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夢のような美女


「マーク」

「マーク。朝だ。起きて」

「ううっっ、五月蠅いなぁ」


夢心地?最近は、起きていても、夢心地なんだけれども。そんな夢心地の俺に、誰かが声を掛けている。ましてや、身体を揺すられているように感じられた。

ようやく、重たい瞼が、辛うじて、薄く開くと。


「おはよう」

「・・・・・」

「マーク。お腹がすいたぞ。何か食べに行こうよ」

「・・・・・」

「今日は、勇者検定を受けるんだから、しっかりしてねっ」

俺の横には、正に、夢でしか見たことのないような、見目麗しい若い女が座っている。驚きとともに、ビックっと、身体が反応して目が覚めてしまった。


「おはよう」

「・・・・・、お前は、・・・・・」

「私よ。マリーよ」

「マリー?お前が?おこちゃまの?」

「やっと、元の身体に戻ったのよ」

「・・・・・」


 よくよく見ると、自称マリーと名乗る女は、昨日、雑貨屋で、マリーに買った着物を纏っている。またしても、裾が短くなってはいるが。マリーは、美しい女性となり、女神と言ってもいいだろう感じに成長していた。


「マリー?なのか?」

「そうだよ。あんまり私が美しいので、ビックリしているのかな?オッホッホ」

「本当に、マリーなのか?」

「何言ってるのよ。本当に、私よ」

「お前、明日になったら、お婆ちゃんになっちゃうんじゃないの?」

「失礼ね。これが現在進行形なんだから、お婆ちゃんにならないわよ」

「へぇ~っ。そうなの」

「そうよ。よく赤ん坊の私を見捨てることなく、手元に置いておいたわね。それだけでも、合格なのよ。七つの私のアソコを観察したのを除けばね」

「観察?合格って?」

「マーク。勇者ブルースカイ。マリーがお仕えいたします。なんちゃって」

「なんちゃって?」


ドキドキする、グラビアから飛び出してきたような女の子が、俺の目の前にいる。そして、俺に仕えるって、跪いている。


「マリー。お前は、一体何者なんだい?女神?魔物?まやかし?どうして俺に・・・。それに、ブルースカイって」

「私は、女神になれるかもしれない、解放された魔法使いよ。あなたを待って、長いことあの祠にいたのよ」


 そのあと、滔々とマリーは、話続けたが、分かったことは、これから先、マリーは俺と一緒にいるということと、俺が勇者の血を引き継いでいる者らしいってことだけだった。あとは、一所懸命に話してくれるマリーには、申し訳ないが、なんだかよく分からない内容ばかりだった。


「納得は、できないけど。とにかく、マリー。よろしく頼むよ」

「ハイハーイ。マークにこれから毎日、美味しいもの食べさせてもらえて、うれしい」

「・・・・」

「養われ放題の身分。よかった。よかった」

「・・・・・、でも、どうして、俺なんだい?」


マリーは、首から掛けていた巾着から一つの賽を取り出した。

「この賽は、マークの賽と三つ合わせて初めて、勇者の証となすもの」

「もともと、三つで一つのサイコロなのよ」

「古の昔に、勇者ブルースカイと恋人クリスティーが倒したドラゴンの牙からつくられたもの」

「なんだい?勇者?クリスティー?」

「あなたの先祖?私の???」

「俺の?」

「そうよ。血を受け継いでいるのよ」

「ところで、マリーは、いくつなんだい?長いこと祠にいたんだろう?」

「私は、十七歳、ものすごく、美人で、ムチムチボディの誰もが羨む、超キレイで美しい女の子よ」

「どのくらい祠にいたんだい?」

「ううぅ~ん、だいぶ待たされたわ。このバカに」

「俺?だから、どのくらい?」

「そうね、でも、二百年くらいかしら?」

「二、二百年?」

「勇者復活まで、大体、五世代かかったようね。あなたの家系?」

「お前、二百年って、やっぱり、魔物だったんだな」

「何を言うのよ。同い年でしょ」

「バカ野郎!二百一歳、年上だ!!!!」

「あらっ、十六になったばかりだったか。一つお姉さんなのね」

「一つじゃねえ。二百一だ」

「そんなことないわ。一つよ。私は、十七で祠で凍結されてるんだから、十七のままよ。勿論、ヴァージンだし」

「・・・」

「何よ、いやらしいその目。本当に、十七よ。」

「本当?」

「うふふ。すぐ信じる。ちょろい、ちょろい」

「・・・なんだと」

「でも、ホントよ。これから先は、あなたと一緒に歳を重ねていくから、赤ちゃんにも戻らないし、お婆ちゃんにも、ならないわ」

「そうか」

「ドキドキ?する?こんなステキな女の子が、運命の人で、手に入るって」

「ばっ、バカいうなよ。押しかけの厄介者のくせに」

「うふふっ、まぁ、いいわ。私に、メロメロなくせに。仕方ないから、私が、あなたのお姫様になってアゲル」


なんとも、意外というか、想定外っていうか、驚きが強すぎて、物事を受け入れることが、スンナリできてしまっている自分がいた。俺は、この美しいけど、強かな二百一歳年上のパートーナーに魅了されているのだろうか?初めて触れ合うほどに近くで見る異性に唯々、興奮しているだけなのであろうか?


「マリー。また着物を買わないとな。出費がかさむよ」

「大丈夫よ、はだけないように、きつく縛っておけば」

「それ、一枚じゃ仕方ないから、なんとかしよう」

「セクシーすぎて、こまっちゃうのかな?マークが硬くなっちゃう?」


 手持ちのお金で、マリーの衣服を一通り揃えて、わずかな残金で飯を食べている。


「マリー、さっき勇者検定とか言ってなかったか?」

「うん、私が戻ったから、今日。受けに行くわ」

「どこに?」

「街はずれの教会よ」

「マリーが戻ったからなんだね」

「勇者の証があればいいだけだけど、マークだけじゃ分からないでしょ」

「ああっ、なんのことだか、ずっとわかっていないよ」

「まぁ、気楽にいってみましょう」


お腹が満たされたあと、俺たちは、随分とここまで歩いてきた。本当に街はずれにある教会だ。

我が町ティーンにこんな所があるなんて、知らなかった。まぁ、この前まで孤児院の中しか知らない俺が、外の世界、自分の町など知る由もなかったのだが。


改めて、教会を見上げて見るが、こんな街はずれにこのような教会があるなんて知らなかった。そして、この教会は、祠とは違って、実際に存在している。消えたりはしない実在している物だ。たたずまいは、古い教会ではあるが、なにやら厳かな雰囲気を醸し出している。扉を開き、二人して中へ入り、奥へ奥へ奥へ。信じられないくらいの奥行を感じながら、歩み進む。こんなに奥行きがあるのかなぁ?。そして、やっと、祭司の前へ。


「オッホッホ。一目見て分かりますぞ。二百年ぶりの尋ね人よ」

「なんなんだ。この、不真面目そうな、おっちゃんは?」

「私だって、初めてなのよ。ここからは、私も初体験なのぉ」

「このクリス教会に、よくぞ来られた。ブルースカイ、ドラゴンの牙よ。検定は、終了じゃ」

俺の胸の袋の賽とマリーの胸の賽から一筋の光が流れ出し、奥の箱までを光が導いている。祭司は、その箱から何やら取り出し、俺とマリーに手渡した。

「そなたには、ドラゴンの剣を。そなたには、ドラゴンの杖を」

「ちっちゃ」

「あらまっ」


俺に渡された剣は、剣と言うよりも果物ナイフのような刃物。マリーが受け取った杖は、杖と言うより化粧筆のような物であった。


「今日からは、そなた達は、女神クリスティーのご意思のまま、為すべきことを為すものに、あいなった」

「クリスティー?」

「昨日、会ったじゃないのよ、祠で」

「なんじゃと、クリスティー様に会った?夢でじゃな」

「あの、傲慢極まりある女神様が、クリスティー?」

「夢を見たのじゃな。古の女神に従うのじゃぞ」


マリーもキョトンとした顔をしているところをみると、状況が呑み込めていない様子だ。

俺も何もわからないが。


「それで、俺達に何を」

「そうじゃ、そうじゃ。まずは、西の町。ゲトレに赴き、刀鍛冶カッチーナを訪ねよ」

「ゲトレ?カッチーナ?」

「ワシも、代々、勇者の証を持つものに、この言葉は授けるように、伝え聞いておるだけじゃ。ワシの代で、この言葉を発することになるとは、思いもよらなかったが」

「謎解きゲーム?なのか?俺で遊ばないで欲しいんですけど」

「マーク。私たちは、クリスティー様に従うのみよ」


納得などできるものではなかったが、ここにいても仕方ないので、俺達は、教会を後にした。



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