焦げた穴
轟々と凄まじい轟音の中、俺達二人は、まるで、海の渦潮の中心に引き込まれていくようだ。
俺とオロチちゃんの身体は、体操選手が大技を繰り出しているように、グルグル回転しながら、グイグイ重力に似た力によって、どこかに引き寄せられていくみたいだ。
こんなに振り回されているのに、意識は、ハッキリしているし、真っ白の光に包まれて、何も存在していないのだか、渦の流れだけは、鮮明に見えている。耳も目も問題ないようだ。
「オロチちゃん」
「マーク、絶対に離さないでね」
「わかってる、離れたら、どこかに、吹っ飛ばされちゃうよ」
「マーク、大好き~」
程なくして、小さな穴から吐き出されるような感じで、ズバンっと、どこかに放り出される二つの物体。
一瞬にして、轟音も、激しい渦の流れも消え失せている。
真っ暗だ。どこにいるのかも分からないまま、俺は、ふっくらと柔らかい手の感触だけを頼りに、確認するように声を出してみる。
「オロチちゃん」
「マーク」
「よかった、俺の腕の中にいるのは、オロチちゃんだよね」
「うん、しっかり、抱かれているわ」
「ここは、どこだろう?何も見えないんだけど」
「穴ね」
「穴?」
オロチちゃんは、何も言わないまま俺の身体と合体し始めた。これは、イレズミじゃないガンメタちゃんになる熱い感覚だ。ググッとくる身体の刺激を耐えていると、だんだんと目が効くようになってきた。
俺も変身するごとに、だんだん違和感を覚えなくなってきた。癖になってきている感覚さえある。
ゾクゾクしてきたぞ。
「本当だ、穴、洞穴だね。さっきの渦巻部屋の隠れ教会ではないね」
「うん、洞穴の終点って感じ」
その終点部分と思われる壁には、焼け焦げたようなゲンコツくらいの穴が開いている。穴を取り巻くように左右に翼を携えた渦巻模様が刻まれている。穴だけだ。クリっと鍵開け方式を隠れ教会で施した石は、どこにもない。石が無いってことは、元の教会に戻れるのかしらと、急に不安感に苛まれてくる。ただ、渦巻模様があるということは、この洞穴が、まんざら関係のない場所ではないことは、予想できる。
「ここは、どこなのかしら?もとに、戻れるかしらね?マーク」
「俺も同じこと考えてる」
「もう一回、呪文の言葉をいってみる?」
「そうだなぁ、でも、スイッチの石がないんだよ。言葉だけで行けるかな」
「一応、してみましょうよ」
「じゃぁ、スイッチなしだから、この合体ガンメタちゃんのままで、同じお口で呟いておくれ」
「うん、いくよ、合体のままだけど、しっかり、掴んでいてよね」
「わかってる」
「では」
「カ、シ、ム、カ、シ、ム、シ、マ、ウ、ラ」
何も起こらない。何処かが光るわけでもないし、何処かに吸い込まれもしない、ましてや、壁の羽根つき渦巻も飛び出してこないし、轟音もしない。
「なにも、おこならいね」
「うん、言葉がちがうのかな?」
「三つあったけどね、でも、そうかなぁ?石もないし、どっか光る感じが欲しいよね」
「どうする?」
「洞穴を少しみてみるか?」
「そうする?どこに繋がっているのかしらね」
洞穴全体をよくよく見渡して見る。ゲンコツくらいの穴。穴の周りの渦巻模様。洞穴の終点という事しか、見て取れない。ここが洞穴の行き止まりなんだから仕方ないと言えば、その通りだけど。この焼け焦げたゲンコツの穴から俺達は、出て来たのであろうことは、想像できるけど、俺の果物ナイフでほじくり返しても元に戻れるようなものではないことは、やるまでもない。
半ば、為す術を無くした俺達は、洞穴の反対方向に進み始める。洞穴は、鉱物を取り出すために掘り進められたもののように、壁の其処彼処に堀跡が伺え、俺達の終点だけが終点ではなく、各々の穴があって、それぞれに終点があるような迷路のような構造になっている。炭鉱なのだろうか?他の鉱物なのだろうか?それは、わからないが、何かを掘り出していたことは確かの様だ、俺達が出て来た終点部分を作るためだけに、掘られた穴では無さそうである。
「オロチちゃん、道に迷っちゃうね、俺達が出て来た穴の場所は覚えてる?」
「うん、大丈夫よ、こういう洞穴は、慣れているから」
「そういえば、オロチちゃんは、こんな感じの洞穴に、長いこといたんだもんね」
「うん、そうね、でも、今では、遠い昔のように思えるわ、もう、人の姿のが、普通の暮らしになってるし」
そうだよね、俺達のファミリーとしてオロチちゃんは、無くてはならない存在であるのは、本人も自覚してくれているようで、嬉しい気持ちになる。入り組んだ坑道を大蛇姿の合体ガンメタちゃんは、内部を確認しながら、出入り口を目指して進んでいく。時折、尻尾を立ててガラガラを振ると、まるで、マラカスでも自分で振っている感覚になって、陽気で楽しい気分になる。滅入っていた心を癒してくれるオロチちゃんに感謝。
結構、時間を掛けてやっと出入口が見えてきた。光が見えるということは、夜ではないのであろう。出てくると、西日が顔に当たってなかなか眩しい外にでてきた。何処なんだ。ここは。
明るい所に目が慣れるのを待って、顔をもたげて見渡すと見覚えのある景色が目に飛び込んできた。
「オロチちゃん、あれは、ダハスの火の山じゃないかな?」
「ホントだ、そうみたい、でも、火を噴いてないわよ、煙すら出てないわ」
「そういえば、噴いてないね。ダハスの火の山じゃないのかなぁ?」
「確認してみる?」
「するしかないよね」
見る限りは、ダハスの火の山が遠くに見える。ここは、ダハスの島ではないが、隣接した島の一つだと想像できる。
但し、あの山が、ダハスの火の山だったらの話であるが。
ぜひブックマークと評価をよろしくお願いいたします。
ご感想もお聞かせいただけますと、大変嬉しく思います。
執筆と更新の励みになりますので、作品と併せてよろしくお願いいたします。




