サイレン
今日もご覧いただき、ありがとうございます
「おはようございます」
「おはようございます」
「よく眠れましたか?」
「はい、ぐっすりです、こんな綺麗なお家まで、お手配して頂いて、ありがとうございます」
「いえいえ、お向かいさんが出来て、我が家も嬉しいです」
「こちらこそ、末永く宜しくお願いいたします、村長さま」
「ムラオサ様は、ご勘弁を、長ではありませんもの」
「ムラオサさん、恥ずかしがることないですわ」
「母上が、薙刀を、私達が剣術の指南をお預かりさせていただきますわね」
「そうでした、武術と魔術の御指南、宜しくお願いしますね、長は、なしで仲良くしましょう、それに、まだこの村も二家族だけなのですよ、これから一緒に村を成長させましょうね」
清々しい朝を迎えたゲリアの村では、井戸端を囲んで、新たな村人となった、シトロン、リンラン、ランリン家族と朝のご挨拶だ、到頭、俺は、この村の村長ということにされてしまったらしい。
我が家と同じ様に、マリーの魔法と、ルルとロコの技術によって、家の向かいに龍の園一家に用意した家が完成したことで、背の高い藪の中の村に、二軒の建物が井戸を挟んで向かい合っている。
しかしながら、ただ単に、新しい村人を歓迎しているばかりでではなく、魔法の根源についての探求と、元女王と元次期女王の悪行を行っていた記憶消去による、経過観察や監視とういことが、一緒に暮らす目的でもあるのである。
でもさ、楽しいことにこしたことはない。こんなに美形なピンクの金髪女性と赤の金髪娘さんが、ほのかに匂いも伺えるほどの近くにいるなんて、喜ばずにはいられませんものね。不純な動機も混じりあって、ブルスカ・ファミリーのみんな、よこしまな俺を見逃しておくんなまし。
うふふっ。
「まぁ、マークったら、今日は、早起きねぇ、新しもん好きよねぇ~」
「本当よね、ピンクとパールレッドを観察したいのよね」
「なっ、何を馬鹿なことを言っているのさ、そ、そんなことあるわけないだろ」
「ピンクとパールレッドって???」
「リンランとランリンは、気にすることないからね」
「やっぱり、二人は、特別扱いするのね」
「ねぇねぇ、そんなことよりも、私のこの肩甲骨をなんとかしてよ」
「オロチちゃんは、飛べるようになったんだから、それはそれで、良かったでしょ」
「でもでも、醜いでしょ、コレ、美しくないでしょ」
「うん、お世辞にも、美しいとは、言えないわね、気持ち悪いものね」
「やっぱり~っ、ねぇ~、マークなんとかして」
「クリスティー、アルカティーナ、なんとかできるものですか?スダチちゃんがやったらしいけど」
「無くすことは、難しいわよね」
「そうね、ティーナ、でも、そのままでも、そんなに気にならなくない?」
「醜い所が、良い感じよね、うふふっ、オニアイって、あははっ」
「ひどいですわ、女神様、意地悪しないで、取れないならば、天使のような翼にしてください」
「仕方ないわねぇ~」
クリスティーが人差し指をクルクルした後に、オロチちゃんに向けて、いつもの言葉を呟いた。
「ブルスカ・ショックっ~」
オロチちゃんの背中が一瞬ピカリと輝いたと思うと、肩甲骨の羽のついた、何も変化のない背中が、目の前のままだ。
「何も変わっていませんわ、悪ふざけしないでくださいよ~、意地悪しないでください」
「ちゃんと、したわよ。そんなこと言わないで、無くなるように念じてごらんなさいよ」
「念じるんですか?」
瞼をぎゅっとつぶったまま、オロチちゃんは、いじらしい程に、井戸の前で念を念じている。
すると、どうだろうか、オロチちゃんの背中から、おどろおどろしい肩甲骨の羽のようなものが、グリグリと背中の中に潜り込んでいく。これは、これで、グロテスクな光景である。バンパイアの変身風景にしか見えないのは、俺だけじゃないだろう。
「収納できるようにしてあげたわ、オロチちゃんには、この形、オドロオドロしい方が、似合っていて、良いと思うわよ、おっほっほ」
「オッホッホじゃありませんわよ~、イジワルです~、でも、でも、仕舞えるのは、嬉しいですわ」
「出し入れ可能なんて、いいじゃないか、でも、本当に、グロイよね。出てくるのも、しまうのも」
「マークのイジワル~、どうしよう、要らないかな?これ」
羽の生えた蛇は、我がブルスカ・ファミリーにとって、そして、このゲリア村にとっては、伝説の象徴と言えるので、結果的にせよ、オロチちゃんがその姿になれたことは、本当に偶然なのか必然なのかとさえ思えるようで、俺としても、無くならないのが望ましく考える。
だが、しかし、本人が嫌がっているのは、いささか何とかしてあげたい。
それを見ていたお向かいさんもピンクの髪をかきあげながら、人差し指をオロチちゃんに向けて、これまた、お決まりの言葉を投げ掛けた。
「ショックっ~」
オロチちゃんの背中が、またもや、ピカリと輝いたと思うと、真っ白の骨むき出し感満載の翼と言われている肩甲骨が、肌の色と同じ緑色に変化して、その出し入れも、極々自然に背中へ埋まったり、飛び出したりできるようになった。全然、おどろおどろしくもなく、グロテスクでもなくなった。
流石、龍の園の魔法だ。
クリスティーの収納可能にした魔法に、仕上げの一磨きを銜えた様だ。そこには、イジワルはない。本当に醜いままではなく、オロチちゃんの羽を美しいものにしてあげたい気持ちが伺える。
「わっ、ありがとうございます」
「いえいえ、こちらの方が、実用的になると思いますわよ」
「本当だ、美しい羽になっちゃったよ、オロチちゃん。これなら、ガンメタちゃんになった時も我慢できるよ」
「まぁ、マークったら、そうよ、他人事じゃないのよ、マークの羽でもあるんだから」
「じゃぁ、母上の真似して、私も、綺麗にしてあげるわね」
今度は、リンランが、人差し指をオロチちゃんに向けて、チョチョイっと指を動かした。
「ショックっ~」
特段とオロチちゃんに変化は、見られない。
「オロチちゃん、羽を出してみて」
「あっあっ~」
「ズル~い」
羽を背中に出したオロチちゃんは、肩甲骨を背中に出したことで、胸のボリュームが無くなっていたが、今は、肩甲骨を背中の外に出した分以上に、ブルンブルンっと、元々のボインちゃんよりもオッパイがたわわに実っている。羽を仕舞うと、オロチちゃん本来のボインちゃんの大きさに戻っている。
「凄いね、すごいヨ」
「わーい、リンラン、ありがとう、マーク、気に入ったのね」
「リンラン、私にもやって頂戴」
「ダメよ、マリー、オロチちゃんも、羽を出している時だけだもん」
「マークのために、羽を出しっぱなしにしておこうかなぁ~」
「オロチン!仕舞いなさい」
「リンランばかり、良い所みせられないから、私も」
「ランリン、私にしてくれるの?」
ランリンも指をクルクルしながら、オロチちゃんの胸を目掛けて魔法を発動する。
「ショックっ~」
特段、何も変わりません。
オロチちゃんの羽も、リンランによって、バイバインになったボインちゃんも変化ありません。ランリンは、オロチちゃんの傍に歩み寄って、ボインちゃんのさきっちょを呼び鈴をチョロチョロするように、人差し指の先でチョコッと弾いてみる。
「イヤぁ~ん」
今まで聞いたことのないような、オロチちゃんの大きな声が、ゲリア村の朝の静けさに木霊を求めて響いていく。
「イヤン、ダメ」
「うふふっ、感度を十倍にしてあげたのよ。羽が生えているときは、出していることを忘れないようにね」
「ランリン、それは、必要ですか?」
「うんうん、オロチちゃん、これは必要だよ」
俺も一歩踏み出して、オロチちゃんに近寄り、さきっちょをツンツンっと、指先で弾いてみちゃった。
「イヤっ~ん」
何処までも、その声が届くように村中に響いていく。これでは、モルシンの港まで聞こえるかもしれないぞ。
新しい呼び鈴を手に入れたようで、とっても嬉しいです。
「バカ~ん、マーク、でも、マークが気にったのなら・・・、ランリンありがとう」
「そ、そ、それ、私にも、して、ちょうだい、な」
「ロコ!」
朝から楽しい村の生活。
今日から、新しい村での生活が始まるって感じで、いいじゃないですか。
羽の生えたオロチちゃんには、村の防災無線、サイレンの務めも兼ねて頂きましょうかね。
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