再び現場へ
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小さな山小屋にしか外見は見えないのであるが、中には、何百という金髪働きバチ娘が、待機要員として、収容されている不思議の館。
ここは、四方をこのゲトレの山に囲まれていて、まるで、山の中に作られた箱庭のようにも思える。取り囲む山肌には、賭博場の入り口同様に、岸壁彫刻が施されていて、その威圧感は、半端なく、少し恐怖すら感じる。
古代文明の遺跡を彷彿とさせる光景の中心に裸の女神のような彫刻がじっと小屋を見つめている。全裸の美しき女性が、葡萄を持ち、葡萄の蔓をその身体に巻きつけている姿。守り神なのか、支配者なのか、見る限り、その彫刻の意味までは、読み解くことはできない。
「おう、偉そうな女たちが、帰れなくなったとギャーギャー騒いでいるな」
「なんでも、洞窟の水の様に歪む例の鏡の調子が良くないらしいな」
「調子ねぇ」
「ただの鏡なんだとよ、入り込んだり、出て来たり、出来ないらしい」
「そうすると、入荷はどうなるんだ?」
「暫く、入ってこなくなるんだろうな」
「それじゃ、困るじゃないか」
「まだまだ、在庫があるじゃないか、それに、入ってこなくなれば、価値が跳ね上がるだろ」
「この在庫を捌いて、俺達は、止めても損はないさ」
「なるほど、貴様、頭がいいな」
館を管理している屈強な男どもが、収容施設に全員おさめて、仕事がない現在を噂話を肴に一杯しながら、休憩している。
休憩するには、日がカンカンの真昼間なのだけれど。
不思議の館には、カルボーアから女王の命を受けて働きバチ金髪娘を連行してきた兵隊バチ金髪も残されている。彼女たちは、収容部屋ではなく、カルボーアと行き来するための休憩所にいた。
兵隊バチ金髪は、総勢五人、行き場を無くして、どうしてよいものか、思案しているといったところだろうか。
「鏡が反応しなくなったのは、どうしてかしら?」
「このままでは、カルボーアに戻れないわね」
「作動させる呪文が間違っているのでは?」
「何度も此処へきているのよ、間違えるはずもないわ」
「こんなゲトレは、長居する所じゃないわよね」
「このまま、戻れなくなったら・・・」
「魔法で何とかできないものかしら?」
「私たちの魔法は、あの鏡には、効かないわよ、赤い髪系統の血筋じゃなくちゃ」
「同じ親子、同じ姉妹なのに、不公平よね」
「そうだけど、同じ姉妹なのに、売り飛ばされる者たちもいるんだからねぇ」
「私たちも、売り飛ばされないわよね」
「ここの男どもくらいは、魔法が使える私たちの敵じゃないわよ」
「魔法は、無効化されてないわよね?」
独りの兵隊バチ金髪がパチンと指を鳴らす。
テーブルに置かれたティーポットがスーっと浮き上がると、五つのティーカップに次から次へと紅茶が注がれていく。
彼女たちの魔法は、無効化されてはいない。
しかしながら、鏡の力が無くては、カルボーアには、戻れない。
ここにいても、この休憩室以外にいる場所もないのである。鏡の調子がおかしくなってから、いかにカルボーアに戻るのか、紅茶を飲みながら毎日語り合っているのである。この山から出れる訳でもなく、賭博場の存在も知らない五人には、実際上、何もできない身の上を忘れるためにおしゃべりするしか術がないのであった。
「オロチちゃん、お家は変わりないかい?お向かいさんも変わりない?」
「ええ、大丈夫よ、ハタンちゃんが、リンランから魔法を教わって上達するって、意気込んでいるわよ」
「オミヤの催促があったよ、ハタンから、何しようかな?オミヤ」
「おしゃべりはそのくらいにして、どうやって賭博場に行きましょうか?」
「だって、みんなは、一回言っているんでしょ、指輪でも行けるじゃないの」
「そうか、オロチちゃん、冴えてるぅ~」
「そうだけど、いきなり飛び込んで、いけないじゃないか、敵の真っ只中にさ」
「そうか」
「まぁ、でも、オロチちゃんのヒントは、逃げる時に大いに生かせるよ、危ない時は、直ぐにテレポで移動しよう」
「了解よ、オロチちゃんに気付かされたわね」
「役に立てたなら、嬉しいわ、必要な時は、呼んでね、待っているから」
港に大きな船が何隻も泊っていた。
こんな小さな町には、似つかない感じだ。恐らく、大きな取引があると考えるのが妥当だろう。大人数が、このゲトレから連れ出される前に救い出さないといけないわけで、どの位の時間の猶予があるのか分からないことが、もどかしい。
ロコに頼んで、チューちゃんに斥候を頼むことと、カモメに空からの偵察をしてもらえるようにお願いする。
それを受けて、ロコは、扉を開けて、外へと出ていった。
マリーが化粧筆を出して、掌で弄んでいるのが目についたので、魔法の発動を控えるように注意をしておいた。
前回は、マリーの先走りで俺は、女の子にさせられたわけで、今回は、マリーの思い付きショックは、作戦を立てる上で、想定外にしておきたかったのだ。
マリーのご機嫌が斜めになっていくのが、見て取れるけれど、ルルと侵入計画を進めることにしよう。チューちゃんを送り出し、カモメにも依頼し終えたロコも戻ってきたので、検討を続けると、四方を岸壁彫刻に囲まれるとするならば、山の奥の方とのことで、いかに山へ潜入するかということに行きついた。
ふと思いついたのが、山の中に入るのならば、俺達が山から脱出した穴、ルルの言うところのブルーキッスの現場から遡るように戻っていけば、俺達が繋がれていた独房のような所までは、辿り着けるだろう。
「ルル、あの囚われていた部屋から逃げてきた穴を逆さまに辿って、山の坑道に入り込むっていうのは、どうだろう」
「あの狭くて、窮屈な穴?今度は、マークが先に進んでくれるなら・・・」
「入り江の先の方なんでしょ、お船が流れちゃった所でしょ」
「じゃあ、もう一回私が、津波を起こせばいいのね」
「マリー、魔法は、今回は、勝手に使っちゃダメだからねっ」
「私ばっかり、つまんなーい」
「よし、チューちゃんを呼び戻しておいで、俺とルルが崖を降りた場所へ、テレポしよう」
「お船でいかないの?」
「船をつけるよりも早いからさ」
ロコが、表からチューちゃんを呼び戻してきた。それほど、遠くまで行っていなかったようである。
準備が出来た様なので、四人で手を繋いで輪になると、俺は、指輪の石を摘まんで、念を投じながら、いつもの羽の生えた蛇の言葉を口にする。
エ・ヌ・ジ・ア・イ・ブ・ル・ス・カ
ルルの首から掛けた紋章が黄緑色の蛍光を発しながら、俺達四人を飲み込んでいく。
紋章があるときは、紋章が優先されるのだろう。強烈な吸引に誘われるように、スパンっと、四人を吸い取った紋章が、ルルの家の床にメビウスの輪を描きながら回転している。
一瞬の後、ルルの首からの革ひもに呼び戻されるように、紋章もその姿を消していった。
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