新しい家族
入り江をかき回した大波も既に今は、以前のように穏やかになっている。心地よい揺らぎが眠気を誘ってきている。囚われの身と天災の危機を脱したルルと美女集団は、安心した為か、各々が現在の自分自身の置かれている状況を確認して、安堵の気分を理解しようとしているようだった。
「私たちは、また、売り飛ばされちゃうのかしら?」
「マーク。この船は?」
「みんな、もう大丈夫だよ。この船は、俺の船だ。俺の家なんだよ」
「マークの?」
「ざわ、ざわ・・・・・・ざわ、ざわ」
「みんな疲れただろう、ゆっくり休むといいよ」
「本当なの?本当に、マークの船なの?」
「俺一人の船じゃないけどさ。俺の家ってのは、本当。ルル。そこの樽から、水を一杯くれないか」
「お水?」
「食べ物もあるから、みんなもどうぞ」
美女軍団も不安感よりも、乾きと空腹には、勝てない様子で、ひとまず俺を信用することにしたらしい。それに、そこの、ここのと、俺が言うところに 物々があるので、知らない船ではないことがわかったらしい。
甲板上は、ちょっとしたパーティー状態である。美女二十人と俺一人、正にハーレム状態のような気持になって、自然と顔が綻んでしまう。それも、みんな身体を覆うために、最小限の布切れを付けただけで、特殊な会員制のクラブハウスにでもいるみたいで、どこ見ても、嬉しくなってしまう。
「よいしょ、よいしょ」
縄梯子の軋む音と黄色い元気な掛け声らしい声が近づいてくる。
「マーク!無事だったのね」
「ええっ、マークが戻っているの?本当?」
船に、ロコ、マリーの順で乗り込んできた。いささか、マリーは、元気がなく、しょ気ぎみである。
「マーク。良かったよ。大丈夫だった?」
「そうなんだよ。なんとかね」
「やっぱり、男の子に戻っているわね。見て、私たちも、ホラ」
「マーク。ゴメンナサイ。地震と大波は・・・」
「マリーが起こしたの?すごいじゃん。ありがとうね」
「えっ?」
「やっぱり、そうか、マリーの魔法だったのか、だから、地震も揺れただけだし、津波も入り江を混ぜただけだったのか。でかしたぞマリー」
「結果オーライ?かな」
「そうよね、マリーのブルスカ・ショックは、行き当たりばったりじゃないものね」
「ありがとう。ロコ」
マリーの機嫌が回復すると同時に、マリーとロコの声がシンクロしてキレイに重なった。
「マークのスケコマシぃ~」
「違う、違うよ。この娘たちは、飾り窓にいた女の子だよ、全員を救い出したんだ」
「そうなんだ。それは、よいことをしましたね」
「なんだよ」
「それで、そこの一際セクシーな出で立ちのキレイなブルーの髪の女性は?ド・ナ・タ」
「あっ、おけけブルーの、ショックの引き金ちゃん?じゃないの?」
「バカっ、見つけたんだよ。ルルだよ。幻影の彼女だよ」
ルルは、俺達三人が仲間であることを理解した様だった。徐に立ち上がり、マリーとロコに向かい挨拶をする。
「私は、ルル。あの賭博場に囚われていたところを、このスケベ。いや、マークに救い出して貰いました」
「私は、マリー。あなたが、囚われの美女?」
「私は、ロコ。私のネズミちゃんが、役立ったかしら?マーク、私も褒めて」
「やっぱり、あのネズミは、ロコの。うん、うん。とっても助かったよ」
「ヤッター、よかった、役に立てて」
「そうだ、ロコ。船をもう少し、誰にも乗り込まれないところに移動してくれないか」
「そうね。わかったわ。錨を降ろしているのに、入り江のとば口から港の横まで流されちゃった」
「でも、俺は、ここに船が来てて助かったよ」
「マリーの怒りのジェラシーに感謝ね」
「なんだい?それ」
ロコは、船を入り江の人から見えない場所に移動させた。幸い、停泊中に俺達以外の者が、侵入した形跡もなく、船も無事そのものだった。船底の倉庫から、ロコが反物を持ってきた。それをマリーに見せながら、何かを促している。マリーも頷きながら、いつものように、指を突き上げた、でも、とっても、小声で叫んだ。
「ブルスカ・ショック~」
何も起こらないぞと、思っている俺の目前では、マリーとロコが手を取り合って飛び跳ねている。ロコが持ってきた反物が、多くの女物の衣と下着に変わっている。そうか、この二十人に着てもらうものを作り出した様だ。なんだい、実用的なまともな魔法も使えるんじゃないか。
「スゴイじゃないか、マリー。魔法を制御できるようになったの?」
「こんなの朝飯前よ。エッヘン。多分」
「すごい、やっぱり、マリーは凄いわよ。山を揺らせるのよ、このくらいすぐよね」
「それは、御見それいたしました」
「みんなに着てもらいましょうよ」
「そうね。ちょっと待ってね」
マリーは、俺に布切れの残りで、目隠しとばかりに、目だけでなく、顔中をグルグルと
巻きつけてきた。
「見ちゃだめよ、美女大勢のビジョビジョヌードを」
「みんな、新しい下着と衣服にどうぞ着替えてくださいな」
「わーい、キレイな衣服ね」
「それに、カワイイ下着。サイズ合うかしら?」
「サイズが合わない方は、こちらで修正しますので、どうぞ」
わいわい、ガヤガヤ。見たいけれど、これからのこともあるので、信用第一ってことで、我慢することに徹した。
とっても、当たりは、楽し気な雰囲気が渦巻いている、そして、全員の着替えは、耐えがたき良い匂いが、何とも言えない甘い感じの香りを甲板中に撒き散らし、俺をウットリとさせてしまう。これもマリーの魔法なのだろうか。いつものことながら、股間の緊張で前屈みになってしまう。どうしたらいいのでしょうか。
着替えを済ませたルルが、俺の目隠しを解いて、マリーとロコを呼び寄せた。
ルルは、カッチーナの言い伝えと自身の巾着の中身を見せてくれた。そして、俺のナイフとの関係も話し終わると、
「マークさん、マリーさん、ロコさん、私を探してくれて、ありがとう」
「ルル。さんなんていらないんだよ。さっきまでの、マークでいいよ」
「私たちもいいのよ。私達もルルって、呼ばせて」
「そうよ。仲間だもん」
「えっ、仲間」
「新しい家族が増えたね。これで四人だ」
「家族。いままで、独りぼっちだった私に?」
「みんな、ひとりぼっちだったんだよ」
「俺は、十六。ロコも。マリーは、二百十七。ルルは?」
「ニヒャク?私は、十八。よろしくね」
「青いおけけは、一番、お姉さんね、えへっ」
「一番は、マリーじゃ、二百だし」
「マークの意地悪ぅ~」
「ぷっふふ」
また、甲板に笑顔と笑い声が交差した。しかし、今日からは、家族が一人増えて、四人となった。クリスティーの探させた仲間がこれで全員揃ったのだろうか?
今度、会ったら聞いてみようと俺は、思った。
「マークって、かわいい顔しているのね。だから、ピンクの髪の女の子姿も似合っていたのかも」
「何をしみじみと、ルル。騙したわけじゃないんだよ」
「マリーの魔法で、マークは、女に、私とマリーは、男の姿に入れ替わって、賭博場を探っていたの」
「そうなんだ。魔法?。でも、マークのボインは、凄かったのよ」
「何言ってるんだい。ルルのオッパイの方が凄いじゃないか」
「イヤっ、しっかり覚えてるのね。じゃぁ、やっぱり、ブルーのことも?」
「ええっ、ルル。マークにエッチな事されたの?このスケベ勇者に」
「マークのエッチは、どうしようもないものねぇ。ネズミからも聞いてるもん」
「おいおい。俺は、ごく普通の健康な十六の男の子なんだから、普通でしょ?」
「普通ではないと・・・。普通は、お顔に座らせたりは・・・」
「座らせる?自分で乗っかって来たんじゃないかっ」
「お顔?座る?どんなエッチなこと二人でしてきたの?」
「大丈夫。俺達は、裸で付き合える家族だから」
「裸?家族で、恋人で、複雑な関係よね。ロコだけじゃなくて、ルルって強敵も加わったわ」
「参戦するわよ。こうなったら、勇者と結婚したのは、カッチーナだもん」
「でも、別れたんでしょ。勇者を産んだ女性は、誰でしょう?私の祖先かな」
「ロコの?ないとは言えないのが、悔しいぃ~」
「詳しいことは、またクリスティーに聞いてみよう。こちらの問いかけは、無視されるけどね」
「クリスティー?」
ゲトレの賭博場から救い出した二十人は、先週この港に着いた船でダハスという島から連れて来られたとのことだった。なにやら訳ありの様子だ。単に働き口を求めて来たのではないらしいのだ。
とすれば、次の行先は、決まった。ダハスに、この美女軍団を送り届けるまでだ。
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