合体
俺は、納屋から出て、村の広場に立っている。もう一度、井戸へいってみるか?どこから散策しましょうかと、思案していると。
「マーク、西の教会へいってみない?」
「あっ、そうか、でも、夜中に教会?」
「関係ないでしょ、それに、村は、あんまり気にかけてなかったようだし」
「それもそうだね」
「おデートに羽の生えた蛇の教会なんて、ワクワクしてきちゃう~」
「なるほど、竜の玉とか言ってたもんね、オロチちゃんいいかも」
「じゃぁ、西へ」
「どのくらい西なんだろうね、村の外れ?話からは、大分外れのようだったよね」
西の方へ歩みを向けて進んでいく。
どのくらいかかるかな?朝になっちゃうかしら。まぁ、今日は、ちょこっと調査だからね。そんな気分であるいていると、なんだかジンジンと刺青が熱くなってきている。
刺青っていうか、オロチちゃんだよね。イタズラしちゃイヤよ。でも、でもさ、なんだか、少しずつ歩みが、足取りが軽やかに、素早くなってきている感じがする。
いや、感じではない、すこぶる軽やかってか、走ってるじゃんか、もはや、歩いていない。弾んでいるような。こんなに俺は、足が速くなかったはず、てか、これは、人間業とは、思えないよ。
人間業では、ないけどねぇ。
オロチちゃんって、頼りになるね。本当にうちのファミリーって、優秀な者ばかりだよ。俺を除いて。
少し、申し訳なくなってきちゃう。俺も、頑張らなくっちゃ。
「オロチちゃん、スピード落としておくれ、村が終わっちゃいそうだ」
「おかしいわね、それらしい建物がないわね」
見渡す限り、里山の中腹だ。教会なんて感じのものは、見当たらない。そもそも、家や建物自体がないのである。オロチちゃんのブースター、スーパーチャージャー、ターボ、なんて呼んだらいいのか分からないスーパーアシスト走行で、村をひとっとびしてきてしまった。
「いかんね、ないね、戻るしかないかぁ、見落としたのかなぁ」
「そんなことはない、感じよ」
「建物を中心的に確認してきたもん」
「そうだよね」
「でも、道もなくなって、このままだと、山の上にいっちゃうよ」
「山の上なのかなぁ」
「上は、なにもない感じだけどね、ましてや、教会だもん」
「そうよねぇ~」
オロチちゃんは、刺青のままでも、いろいろ感知できるらしい。実体化している状態となんら変わりないといったところだ。村長のいっていることが、正しいのか、いささかの疑問を感じてしまうのは、ここに来る前から承知済みだけど、ここまで何もないと、何もないのかもしれない。
暫く、どうするでもなく佇んでいると、久々に見覚えのある光が微かであるが目に留まる。俺の巾着の賽子からと足首、そう、オロチちゃんの刺青の尻尾の先も、同じホタルのような光が薄く、光っている。
オロチちゃんの尻尾って、ドラゴンナイトでオレンジ色に光ってたのに、今日は、俺のと同じ黄緑だ。いずれにしても、いつもと違って、俺の黄緑も、刺青の尻尾の黄緑も、本当に力弱く薄い発光で、息をするように点滅している。
「光ってるね、よわーく」
「うん、よわ~く」
「マーク、その山肌に、とっても魅力的な穴があるんだけど」
「穴?」
「うん」
「魅力的って?」
「蛇として・・・・」
「蛇として・・・・、って、ただ、蛇としてなの?」
「ごめんなさい、でも、あるのよ、魅力的なのよ」
「しかたないなぁ~、どこよ」
「あそこ」
自動的に、腿から山肌の方向へとグイっと向けられる俺の身体。
その方向を俺が見ても、只々真っ暗で何にも見えない。アシスト歩行でこれまた、自動的に進まされる。おおっ、カラクリ人形か、ロボットにでもなった気分だ。だんだんと辺りの夜目にも慣れてきたのか、ぼんやりと、奥まで真っ暗らで、よく見えない、ほんの人の頭くらいの大きさの穴を発見した。
「この穴が、とっても魅力的なの?」
「うん、うずうずしちゃう、入りたい、いい?ねぇ、入ってもいい?」
「入るったって、かなり間口も小さいし、狭そうだよ」
「大丈夫よ、いいでしょ、いいって言って」
「言って欲しいのかい?」
「うん、ダメっていうなら・・・我慢するけど・・・、初めてのおデートだから・・・」
「わかったよ、いいけど、刺青から出て入るんでしょ」
「一緒に入るわ」
「えっ、無理でしょ」
おおっと、またまた、刺青が熱く、熱くなってくる。先ほどのスーパーアシスト走行の時よりも、格段に熱い。
熱い風呂に入るくらいの熱量だ。俺は、腿を捲って刺青を確認する。ありゃ?段々と刺青が広がって、足全体が真っ黒っていうか、真っ青っていうか、濃い紺の刺青一色になっていく。脚だけじゃない全身がもう既に真っ黒スケになってしまった。
「マーク、嬉しいわ、合体しちゃう」
「なんて?」
おおっ、身体が溶けていくような感じ、意識は、全然問題ないが、体の自由が効かなくなって、視線も地べた近い高さになっている。
自分で振り向いた訳ではないが、チラっと見えてしまった。オロチちゃんの緑の蛇ではなく、黒光りのするガンメタリックボディの大蛇がそこに見えた。
顔が見えないのは、このガンメタちゃんは、俺とオロチちゃんの融合体なのだと確信できた。
「オロチちゃん、合体って、この黒い蛇は?」
「うん、マークとワタシが溶け合って、一つになったのよ、おデートって最高ね」
「やっぱり、そうなんだ、これで、魅力的な穴に侵入しちゃうってこと」
「そう、わかってるぅ~、愛の巣に入る感じでしょ」
会話もできるし、意識もある、でも、ただただ、されるがままに、俺は、頭くらいの大きさの穴目掛けて突入していく。
少し、怖い。
いや、結構、怖い。
だって、暗くて、狭いんだもん。
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