型抜き
のどかな光景の村を見渡しながら、何某かの見当をと探してはみるものの、何もない。
村人に聞こうにも、いきなり五百年前の勇者の家を訪ねるなんて、あまりにも、突拍子もないことと思われてならない。
為す術なく、俯いていると、首から掛けたメダルが揺れているのが目に入ってきた。
そうか、このメダルを試してみよう。俺は、メダルを手に取って、そっと口づけた。
すると、
俺の眼のまえに、クリスちゃん?クリスティーの美少女版?
と思しき、これまた、国民的美少女ナンバーワン的なブルネットの栗毛の髪をなびかせた十歳前後の女の子が光に包まれながら、正に降臨してきた。
「さびしくなっちゃったの?」
「もしや?伯母上なの?」
「もちろん、ア・タ・シ。アルカティーナよ。ミニサイズだからティーナちゃんね」
「ティーナちゃんか。俺の家系は、美形なんですねぇ。俺と違って」
「子供のころから、美しいでしょ~っ。うふふっ」
「はい、スゴイです」
マリーとルルが、それこそ、目ん玉品剥いた感じで、ティーナちゃんを凝視している。
「かわいい~。きれい~。クリスちゃんよりも、美形かも?」
「青い髪をブルネットにしたくなっちゃうわ」
「あらあら、可愛いこといってくれるのね」
「ところで、お家は、みつかったの?」
「家もなにも、どこをどう探せば」
「まぁ、とにかく、村の井戸のあたりで聞き込みしてみたら?」
「現状を私もよくわからないもの」
ティーナちゃんがよくわからないものを探せってのが、本当によくわからないけど、一応、井戸をまず目標に歩いていくしか無かろう。
そのころ、船上の三人は、
「マークのところに、テレポしましょうよ」
「待ってよ、この私たちのお家、お船をちゃんと停泊させないと・・・」
「この港は、船も多いし、賑わっているから、船だけを置いていけないわね」
「そうなると、ロコは、ここで、お留守番?」
「イヤっ」
「イヤって、ロコは、お船専門係でしょ~」
「・・・・、それは・・・・」
独り、留守番確定ぎみのロコは、しょんぼりと下を向いたまま、甲板を見つめている。
「あらっ?ネズミが、かじったのかしら?」
今まで気が付かなかった甲板の隅に、丁度ビスケットくらいの小さな穴?
板の剥がれのような箇所が。
どうしようもなく、今、それが気になってならない。
「こんな穴?剥がれがあったかしら?古い船だけど、手入れも掃除もしてたのに?」
ロコは、その部分を指で撫でながら、補修をしたい様子だ。その気持ちに応えるように、もう見慣れてきているホタルの様な光が、ロコの巾着から点滅するように発せられてきた。
「そうだ、私の木片の大きさと形に、そっくりね」
ロコは、巾着から宝物の木片を取り出して、よくよく見てみる。発光の根源は、正しくこの木片だった。
プラムとオロチちゃんもその光に引き寄せられるように、近くに寄ってきた。
「ロコ、その光る木の欠片は?」
「私の巾着の中身よ」
「私以外のみんなが持っているオタカラの?」
「うん、オロチちゃんだって、ガラガラ持ってるじゃないの?光るでしょ」
「私のアンクレットの光に、やっぱり、似ているのね」
「マークに会ってから、この欠片も光り出したのよ」
「なんだか、この甲板の穴とソックリな形ね」
プラムの言葉に反応するように、ロコは、甲板の穴というか、剥がれた部分に光る木片を当てがっていく。オロチちゃんもじっと、狙ったカエルを睨みつけるように、その部分から眼を離せないでいる。
光る木片は、甲板の剥がれた穴のような所に、ピッタリと、まるでジグゾーパズルの最後のピースをはめ込むか如く、収まってしまった。塞がった甲板が、みるみると、なんのキズも無かったような磨かれた床板へと戻っていく。
「ロコ、すごーい。新品になっちゃったみたいね」
「木片は?」
「飲み込まれちゃった・・・・」
次の瞬間、爆発の様に激しいというか、強烈な眩しさというか、真っ白い閃光に三人は、包まれ、目を開けていられなくなった。
程なくして、三人が目を開くとそこは、波止場、埠頭の荷下ろし場に座っている。そして、ロコの掌には、木片がちょこんと乗っかっていた。
「あらっ、船から、降りちゃったの?」
「船が消えちゃって、波止場にでてきちゃったわ」
「この、木片?」
ロコの掌の木片には、船の絵柄が彫り物のように刻まれ、その淵が、ぼんやりと光ったと思うと、静かに消えていった。なんだか、懐かしい型抜きのようになっちゃった木片。
「木片に、船の模様が」
「私のアンクレットみたいな感じかな?」
「じゃぁ、アンクレットみたいに、私も、木片に入れる?のかしら?」
「わからないわ、でも、船を呼び出せるの?」
ロコは、恥ずかしい気持ちを抑えて叫んでみた。
「お船ちゃん、カモーン」
「・・・・」
三人とも、互いの顔を見つめなおすだけ。何事も怒らない。木片にも、変化が見られない。
「どうしよ。どうしよ。お船出てこない。お家を消しちゃったわ」
「ロコ。落ち着いて」
「そうよ。木片に無かった彫り物があるんだから、無くなってはいないはずよ」
「はずよね」
涙ぐんでいるロコは、木片を大事そうに握りしめ、お船の彫り物に指を添わすようにしてから、指先でチョンチョンっと、突っついてみた。
すると、波止場に接岸している我が家である船が、ドドーンっと実体化した。
「おおっ、出てきた」
「あったじゃない」
「よかったわ、でも、木片の彫り物は、消えてないわよ」
ロコは、木片に刻み込まれた船の彫り物をもう一度チョンチョンしてみた。すると、眼前で波に揺られていた船が、パッと、消えてなくなった。
「おおっ、ロコ。それは、収納箱なんじゃないの?」
「収納しちゃったみたいね。でも、言い伝えでは、この木片は、家を成すもの?らしいけど」
「お船は、私たちのお家だから、あってるわよ」
「でも、お船以外も収納できそうね」
「叫ばなくていいんだね」
「そうみたい。マークが、私たちにする呼び鈴方式みたいよ」
プラムとオロチちゃんは、納得したように顔を見合わせて、声を併せた。
「エッチな木片なんだねっ」
「ぜんぜん、エッチじゃないもん」
船の安全なる保管に成功したロコ、プラム、オロチちゃんの三人は、マークのもとへテレポーテーションの準備をすることにした。オロチちゃんは、蛇の姿になって、アンクレットをマークに渡してしまったロコの足首に絡みついて、アンクレットに変身していく。
「プラム、オロチちゃんのアンクレットは、ニューデザインよ」
「本当だ、かっこいいわね」
オロチちゃんが、変身したアンクレット。面白いことに、アンクレットの紋様が、蛇ではなく、いにしえの美女メデューサの姿ように変化していた。
リアルタイムで素晴らしいの一言だ。
「準備オッケーね。ロコ」
「うん、プラム」
二人は、抱き合いながら、座り込んだ体制を取りつつ、それぞれのアンクレットに手を当てて、マークを強く思い念じ始めた。
心地よい風が二人を一瞬かすめたような気がした。
その風に運ばれるように、二人の身体がそれぞれのアンクレットのドラゴンナイトに吸い込まれていく。やがて全身が呑み込まれると、そこには、二つのアンクレットだけが、クルリクルリと回っているだけとなった。
そして、いつものように、一呼吸遅れるように、それぞれのアンクレットもその実体を消し去ってしまった。
一つのアンクレットは、オロチちゃんの変身だということも、忘れちゃいそうだ。
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