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緑の肌


 大きな露天風呂に漬かりながら、昨日見た景色、火の山の山頂、ドロドロとした真っ赤な世界を思い返している。

 時折、ここから見る山のてっぺんは、噴煙の間から赤い光が、吹き上がり散乱しているのが確認できる。のんびりとは、していられないが、麓から見ているだけならば、綺麗な風景でもあるし、まだ、それほど、大変な事態とは思えないのが悩ましい限りである。

 火の山のてっぺんまで辿り着いていながら、何の進展も得られないことに正直この後は、どうしてよいものかと思っている。


 四人も俺と同じように、深刻に事の重大さを考え込んでいることだろうと心配していると、


「ロコっ、マークみたいに、さきっちょを弾かないでっ」

「だってぇ、マリーのさきっちょ、ピンクのグミみたいで、プルプル震えて可愛いんだもの」

「どれどれ、これか」

「ルルまで、ダメっ」

「マークの指を独り占めにする悪いさきっちょは、お仕置きよ!エイ!」

「痛っ、プラム、やったわねー、エイエイ!」

「痛い、ゴメン。マリー許して」

「みんなも許さないわ。マークは、私のだけを触ってるんじゃないでしょ」

「私のデラウエアだけを触るなら、いつでも、クリスティー様を呼び出してあげるのになぁ」

「ロコ!ロコは、触られたいの?」

「うん」

「私の巨峰だって」

「ええっ~、ルルまで」

「私だって・・・」

「プラムまでも、何言ってるの」


 垣根で区切られた隣の風呂からは、キャッキャとはしゃぐ黄色い声が絶えることなく聞こえてくる。内容は、俺が今深刻に考えていることとは、違う様だ。

 聞いているこちらの方が、恥ずかしくなってくる。自分達だけでは、飽き足らない様子で今度は、大きな声でこちらに話しかけてきた。


「ねぇ、マーク、プラムのプラムが、かじって欲しいってよ」

「マリーのバカっ。そんなに大きくないし、色だって濃くないわ」

「そうね。これは、マスカットだったわ」

「どれどれ。本当だ。おいしそうにツヤツヤに光ってるわね」

「ルル。顔が近い」


「そんなに大きな声を出して、女湯には、他のお客さんは、入っていないの?」

「マーク、そうなのよ。時間帯かなぁ、男湯は?」

「そういえば、男湯も俺だけだよ」

「じゃぁ、そっちに行ってもいい?」

「えっ」

「だって、誰もいないんでしょ。それとも、マークがこっちに来る?」

「・・・・」

「ザッブーン」


 垣根の隙間から、そーっと、こちらに抜けて、俺の横に浸かってきたのは、ロコだ。

 今日は、ちゃんとタオルを胸まで巻いている。


「独りで入るより、寂しくないでしょ。お背中、流しましょうね」

「大丈夫だよ。ロコ。お風呂は広いんだから、もう少し、離れて浸かっていいんだよ」

「イヤなの?」

「イヤじゃないけどさ」

「そうよ、マークが嫌がってるじゃないの。離れなさいよ」

「イヤじゃないって、言ってくれたわ。マリーの意地悪」


 気が付くと、マリー、ルル、プラムの三人も、肌を釣り合わせるように、湯に浸かってきた。これじゃ、狭い湯船にギュウギュウに入っている感じで、サイコーじゃないか。


「みんなも、広いんだから、のびのび入ろうよ」

「イヤなの?」


 見事に、四人の言葉と顔をこちらに向ける動きがシンクロしている。


「イヤじゃありません。嬉しいです」

「でしょ~っ」

「ねぇ~」


 何をするにせよ。俺が四人に敵うことなんてないのである。女の子の魅力って、本当に素敵で偉大だってことが改めて、よく分かりました。


 降参です。


「でも、これからどうしたらいいのだろう」

「火の山は、相変わらず、益々激しく火を噴いてきているものね」

「やっぱり、クリスティー様に聞くしか・・・」


「巫女さんは、何かわかるかしら」


「やっぱり、クリスちゃんだよね」


「クリスちゃんじゃなくても、そろそろ、ホンモノのクリスティー様が出てくる頃かも」

「いつもの祠ね。でも、祠は、不定期だけど。クリスちゃんは、確実に呼べるもん」

「マークの大好きな、おっぱいモミモミでね」

「大好きは、余計だよ」


「嫌いなの?」


「また、そればっかり。言わなくても、分かってるくせに」

「言葉で聞きたいんだもの」

「どっちなの?」


「だ・い・す・き・で・す」


「じゃぁ、お部屋に戻ったら、呼び鈴を鳴らしてみる?」

「うん、是非、おねがいします」

「ご飯食べて、寝る支度が出来てからよ」

「うん、そうね。お布団敷いてからね」


「・・・・」


 本来の目的を忘れてしまうのが、俺達五人の悪い癖だ。ブルースカイ・ファミリーは、優秀なのか、お馬鹿さんなのか、まぁ、どちらでもいいかな。少なくても、俺がそんなにお利口さんの訳がないものね。


 大浴場から戻り、夕飯を済ませ、部屋の窓から火の山を眺めている。夜も更けているので、山頂から赤く噴射するものが、怖い位によく見えている。この遠さで見上げていても、山頂で見た赤くてドロドロとして、身体まで溶けてしまいそうな熱い空間が鮮明に思い起こされてくる。


 山頂まで辿り着きながら、何の進展も得られない状況に業を煮やし、遂に、俺は、人差し指を突き立てた。


「マーク、優しくよ」


 はっと、我を取り戻し、ロコを見つめる。そうだった。

 呼び鈴は、優しくタッチすることにしたのだ。


「各々方、よろしいかな。では、いざ参る」

「どうぞ」


 四人の突き出された胸を順々にチョンチョンっと、優しく人差し指で触れて回ってから、今日は、囁くように小声で


「クリスちゃん、お願いします」


 顔を突き合わしている五人の中心に、ぼんやりと光が灯ったと思うと、金髪の美少女がそこに現れた。


「もう、五日経ったのかしら?好き者ね」

「クリスちゃん、山で何も見つけられなかったよ」


 クリスティーは、辺りを見渡して、少しほっとしたような顔をした。


「上出来よ。一応、ドラゴンナイトとプリメアを見つけられたのね」

「えっ?」

「オロチちゃんの尻尾の赤いのが、ドラゴンナイトよ。それとその黒いのがプリメア」

「えっ?プリメアって草じゃないの?」

「オロチちゃんの尻尾?」

「プリメアは、庭に埋めて水をあげてね。ドラゴンナイトは、島の岬の先に一つ投げ入れて」


「一つ?」


「そうよ。一つ。オロチちゃんに頼めば、何回でも・・・。」

「何回でも?」

「尻尾の骨をポッキンするのよ」

「えっ、痛そう」

「そろそろ、時間よ。では、試してね」

「待って。時間制限のない、大きなクリスティーは、いつ?」

「新月の庭の木の元で、逢引する?」

「する。するよ。お願いします」

「では、次の新月で。・・・そうだ、私にも、してちょうだいな」


 美少女のクリスは、両手で俺の頬を掴んで、背伸びしながら、自らの唇を俺の唇に重ねてきた。


「だって、みんなだけじゃ、ズルいもん」

「ええええ~っ」

「私たちのチューよりも、濃厚なチューだわ」


 四人の美女と俺との間に、波紋を起こす空気を残して、クリスちゃんは、消えていった。


「どういうこと?マーク」

「うん、オロチちゃんを呼び出さないとね」

「違うわよ。長かったわ。舌まで絡ませたの?」

「ずるーい」

「今のは、不可抗力でしょ」


 マリーが突然、クリスちゃんと同じように俺の頬を引き寄せて、有無を言わさずに唇を重ねてきた。


「これで、みんなと同じ。私も、お口にチューをもらったわ」

「マリー、ズルい」


 ロコ、ルル、プラムも、次々と俺の顔を抱き寄せるようにして、唇を重ねる。嬉しすぎるキッスの嵐に俺の顔は、揉みくちゃにされてしまった。


「みんなこそ、ズルいわ。何回も」

「マリー、もう許して。俺が悪かった。オロチちゃんを出そうよ」


「ブルスカ・オロチン・カモーン」


 プラムの呼びかけに応じて、アンクレットの紋様が剥がれ落ち、足元でムクムクと大きくなっていく。オロチは、大きくなりながら、クネクネと動いている。硬直は、解けている様子だ。尻尾の先のガラガラが、赤く光り、鉄が燃え盛ったような感じになっている。ガラガラを小刻みに揺らすたびに、光が増すように感じられる。


「オロチちゃん、大丈夫?具合よくなったの?」

「あっ、山から下りたのね」

「尻尾は、熱い?痛い?」

「身体が、燃え滾る感じがしてから、覚えていないわ。今は、大丈夫みたい」

「このプリメアは、オロチちゃんは、知っていたの?」

「なんなの、その黒い岩の欠片」


 オロチちゃんは、山のてっぺんでの自らの行動は、全く覚えていないらしい。

ドラゴンナイトは、オロチちゃんの尻尾を折って取り出さなくてはならないらしいが、折るって、どうやって折るのかなぁ。


「オロチちゃん、尻尾のガラガラは、なんともないのかい?」

「違和感は、あるけど、なんともないみたい」

「見せてごらん」


 俺は、オロチちゃんの尻尾を掴んで赤く光るガラガラをよく見てみた。

 ガラガラは、全部で五つあり、光っているのは、先端の三つ、あとの二つは、骨のままのように見える。先ほどまでは、山頂のドロドロと同じように赤く光っていたが、段々と落ち着いてきたのか、ほんのりオレンジ色に光っている程度となってきた。恐る恐る触れてみると、熱いわけでもなく、石と骨の間のような感じがした。


「ロコ、幻影の笛を吹いてみてくれないか」

「えっ、またエッチな笛を吹くの?」

「この前の、赤いドロドロから、今度は、何が見えるのかと、ヒントがあるような」

「うん、わかったわ」


「キュルルルル」


 いつものように、ぼうっと、煙が立ち込めるように、何かが見えてきた。海岸線から大地が広がっていくのが、見えた。みるみる広がっていく様子が伺えた。


「なんだろう、大地が生まれる感じだね。続きはないのかな?」


「キュルルルル」


 続きが、出てくるのかと期待していたが、今回は、幻影は一度しか現れなかった。


「大地の誕生を探すことになるのかな」

「う~ん、今回は、ドロドロより難しい感じね」

「でも、今の海岸線は、岬の先のような風景だったような」

「このダハスの岬かい?」


 五人で幻影を思い起こしていると、オロチちゃんも考え込んでいる。


「オロチちゃん、どうしたんだい」

「山の穴の中といい、大地の幻影といい、同じような感覚がしたから」

「オロチちゃんが、ずっといたところだよね」

「私は、どこから、あそこへきたのか?」


「オロチちゃん、言いにくいんだけど、ガラガラの骨の一つをそぎ落とさなければならないんだ」

「ええっ~っ、痛~い。どうしても?」

「治療するから、なるべく痛くないように、切り落とすから」

「仕様がないなぁ、でも、痛いの我慢するんだから、私にも、みんなと同じことしてね」


「同じこと?」


「チューよ。お口に」

「えっ、わかった。何べんでもしてあげる。みんなより、濃厚に、何回でも」

「マーク!オロチンにチューするの」

「勿論、するさ。俺達の新しい家族だよ。それに、痛い思いをしてくれるんじゃないか」

「なら、我慢するわ」


 オロチちゃんは、さっきのように、尻尾の先を俺に向けて、掴めさせた。尻尾を掴んだ俺は、ぼんやりとオレンジ色に光るガラガラの一つを確認し、二つ目に繋がる節みたいな関節のような部分に、ドラゴンの剣と言われている果物ナイフを軽く当てがった。


「イヤっ、痛い」


 マリーが反射的に声を上げながら、顔を両手で覆い隠した。

とその時、尻尾の先の拳ほどの一つのガラガラが、ポトリと転げ落ちた。


「あんっ」

「オロチちゃん、痛かった?」

「大丈夫、マークが、優しくしてくれたから・・・」


 でも俺は、果物ナイフを当てがっただけだ、切り落とすようなことは、まだ、していないはずだったが、これも、このナイフの技なのかもしれない。


プラムが、転がっているガラガラを拾い起し、


「これが、ドラゴンナイト?」

「プラム、熱くないの?」

「うん、重たい石ころってとこね」


プラムが手にしているガラガラは、既に光を失って、黒い石の塊って感じだ。


「ねぇ、マーク。約束の」


 オロチちゃんが長い舌を突き出すように、せがんできている。ちょっと、怖い。


 オロチちゃんもそれを察したように今度は、蜷局を巻きながら激しく回転し始めた。部屋の中にもかかわらず、砂煙のようなものが立ち上ったと思ったら、俺の目の前に、茶色の髪で赤い眼の緑の肌をした美少女が現れた。


「マークは、こっちの姿のが、怖くないと思うから、この姿でお願い。ご褒美を」

「おおおっ、オロチちゃんなの?女の子?それとも、化けたの?」

「化けた訳じゃないわ、もうひとつの姿では、あるけども、嫌い?」

「すごく可愛いよ」


 オロチちゃんは、優しく腕を俺の首に回し、身体を巻きつけるように、そう、濃厚に、抱き寄せるように、唇を重ねてきた。俺は、今までの少ない経験の中で、誰よりも優しく、誰よりも情熱的な、柔らかいキッスに感動さえ覚えた。


「すごーい。私もこんな風に、してもらいたい」


 四人も、俺と同じように、包み込むような優しいチューにくぎ付けになっている様子。


「オロチちゃん、ありがとう。痛い思いをさせてごめんよ」

「私だって、女の子だもん。これからも、優しくお願いします」

「女の子だったんだね。その姿には、いつでもなれるの」

「こちらがお好みならば、このままでも」


「オロチン、女の子は、いっぱいだから、大蛇の姿でいいのよ」

「そうね」

「キレイな皆がそういうなら、気持ち悪くないこっちの姿でとおそうかなぁ」

「ああっ、どちらでもいいさ。臨機応変にいこうよ」

「はい、青空様」

「えっ」

 

 四人がじっーと、こちらを見つめている。


「なんだか、オロチンにヤキモチ焼いちゃう」

「私も」

「私も」

「そうね、アンクレットに戻すわよ」


「待って、まだ、戻さないでいいんだよ。ドラゴンナイトも見てもらうから」

「マークの浮気者」

「オロチちゃんもファミリーでしょ」

「ファミリーになれたのね。嬉しい。このファミリーを守るわ」


 俺もプラムから渡されたガラガラのさきっちょを手にしながら、仲間の結束を感じていた。


「でも、ゴメンネ。尻尾の先は、何回も生え変わるのよ。時間が経てば、元に戻るわ」

「えっ、切り落としたんじゃなかったの?」

「うん、言うなれば、自ら切り離したって感じ。でも、無理やりは痛いわよ。丁度、生え変わりだったから」


 それを聞いたプラムが、


「このーっ、オロチン・バーっ」

「待って、プラム」


 慌てて、俺は、プラムにオロチバックを止めさせた。

 

「マーク、だってー」

「プラム、まだ、話が終わってないよ」

「ごめんなさい。オロチちゃんに、やきもち焼いちゃった」


 唯一の剣、小さな果物ナイフが切り落としたのではなくて、安心したので、オロチちゃんのチューの濃厚さが俺の唇に戻ってくるような感じがした。


「プラム、幻影の岬に連れて行ってくれ」

「うん、多分、島の反対側だと思う」

「じゃぁ、行こう。あと、庭に、プリメアを埋めて、水をやっておこう」

「わかったわ」


 プラムは、持ち帰った黒い塊を持って、外へと出ていった。

 マリー、ロコ、ルルは、オロチちゃんを見つめながら、ため息をついている。


「オロチちゃんって、もう、女の子の姿がメインなの?」

「その場その場で、変身することにするわ」

「へぇ~。そのキレイな赤い瞳は、ズルイわ」

「マリーの青い瞳のが、ズルイと思うけど」

「なによ、ルル。ルルの青い髪だって、ズルイわ」

「アンクレットに戻らなくても大丈夫なの?」

「どちらでも、良いみたい。女の子のカラダでは」


 オロチちゃんが大蛇の姿でないのならば、アンクレットに戻さなくても、他の人々に迷惑をかけることはないだろう。それはそれで、選択肢が広がって、良いことだ。


 気が付くと、そっと、俺の横に、ロコがすり寄ってきた。


「岬に、行きましょう。船で島の反対側へ」

「そうだね。夜が明けたら、行ってみよう」


プラムが、血相を変えて戻ってきた。


「あの石から・・・」

「なんだい?」

「芽が出たわ」


 窓から庭を望むと何もなかったところに草叢が出来ている。花も無く見るからに雑草の塊が、一部分にのみできている。俺達は、庭に降り立って、その草を見ることにした。


「プラム、この朝露ってクリスティーが言ってただろ、貰った小瓶に集めてごらんよ」

「そうか」


 プラムは、小瓶を取り出し、その葉先に滴る水滴を丁寧に集め始めた。小瓶に集められていくその雫は、見る見るうちに金色に輝く液体となって溜まっていく。この小瓶と反応しているのだろうか。


「万能薬になるって、言っていたわよね」

「たしか」


 プラムは、オロチに尻尾を見せるように言うと、その尻尾の先に一滴、小瓶の液体を滴らせた。すると見る見るオロチのガラガラが、元通りの五つになった。


「すごい、直ぐにもとに戻った」

「治りが早いってことかな」

「なんにでも、使えるのかしら」


 不思議な植物と多分この小瓶にしかない作用で、この雫が生まれることのようだ。プラムは、再度、小瓶を満たすように雫を集め始めた。


「プラム、一杯になったかい。このプリメアをこの庭で育ててもらおうね」

「うん、そうね。そうしてもらうわ」

「じゃぁ、岬に行ってみようよ」

「そう簡単には、いかないわ。島の反対側だもの」


 そう言うと、プラムは、ダハスの長の館に駆け込んでいった。何か許しが必要なのかも知れない。俺達は、一度、自分たちの部屋へと戻ることにした。

 暫くすると、プラムが戻ってきた。


「この島の地図と岬に行くことを伝えて来たわ」

「岬には、普通は行かないんだね」

「そうなのよ、反対側は、昔から、踏み入れてはいけない土地と言われていて」


「それならば、最小人数で行ってくるよ。俺とロコ、そして、オロチちゃんだね」

「ええっ~。私は」

「ロコと二人っきり?」

「オロチちゃんもいるよ。ロコには船を操ってもらうのと、笛の幻影が必要だ」

「マークと二人っきりって、初めてで嬉しい」

「それに恐らく、この土地のプラムは、この仕事は、抵抗がありそうだし、ルルの金属、マリーの魔法にも頼らなくてもよさそうだ」

「頼って欲しいのにぃ~」

「ねぇ~っ」

「ルルは、マークとゲトレで二人っきりだったでしょ。今度は、私の番だもん」


 ロコは、いつになく機嫌がいい感じだ。オロチちゃんも俺に擦り寄るように密着している。


「オロチン、ロコがマークに色仕掛けしないように、見張っておくのよ」

「でも、オロチちゃんも・・・」

「マークを守るわね。すべての危険から」

「オロチちゃん、大蛇に変身しないで、女の子の姿でいいから、お願いする時は、言うから」

「仰せのままに」

「ロコ、この地図が示す岬に、船を回してくれ」

「マーク。愛、愛、さーです」

「ロコ!」


 マリーとルルが目を三角にしてこちらを見ているが、出発することにしよう。


「待って、この髪の毛を」


 マリーは、髪の毛を一本抜き、俺の巾着の紐に結びつけた。それを見ていたルルとプラムも同じように髪一本を結わいつけた。遅れるまいとロコも短い髪を紐に結び、オロチちゃんまで、同じ振る舞いをした。


「ブルスカ・ショック~」


 マリーが唱えた。


「この念で、マークの状態が分かるようにしたわ」

「分かるって?」

「マークのことを念じると、状況が幻影の如く見えるはず」

「マリー、マリーだけ?」

「私だけの髪で、よかったんだけど」

「ということは、私たちも見えるのね」

「マリー!流石」

「監視されるってことだね。俺は」

「大丈夫よ、見られるだけだもん。見せつけちゃうも~ん」

「ロコ!」

「危険になったら、何とかしてくれるってことなら、頼むよ。しっかり、みんなで見ていてくれ」

 

 ダハスに残る三人は、違った意味で団結したようだ。三人が何を危険と判断とする基準はともかく、この岬への試みを全員で臨むことは、良いことに違いない。はずだ。



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