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緑の草の波

今日もご覧いただき、ありがとうございます



 グルリグルリと、全身が回転している。


 いつもの羽の生えた蛇の呪文よりも、どこか激しい感じがする。それに、俺、ただ一人しか、このグルグル渦巻の空間にいないように目に映る。

 

 なぜか女王と次期女王の姿が確認できない。


 四人して同じところへと辿り着けることが出来るのであろうかと自分で発動した呪文であるにもかかわらず、不安な気持ちになるのは、今回が、一人きりで発動するのが、初めてだからかもしれない。


 今まで、いつだって独りきりでやってきたのに、家族という掛け替えのない存在を知ってしまったことで、不安を感じるなんて皮肉なことである。人間というものは、どのような状況においても、その時々の最善の心の安定を求める生き物なのだろうと実感してしまう。


 こんなことを考えられる時間の余裕があるなんて、やはり、いつもの時空移動と比べて、ちょっと違うのかしら?長いのかしら?まぁ、そんなことを考えていると、錐揉み状態の渦潮の流れが緩やかになってきて、いきなり、緑が鮮やかに眩しいくらいの草原に佇んでいた。


 何もないが、何処までも続く緑の草原、風が流れるように吹いていて、緑の草が大海原の様に、波立っている。

 その緑の波の中に、俺と、ピンクゴールドの髪が美しい女王シトロン、赤い金髪が威圧的な次期女王リンラン、ランリンの四人だけが、この世の中の全ての生き物というように、佇んでいる。


 やっぱり、想定通りに、女王たちも一緒に、呪文の時空移動に搭乗させることに成功していた。


「貴様、何をしたのだ、やはり、お前も、我らと同じ魔法を操れるのだな」

「お母さま、ここは、一体」

「今から、私が止めをさしますわ、お母さま、ご覧あそばせ」


「ここが、何処だか、わかっているのか?」

「何処なのだ?」


「俺にも分からんさ、と言いたいところだが、ここは、今いたお前さんたちの庭園だ、場所の移動は、していないからね」

「マーク!」


 緑の草の波の中から、浮かび上がるように、オロチちゃんが俺の足元から出現する。


 あらっと、びっくりしちゃったけれど、渦巻に入る前に左脚に感じた圧迫感は、移動直前にオロチちゃんが飛び込んでくれた証だったのだろうと認識できた。


 オロチちゃんは、緑の草の波の上を風とダンスをするかのように浮遊している。まるで天使の様だが、背中から生えている羽のような物は、白いことは、白いけれど、天使とは、似ても似つかない、おどろおどろしい骨丸出し感で、逆に、悪魔を連想させる。パタパタ、パタリパタリとぎこちなく羽ばたかせているのが、優雅な浮遊でなく、どこか滑稽なものに見えている。


「なんだ、お前までいるのか、たった二人で、返り討ちにしてやるわい」

「お母さま、お任せを」


 リンランが、指先を俺達に向けて、その先から怨念を込めて、突き刺すポーズを取りながら、その口元を動かした。


「ショックっ~」

 

 緑の草原を風が流れていく。緑の草を緑の波に変えながら、只々、風が流れている。


 風にリンランの言葉がかき消されていくかのように、その言葉の魔力が発動しない。


 何も、何も、起こらないのである。


 只、ショックという言葉が発せられただけである。


「リンラン、どうしたの?、魔法が錆びついちゃっているの?ダメねぇ」

「ランリン、そんなことは、ないと思うけれど」


「なかなかやるじゃないか、聊か、お前を侮っていたようだな」

「ほほぅ、どう侮っていたのかな?」


「どういうことですか、お母さま」

「ここは、お前たちが生まれていない頃の庭園なのだろう」


「流石は、女王様、察しが宜しいようで」

「お前は、時間を操れるのだな」


「この世界では、女王も次期女王もない、普通の無力な人間だぞ、いや、特殊な金髪娘にすぎない、さて、どうするかな」

「本当に、そうかしら?」


 今度は、女王が、リンランのようにポーズを決めることなく、口元を動かす。


「ショックっ~」


 その言葉が、風に乗って俺の身体に絡みつくような感覚を覚えたのと同時に、カチャリっという音が聞こえたと思うと、俺の首に、首輪が、手首は、後ろ手になって手枷が、そして、足首には、足枷が装着されてしまった。


 女王の存在していなかった時代まで遡れなかったことに気付くも、時すでに遅し。


「そろそろ、お終いにしましょうね、自分だけが、時間を操作できると過信しないことよ」


 シトロンは、女王らしい貫禄を伴って、今度は、その指先を俺に向けて、再度、お決まりの言葉を投げ掛ける。

 そして、全く同じ時をして、オロチちゃんもまた、風に乗りながら、指輪の石を最大限に右に捻りながら、こちらもまた、お決まりの言葉を呟いた。


「ショックっ~」


「カ・シ・ム・カ・シ・ム・シ・マ・ウ・ラ」


 互いの言葉が、緑の草の波の上で、絡み合う様にぶつかり合い、風の中に大きな渦が発生して、草原にいる四人を飲み込んでいく。


 風の行く方向へと、何処へ行くのかと、姿が、すぅ~っと、消えて無くなっていく。



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