささか、しょ気気味のマリーとルルが、後に続いていく。しんがりの冷静なプラムだけが、このことに、いち早く気が付いた。
「ちょっと、虫が鳴いているわ」
「えっ」
「本当だ。虫もだけど、物音もするわね」
「わぁ~イヤ、月が半分だわ」
「えっ、満月が半分になったわ」
その通りだった。
納屋、井戸で見上げた月は、確かに、満月だった。月齢については、ロコと納屋で確認した時、異常なことには、気が付いていたことであるが、昨日見た月に戻ってしまった。
急ぎ、今降りて来た道を振り向いて確認する、少し、戻ってもみる。しかしながら、無音状態になることはない。どうにも、こうにも、おかしい。たった今、歩いてきた道のはずなのに、どことなく風景が異なって見える。
この先に、村があったのであろうかとさえ、感じられる。ロコが、今来た道を全速力で走りながら、戻っていく。かなりの傾斜を走り登っていくと、道が背丈ほどにもなる草の生い茂る藪に包まれて、先に進めなくなった。
「村につながる道が、なくなっちゃったわ」
「エエッ~、どういう事?」
「今来た、村から出て来た道が、もうないのよ?藪になっちゃった」
プラムも、ロコのそばにやってきて、獣道もないような藪を確認している。やっとのことで、マリーとルルも傾斜を登ってきて、二人して唖然とした顔をしたまま、空いた口が塞がらない様子である。
「どういうことなの?」
「わからないわ」
「もう、干し草の納屋には、戻れないの?」
「マークとオロチちゃんは、どこにいっちゃったの?」
どうにもならない事が、今夜は多すぎる、四人は、夢の中にいるのだと、思いたかった。
しかし、不可思議極まりないことではあるが、夢では無さそうだ。
狐につままれたように硬直しきっているマリーとルルを促すように、プラムは、ロコに声をかける。
「港に行きましょう」
「うん、いこう」
ロコとプラムは、マリーとルルを促しながら、傾斜を下って、港に向かって道を降りていく。真っ暗な道を半月の夜空の明るさを頼りに歩いていく。しばらく、結構しばらく歩き続けると、遠くには、港らしき灯りと、海であるだろうキラキラ光る輝きも感じられるようになってきた。
しょんぼりと、とぼとぼと歩いているマリーとルル、下り坂をロコとプラムに引きずられるように、ここまで歩みを進めてきたが、暗闇の中の大きな建物の影を発見すると、我に返ったかのように、声をあげた。
「マリー、教会だわ」
「そうだ、マークの伯母様の教会ね」
「教会?マークのおばさん?」
「そうなのよ、確か、アルカ教?とかの」
「村のティーナちゃんの大人のとんでもなく美しい女神様がいるのよ、ねぇ~、マリー」
「あの建物なの?」
「うん、多分?」
「行ってみましょうよ、女神アルカティーナ様なら、私たちも会ってるから」
「村のティーナちゃんじゃないわよ」
「分かってるわよ、ルル、蒲の穂綿のどアップを見せてくれた女神よ」
「プラム、しっ~」
「蒲の~」
「穂綿は、いいのよ、早く教会に行ってみましょう」
マリーとルルは、またまた蒲の穂綿に気を取られ始めているが、今は、もっと大事なことが、一杯あるでしょうが。
ロコとプラムは、女神様には、甚だ失礼なことであるが、藁をもつかむ面持ちで、マリー達が教会という建物の威厳ある重厚な扉を叩いてみる。
ぜひ、ブックマークと評価をよろしくお願いいたします。
ご感想もお聞かせください。
執筆と更新の励みになりますので、なにとぞ、よろしくお願いいたします。




