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ヘビイチゴ

今日もご覧いただき、ありがとうございます


「これで美味しい白桃が、季節を問わずに食べられるのね」


 ネクター、ボタン、ハタンの三桃娘が、我が家の前にそびえ立つ禁断の果実の樹木を見上げて、美しい産毛の生えた白桃の皮を剥きながら、舌鼓を打っている。


 ロコによって、お宝の木片より我が家の庭へと挿し木された樹木は、瞬く間に大きな木となって、このゲリア村の大地に根を生やしたのだった。ロコの木片には、元の樹木が収納されているのだから、まだまだ、別の所へも挿し木することも可能ってことになる。


 素晴らしいことである。


「マークは、この樹木からエッチな果実を収穫するんだもんね」

「ロコ、そんなことはないよ、ほら、俺も白桃を食べているだろ」


「あらっ、あのカラフルなモコモコな果実は、望んだ時だけなのね、エッチぃ」

「カラフルって?」


「ハタン、気にしないでいいんだよ」

「マーク、私にも、その噂のモコモコをたべさせてよ~」


 この禁断の果実については、ロコの言う通りで、望むものを収穫できることを学んだのだ。綺麗な心持で、望めば、さまざまな物を与えてくれる正に魔法の樹木と言うことになるだろう。

 あともう一つは、この樹木を木材として作り出される物への効果を検証したいのであるが、やみくもに加工することより、研究が必要となるだろう。

 我が家からは、三桃娘ちゃんと、お向かいさんのリンランとランリンに調査研究を担当してもらおうと話し合ったばかりである。自らの故郷の産物としての選考なのだが、我が家の三桃娘は、素材研究よりも食べることの研究に没頭しているようである。


 これでは、我が村の剣術指南役であるリンランとランリンが主となって、調べてもらうことになるんだろうなぁ。


「マーク、この樹木は、柔らかいのに、カチカチで、堅い割には、加工がし易い、物作りには、うってつけの木材といえるわね」

「リンランは、剣術だけじゃなくても、手先も器用なんだね」


「うん、意外と、いろいろ作れるわよ、ランリンと違って」

「ひどーい、でも、私は、工作とか無理かも、折り紙も折れないもの」


「そうなんだ、じゃぁ、やっぱり、食べるの専門かな」

「えへへっ、南京豆だけじゃなくて、胡桃も出しちゃった、美味しいわよ、私は、発想の提供係かも」


「いいね、胡桃、俺にも頂戴よ、胡桃って、脳みその形に似ていると思わない?なんだか頭が良くなりそうでいいよね」

「マークは、南京豆の食べ過ぎで、エッチになっちゃったから、胡桃を食べて、おりこうさんになりたいのよね」


「プラム、それは、引っかかる言い方だね」

「だって、いつだって、グリーンだけをないがしろにするからよ」


「そんなことないでしょ」

「じゃぁ、今度は、お留守番させないでね」


「あっ、マーク、私も今度は、お供したいですわ」

「おねえたま、だけじゃありませんことよ」

「ハタンは、お留守番よ」

「ボタンのイジワルぅ~」


 今は、特段にお留守番もなにもないだろう。だから、今度も次もいまは、ないんだけどねぇ。

 それに、ファミリーのアンクレットと女神の指輪があるんだから、今まで行ったことがある所へは、自由に行き来できる。まぁ、まだ行ったことのない所とか、お船でのお散歩の事を言っているのだろうが、お船に乗るには、ロコは欠かせないから、人選でまた揉めそうだよね。

 

 結局は、全員でお出掛けすればいいってことが、揉めることのない結論だよね。


「マーク、はい、胡桃を剥いてあげたわ、あーんして」

「あーん」


「あっ、指まで、舐めちゃ擽ったいでしょ~」

「リンランの指だったの?美味しくて食べちゃいそうだったよ」


「マーク!」


 俺の名前が何重にも重なって聞こえる。


 いいじゃないですかねぇ、お向かいさんと仲良ししないといけないんだから。


「それはそうと、今日の夕飯の献立は何かしら?」

「今日は、私が当番なのよ、里芋の煮っころがしと雉のつくねに、玉葱のおみおつけよ」


「おおっ、リンランが当番なの、いいですねぇ、美味しそうだねぇ」


 村は、二軒しかないということで、食事やお風呂などは、一緒にしようということになったのだ。


 なんだか寄宿舎生活のような、それはそれで楽しい村での生活が始まっている。意外にも、お向かいさんは、何でもそつなくこなす優等生だったのだ。

 元女王、元次期女王で自らの手で何もしていなかったと思っていたのだが、なかなかどうして、ファミリーが嫉妬してしまうほどに何でも出来る子ちゃんだったのだ。流石に、素養が備わっているものなのだと感心してしまう。

 これなら、我がファミリーも刺激を受けて成長できそうだ。魔法も、どんどん学んでいかせてもらおうと思っている。腕前については、我が家の女神様級の魔法使いの三人だってことを忘れてしまうくらいに、今では、俺達に馴染んでいるけれどね。


「リンラン、どうして、マークが好きそうな献立を思いつけるの?」

「毎日の食事から観察したりで、マークの好みは、伺えるわよ」


「流石ねぇ、プラム、ロコだけじゃなくて、リンランとランリンにも、マークの胃袋をとられちゃうわよ」

「オロチちゃん。怖いこといわないで、頑張って料理の腕をみがくわ」


「プラムはいいわよねぇ。磨く腕があって、マリー、私たちの当番日は、申し訳ないわよね」

「ルル、考えないようにしましょ、別の事で、マークの心を射止めるのよ」


「そうよ、私なんか、この身体で射止めたんだから」

「オロチちゃんは、合体か、お料理当番を外されて、調達専門だもんね」


「それは、それで、傷つくんだけど・・・」

「いいんだよ、オロチちゃんは、それこそ、調達って、みんなが不得意なことをしてくれているんだから」


「マーク、ありがとう」

「俺こそ、何にもしていないから、申し訳ないよ、それこそ、食べるだけ専門」


「マークは、村長なんだし、いいのよ」

「そうね、マークは、エッチなんだから、お料理なんていのよ」


「エッチだからねぇ~」

「納得」

「なっとく」


 みんなが、納得して頷いているのは、何だか馬鹿にされているように思えるのは、俺だけなのかしら?まぁ、いいだろう。みんなが打ち解けて仲良くなってくれたことが一番である。三桃娘も処刑された遺恨やわだかまりもすっかりと消してくれていい子であることこの上ない。

 お向かいさんの支配者だった記憶は、綺麗に消えている。二人の女神が、記憶を取り戻した様に、ペテン師の笛の効果がきれる時がくるのか分からないが、今は、その気配はまるでない。


 美味しく夕食を頂いた後、食べるの専門の俺は、らしくなく、申し訳なさから珍しく台所で洗い物をしている。

 ここから見る広間は、本当に寄宿舎の食堂の様に賑わって映る。お膳を片付けている者や食後の水菓子に夢中になっている者など各々が寛いでいるのが、微笑ましく俺には見えている。


 絵に描いたような一家団欒の光景だ。


「いいのよ、マーク、洗い物も当番のうちですのよ」

「まぁ、いいじゃないかい、邪魔はしないようにするから、俺は、食べる専門だけだし」


 台所には、リンランとランリンが、残された洗い物を手にやって来る。シトロンは、竈の後始末を済ませた後、お風呂の準備に向かっていった。

 ファミリーでは、オロチちゃんだけが俺と同じく調達専門のみの身の上を気にして、俺が洗ったものを手際よく、布巾で拭いている。


「マーク、私たちは、毎日洗い物係をしましょうね」

「オロチちゃんは、いいのよ、調達係ってちゃんと大事な役目があるでしょ、俺だけで」


「いいから、いいから、こうやってマークとおしゃべりできる時間がこっそり持てるもん」

「それは、あるかもね」


「あっ、リンラン、聞こえちゃったの?」

「じゃぁ、私も、洗い物おしゃべり係に加えてね」


「よいしょっと、ショックっ~」


 いきなりのリンランの一言で、桶の水が毬の様に飛び上がり、洗い終わっていない食器を包みながら、綺麗にしていく。


 驚きの光景を目にした俺とオロチちゃんは、魔法の実用的な使い方を初めて実感してしまった。


 これじゃ、俺は、いち早くお役御免になっちゃいそうであるんだけれども。


「素晴らしいね、魔法って、生活に本当に役立つんだね」

「あら、そうかしら?そう言ってもらえると嬉しくて、張り切っちゃうわ」


「では、わたしも、ショックっ~」


 ランリンも横から、大きくもなく、小さくもなく、普通の話し言葉の口調で、唱える。


 すると、リンランの水の毬の中から洗い物が、飛び出してきて、それに風がうまい具合に当たって、水気を吹き飛ばしていく。


 俺と同じく、これをやられると、オロチちゃんもお役御免が確定しそうである。


 勿論、家の連中が当番の時は、お役にありつくことができるだろうさ。我が家の四人の魔法使いは、こんな芸当を見せてはくれないし、しようとする発想も思いつきそうにない。


 失礼だったかしら。


 まぁねぇ、餅は餅屋で、パンツならマリー、三桃ちゃんなら南京豆。あと、そういえば、三桃ちゃんの魔法ってみたことないかもなぁ、言葉を操ること以外はね。


「あらっ、なんだか楽しそうね、台所は」

「なんだ、マリーか、リンランとランリンのさりげなくお役立ちの魔法を見せてもらっているんだよ」


「私の羽も綺麗にしてくれた腕前は、流石よねぇ、剣術だけじゃなくて、魔法の指南役にもなってもらったらいいのに」

「私を差し置いて、それは、どうかしら?」


「マリー、マホーのレベルというか、種類が違うんだよ、きっと」

「まぁ、マーク、失礼ね、じゃぁ、これはどうよ」


「ブルスカ・ショックっ~」


 マリーは、リンランのお尻目掛けて、化粧筆を向けて、聴き慣れた、我が家のブルスカ付きの言葉を発すると、リンランの裾が捲り上がり、眩しいくらい白い白桃のようなお尻から、眩しいくらい真っ赤なパンツが、抜き取られていく。


「あっ、イヤっ~ん」


 マリーの手には、リンランの大人びたレースの飾りがオシャレなパンツが、載っかっている。

 何処までも、マリーは、パンツ専門を自負しているのだろう。今度は、掌のパンツに化粧筆を振り下ろして、再度、お決まりの言葉を囁いている。


「ブルスカ・ショックっ~」


 掌のリンランのパンツが、七つのマリーが履いていたようなイチゴパンツに変身したかと思うと、マリーの手を離れて、先程の反対の工程を辿るように、リンランの足元から、プリンプリンの真っ白なお尻へと戻っていき、ピタッと装着された。


 マリーさん、これは、一度、脱がさないとできないものなのでしょうか、履いたままのパンツを変身させればいいのでは。まぁ、ドキドキするような目の保養タイムの演出ではあるのだけどさ。


「もう、マリー、イタズラしないでよ」

「かわいいパンツに変えてあげたのよ、大人より、少女趣味なのよ、マークは」


「そうなの、わかったわ、これから、オシャレよりもカワイイものを身に付けるわ、マリーありがとう」


 俺のせいなの?


 マリーありがとうって、リンランも普通じゃないのかなぁ。


 まぁ、この家に溶け込めるんだから、普通じゃないっていったら、普通じゃないんだろうね。


「マーク、リンランも、馴染んできているのね、でも、お尻だったから、パールレッドは、拝めなかったでしょ、残念よねぇ~、マークは」

「みてないよ、そうそう、見えなかったもんね」


「何が見えなかったの?パールレッドって何なの?」

「リンランは、気にすることないさ」


「意地悪ねっ」

「そうそう、イチゴパンツで思いだしたよ、オロチちゃん、向こうで、イチゴでも食べようかね」


「うん、ヘビイチゴ?」


 ヘビイチゴって、リンランのさきっちょのことかしらって、直ぐに連想できちゃう俺も、やっぱり普通じゃないのかしら?


 ところで、オロチちゃん、ヘビイチゴってお口に入れては、いけなかったんじゃなかったっけ。



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