腿の目盛りは、怪我の功名
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「混ぜご飯、混ぜご飯」
「茶飯って、良い響きよねぇ」
「女神様ぁ~」
「おかずは、残り物の唐茄子だけなの?」
「栗カボチャ、いいじゃないよ、もう、食事の時間から外れているもの、しかたないわよねぇ」
「しかたないのです、ハタンは、もう、プラムおねえたまのご飯で、お腹いっぱいですよ」
いきなりの呼び出しにも、幾何かも動じることもなく、我が家の女神二人は、プラムの手料理に夢中である。
そんなに気に入っているならば、プラムにお店でも出してやって欲しいくらいである。最近では、ロコのご飯よりも、プラムのご飯に夢中の理由は、ロコの手料理を口にする機会が、少なくなっていることが一番の理由じゃないのかしら。
「女神様、ご飯なら、ご希望の献立を明日ご用意しますので、マーク達が消えちゃったことの審議を」
「消えちゃった?」
「はい、例の如く、髪の毛の念通信のライブ映像を観ていたのですが、急に映像が砂嵐になって・・・」
「ハタンがチョップしても、ゴーゴー砂嵐さんのままです」
「急に、映像が途切れたので、プラム姉さまも心配して」
「あらっ、ネクターだって」
「ボタンだって、心配してまーす」
二人の女神は、ご飯の途中ではあるものの、指を顎に当てて、頭を左に傾げながら、ゆっくりとした面持ちで、口を開いた。
「美味しいですわ」
「このお醤油の加減が、絶妙の一品ですわよねぇ、茶飯だけでも、十分お店を出せるわよ」
「めがみさまっ!」
「あらあらっ、そんなに、目を三角にしなくても、わかっているわよ」
「心配ないわよねぇ~」
「でも・・・」
アルカティーナが、かわいそうなプラムの要望に応えるかのように、金のメダルを口に銜えて吹いて見せた。あたりを慣れ親しんだモヤモヤが立ち込めるも、何も見えてこない。
「あらっ、おかしいわね。みんなに見せようとしたからかしら、私だけ用のメダルだからかしら?」
もう一回、アルカティーナは、自分だけ用の本来の使い道としてメダルを口に吹いてみる。すつと、アルカティーナの頭の上のモヤモヤの中から、金と青のアケビと艶やかな光沢のある布切れが、舞っていた。
「ああっ、お楽しみ中ね」
「何ですの?見えましたか?」
「そうね、金と青のアケビちゃんが・・・、それと、おそらく、私たちと同じ現在進行形にいないわね」
「ティーナ、どういうこと」
「多分、過去か、未来か、とにかく、同じ進行形にいないのよ、だから、一度目のメダルも、みんなの髪の毛通信も途切れちゃったのよ」
「なるほど、でも、ティーナ様だけ用のメダルでは、見えたんですよね」
「そうよ、エッチぃな光景の予測でしかないけれど」
アルカティーナの説明に、みんなが、納得のいかない表情を浮かべていると、勝手口の戸がドンドンと叩かれる音が、響いてきた。
「こんばんは、寝しなに、どうかしらと思って、葛湯を作ったんだけど、いかが?」
「葛湯、いいじゃないの、身体が温まりそうよね、リンランリン姉妹のお手製?」
「名前を混ぜないでくださいな。昼間、オロチちゃんに山の葛の根を掘り出して頂きまして」
「あっ、リンラン、もうできたの、澱粉糊」
「糊は流石に、葛湯ですよ、明日は、葛餅をこしらえてあげますわよ」
「わーい、プラムより、わかってるぅ~」
「オロチちゃん、聞き捨てならない言葉ですわよ」
「だって、プラムったら、ロコに張り合って、私たちの好みのものは、こしらえてくれないじゃないよ」
「そういえば、あなた達、ゲトレってところの岸壁彫刻に見覚えないかしら?」
「女神様、ありませんねぇ、しいていうならば、夢の中で、金鉱脈の端から葡萄を手にした女神の彫刻は、見たことがありますけれど」
「リンランも?私も、金鉱脈のところで、彫刻の夢をみたことがあるわ」
「本当?それは、ありがとう。あなた達の夢占いは、きっと、良い成果をもたらしてくれるわ」
「いい情報ですか?クリス様」
「そうね、金鉱脈と女神の彫刻、重要な手掛かりになると思うわよ」
「早く、マーク達に伝えましょうよ」
「金、金鉱脈ってのが、引っかかるわよねぇ」
「金だけじゃないわよ、時代が一番大事なことよ」
「それが、問題よ、前の時と同じよ、時代の特定が必要なのよ」
「時代の特定?私がマークの所に行ってきますわ」
オロチちゃんは、隠しておいた肩甲骨の翼を迫り出して、パタパタとその身体を浮かせながら天井辺りを回り始めた。
「オロチちゃん、マークは、現在進行形にいないのよ」
「うん、聞いていたわ、でも、この腿の刺青の目盛りに呼ばれれば、おそばに行けるはず」
言われてみんなが注目するオロチちゃんの腿の付け根には、小指くらいの長さのブルーの筋が存在していた。
これは、マークと合体してペテン師の一撃を食らった傷跡、オロチちゃんに残される合体の証のようなものであるが、オロチちゃんは気づいていたらしいが、マークの果物ナイフの背に刻まれた目盛りの写しであるらしいのだ。
オロチちゃんには、時間軸の目盛りの刺青、そうそう、俺には、俺にもあの後、お尻の残ったものがある。鍬が刺さった所に拳大のアザだ。まだ使い道に俺は、気が付いていないけれど、ペテン師の鍬の刃が刺さった傷跡が、二人に何かを刻み込んだことになるらしいね。
オロチちゃんは、指輪の石を腿の刺青に当てながら、現在を現す羽の生えた蛇の言葉を口にした。
エ・ヌ・ジ・ア・イ・ブ・ル・ス・カ
加えて、アンクレットには、マークへの想いを注入させていく。
オロチちゃんの身体が、足元から徐々に消えかかっていく。いつものように、吸い込まれたり、素早く消え去ったりしないで、極々静かに、消えていく。
「オロチちゃん、なにか分かったら、教えてね。念で」
「これ、もっていこっと、できたての葛湯だもん」
オロチちゃんが、葛湯を片手に、パチリとウインクをするのが、確認できたか、出来ないかで、その姿は、我が家の広間から煙の様に消え去ってしまった。
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