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時を超える


 夕飯を頂きながら、俺達は、ここまで来た道のりを、海の向こうから来たことを、細かく説明した。

祠の話や女神クリスティー名前、女神アルカティーナの名前を出さないで、ここまで勇者ブルースカイの手掛かりを求めての旅を話してみた。


 村長のアテル、アルカティーナ、マナニーニ、ティアラ、クリスティーの全員は、本当に異国のというか、黄泉の国の出来事として、この話を夢中になって聞いている。

 まるで何も知らないし、心当たりなどもない様子だ。俺の父親とされるブルースカイであるアロンのことは、村にも存在していないし、全く名前すら聞いたことが無いとのことだ。


 本当に、この村の人々は、何も知らないようだ。ましてや、村ぐるみで俺達を騙そうとしているとは、到底思えない。むしろ、俺達の方が、ここにいる村長家族とお向かいさん家族を騙して、作り話をあたかも真実のように話しているようにも思えてしまう。


 いや、本当に真実なのだけど。


 こちらの話を聞き終わると、村長は、俺達の期待することを何も知らないことを申し訳なく感じたのであろうか、はたまた、面白おかしいおとぎ話を披露したと思っている俺達にお返しのつもりなのか。

 重たい口を少しずつ開き始めた。


「さきほど、ティーナが申したことであるが・・・」

「なんでしょうか?」


「もう、七年も前の事じゃが、突然、村の男が消えてしまった」

「消えた?」


「マナを産んだばかりの、わしのかみさんも消えた」

「消えた?」


「そして、村には、今いる者しか、おらなくなった」

「今いる者?」


「そして、わしは、よわい二十五にして、この姿となった」

「この姿って、長は、今、三十二歳なのですか?」


「そのとおり、いくつに見えている?」

「申し上げにくいのですが・・・・」


 どうみても、お年寄りにしか見えていない。三十二とは、到底見えない。


 後期高齢者が俺の目の前に居るだけだ。


「この村の男は、わし独りきりとなり、長にふさわしい年恰好に変貌したのだ」


 なんなんだ。この話は、カメさんでも、助けてあげたのであろうか?


 この村長は、この村は、ここにいる人々は・・・


 冗談を言っている場合ではない。目の前の村長が、三十そこそこだったことは、本当に驚いたが、年の取り方は、個人差があるだろう。

 しかし、一瞬にして変化するのは、魔法そのものだ。


 まるで、村自体、ある特定の村人が、時間を飛び越えて、それぞれが、それぞれの時間と場所に移動しているようにも。

 または、居所は変わらずとも、その者の時間だけが経過しているとも感じられる。


 そんなことが、本当にあるのであろうか。

 それとも、俺自身が・・・・。俺は、十六の誕生日以来、ずっと夢の中にいるままなのであろうか。


「それで、そのあと、この村や長たちは、どうしたのですか?」

「どうもしやせん」


「そのままだ、それから、今日まで、時間が過ぎているのみじゃ」


「娘たちも大きくなった」


「モルシンにある教会に相談したりしなかったのですか?」

「モルシン、ああっ港町じゃな、あそこに教会などはない。教会はここから、西の外れにあるには、あるが」


「モルシンのアルカ教の教会から、俺達は、やってきたのですが」

「・・・・・」


「教会ができたのか?知らんかったわ、お主らは、その布教か」

「違いますよ、そもそも、アルカ教は、アルカティ・・・」


「アルカ教。異教じゃな。そんな教えが蔓延しておるのか、モルシンも変わったようじゃの」


「西の教会は、どんな教えなのですか?」

「羽の生えた蛇で、竜とかいうものの玉を祭っておったようじゃが」


「なんですって?竜ですか?」

「それも、昔の話じゃ、もともとわが村は、教えなどいらん。この山と川があれば」


「山と川、この大きくもなく、なだらか盛り上がりのような山がですか」

「この里山が、わしらの生きる糧じゃ」


 そうか、この村は、自然信仰なのだろう。自分たちの生きる山そのものが、信仰の対象なのだと理解できた。


「もう、今日は、夜も深い、子供たちも明日があるで、この辺で、また明日じゃ、まだ、ここにおられるのじゃろう」


「はい、また明日教えてください」


「申し訳ないが、隣の納屋で寝てくれるかのう」

「あっ、はい。ありがとうございます」


「ここは、狭い、わしと娘二人でいっぱいじゃから」

「ありがとうございます。納屋をおかりします」


「ふわふわの干し草は、たくさんあるから、寝ごこちは良いはずじゃ」

「大丈夫です」


「風呂が沸いておるので、入ってから休むとよかろう」

「ありがとうございます」


 ありがとうございますしか、言えない状況だ。また明日、いろいろ聞いてみることにしてみよう。


 俺達六人は、ティーナ、マナ、クリスの三人の手引きで、風呂場まで案内された。


「お兄ちゃんは、最後よ。薪をくべるのを手伝ってね」

「ああ、いいとも」


「お姉ちゃんたちが、上がったら、お兄ちゃんね」

「わかったよ」


「私たちは?」


 早くお湯に浸かりたいようなマナが口を開いた。


「そうか、お兄ちゃんの後ね」

「眠くなっちゃうよ」


「じゃぁ、私たち三人は、お兄ちゃんと一緒に入れてもらいましょう」

「そうね、クリスもいいでしょ」

「うん」


「ちょっと、まってよ、君たちは、お姉ちゃんたちと一緒に」

「でも、入りきれないもん、五人と四人で別れればちょうどいいのよ」


「ねぇ~」

「ねぇ~」

「ねぇ~」


「ねっ~って、俺は、男だけど、一緒でいいの?」

「・・・・・」


「お兄ちゃん。恥ずかしいの?おけけ、まだ生えてこないの?」

「えっ」


「私たちとおんなじなの?ツルリンコちゃん?」

「ちっちっ、違うけど」


「じゃぁ、いいでしょ」


 いいのであろうか?まぁ、いいのか。


 ティーナちゃんは、伯母さんだし、マナちゃんは、お母さん、クリスちゃんも、伯母さんみたいなもんだろう。家族風呂だ。


 問題ない。問題ないのかなぁ?




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