リンリンリン
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「リンリンリン、応答ねがいます」
「リンリンリン、応答ねがいます」
「リンリンリンって、口で言う意味が、あるのかしら?」
我が家の寝室、まだ、布団に包まれたファミリーを目覚ましの呼び鈴が、鳴っている?
ルルの枕元に置いてある魔法陣メダル、羽の生えたヘビの紋章のメダルが、黄緑色の点滅をともなって、リンリンリンっと、しゃべっている。しゃべっている?
「呼びかけは、リンリンリンって口でいう約束だもの」
「でも、ちょっと恥ずかしいわよね」
「かなり恥ずかしいわよ、でも、大丈夫、私たち以外は、見ていないもの」
「寝ているのかしら?時差があるのかしら?」
「リンリンリン、応答ねがいます」
紋章のメダルから呼びかけているのは、紋章に結ばれた金髪の持ち主であるネーブル、カボス、スダチに他ならない。
ファミリーの証アンクレットを渡していない代わりに、通信用に三人の金髪を一本ずつメダルに結び付けて、いつでも連絡し合えるようにしておいたのである。
であるのだが、時差は、このゲリアとカルボーアで大きな差はないのであるが、我が家は、昨晩リンランとランリンを講師とした魔法勉強会を朝方までしていたので、まだまだ、寝て間もないこともあり、全員の瞼が開きたがっていない。
勉強会といっても、マリーとネクター、ボタンにハタンの四人の魔法使いが手ほどきされているところを俺を筆頭とした魔法の使えない者は、見ているように言われて、先に寝ることを許してもらえなかっただけなんだけれど。
「ううっ~ん、リンリンリンって、鈴じゃなくて、声がしているわよ」
「うるさいわねぇ、もう少し寝かせておいてよ」
「朝ごはんの当番じゃないもの、出来たら起こして頂戴」
リンリンリンと通信の枕詞を約束通り口にした三人が、窓も開けていない我が家の寝間に現れて、俺の肩を揺すり始める。
「マーク、マーク、起きてよ、マーク」
「ううっ~ん、今寝たばかりだよ、まだ、起きたくないんだよ」
「寝ぼけないでよ、マーク、相談があるのよ」
「後にしておくれよ、朝は、昨日の残りご飯で、焼きおにぎりにしてね、お醤油ちゃんと塗ってね」
「マークは、まだ夢の中よ」
「それにしても、みんな良く寝ているわね、寝巻も乱れまくりね」
「お家で全員、一緒に寝ているって本当なのね」
「マーク、マーク」
寝間への侵入者、正確には、通信の幻影だけの侵入者に気が付いたのは、部屋の隅にいたチューちゃんであった。チューちゃんは、ロコに知らせようと、ロコの脚元に寝ているコンコンの尻尾に噛みついた。
「コン!コン!」
コンコンが鼓を打つような鳴き声を発しながら、目の前の足にかぶり付いた。
「痛っ」
夢にしては、かなり現実的な痛みが、俺の足の指に走った。いきなり夢から引き戻された俺の目には、足先に銀色の襟巻が、食らいついている。
「コンコンじゃないか、痛いじゃないか、寝ぼけて、俺の足を食らっているのかい」
「あっ、マークが、起きてくれた」
「起きてくれたわけじゃないよ、足の指がちぎれそうだったから、あれっ、ネーブルじゃないか、まだ夢の中かしら?」
「マーク、通信中よ、応答願いま~す」
「通信?これって、本当なの?」
「何騒いでいるのよ、昨日も歯が立たなくて絞られて、クタクタよ、もう少し寝かせて」
「マーク、もうすぐお昼よ、通信応答おねがいよ」
「ああっ、分かったよ、応答するよって、もう、通信しているじゃないか」
カルボーアの現女王と女王補佐の三人、そう、堅苦しくなく言って、ネーブル、カボス、スダチの三人によると、旧女王側の兵隊バチの残党からゲトレにおける龍の花の収容所なるものの情報を手に入れたらしく、俺達が鏡を破壊したことで、今回の出荷は食い止めたのだが、以前の者たちが、市場に出る前段階として、まだまだ大勢収容所に残されているとのことだった。過去の世界ではなく、現在のゲトレにこのカルボーアの同胞がいると知った三人が、なんとかして救いだしたいと考えることは、当たり前のことだろう。女王と女王補佐だもんね。
「大体、分かったけれど、ゲトレのどこら辺だかわかるのかい?」
「岸壁城郭に囲まれた小屋のような所らしいのだけれども」
「岸壁城郭って、カルボーアの?」
「違うわよ、ゲトレの岸壁城郭のことよ、オロチちゃん」
「ゲトレって所に、同じのがあるの?」
「似ているのがあるのよ、マークが私のサファイヤブルーにチューした所よ」
「マーク!」
「マーク~」
「ルルっ、関係のないことは、説明に入れなくていいんだからね、マリーとロコが誤解するでしょ」
「誤解?私も見ていたわ、そのチューっていうのか、ルルがマークのお顔の上に座っていたもの、裸で」
「プラムも、チューの説明は、今、いらないでしょ、大事なのは、岸壁城郭のことでしょ」
「でも、岸壁城郭に囲まれた所?片側だけじゃないとすると、海側じゃなくて、内陸側よね、私たちがまだ見ていない、ゲトレの所」
「そうね、山の更に奥側?私は、ゲトレに住んでいたけれど、知らないわ、普通の人は、あの賭博場に近づかないもの」
「ルルのお家は、町にあるんだよね、いまでも」
「うん、粗末なところよ、鍛冶の作業場だけどね」
「じゃぁ、ゲトレに行ってみるかい、新女王たちに頼まれちゃ、行かない訳にもいかないよね」
「お出掛け」
「お出掛けするの」
「じゃぁ、すぐにお船の用意をするわね」
「いや、今回は、行ったことのあるゲトレだから、指輪のドラゴンナイトの転送移動でいいでしょ」
「ロコ残念ね、今度は、お留守番よ」
「えっ、マリーのイジワル、どうして、お留守番なのよ、マリーがお留守番でしょ」
「私たちも、いくわよ」
「ネーブルたちは、仕事があるだろ、そうそう出歩けないでしょ」
「でも~っ」
「私が行ってくるから、カボスとスダチは、国をお願いよ」
「イヤーン、スーチンもいく~っ、カーチンがお留守番よね」
「どうしてよ、スーチンでしょ」
「まぁまぁ、三人は、カルボーアで待っていておくれよ」
「マークがそう言うなら、待機して、情報を伝えることにするわね」
ということで、急遽ゲトレへ、龍の花救出作戦を決行することになった。
旅行にいくわけじゃないから全員でと言う訳にもいかないだろう。今回も先発部隊と待機組に分かれることになるだろうけど、髪の毛念通信で逐一状況を把握できて、あたかも一緒にいるのと同じなんだから、本当は、現場組と在宅組で揉めることじゃないと思うんだけれども、やっぱり、リアルが一番ということなんだろうね。
「今回は、私が先発組なんだからね」
「今回はって、マリーは、お留守番組でしょ」
「いやよ」
「今回は、この前のカルボーアよりも連携が必要だよ、単なるお留守番じゃないからさ」
「マーク、そんなこと言っても、一緒に行きたいもの」
「遊びじゃないんだよ、大勢の龍の花をどうやって、救い出して、連れて帰るかだよね」
今回の人選は、そんなに迷うことは、本当はない。地元のルルは、確定で、魔法使いの必要性からマリー、お船で出向かわないことになっても、救出後の移動等を考えるとお船は、重要となるので、ロコ。
俺は、お留守番組でもいんだけれど、現カルボーア女王と女王補佐から依頼された手前、行かない訳にもいかないだろう。この四人で今回の旅は、決行とする。
今回もプラムとネクター、ボタン、ハタンは、お留守番組だ。三桃娘だけでなく、よくよく名前をみれば、プラムを含めて四桃娘じゃんか、桃ちゃんは、お留守番ということになる。
冗談でなく、冷静なプラムには、龍の園一家のお目付け役をしてもらわないといけないのが、待機組の本当の理由ですけれどね。
だから、前回大活躍だったオロチちゃんは、プラムたちを守るためにも、お留守番役になってもらった。
今回も、かんかんがくがくの話し合いを経て、俺の決定事項に我慢してもらえるようになりました。
では、支度を済ませて、ゲトレに向かってみましょうかね。ゲトレは、丸一日しか滞在していない所だけに、俺も、ちょっぴり、今回、遠足気分になっちゃいますけれど、救出という依頼任務が主なのを忘れては、いけませんな。
しっかりしますわね。
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