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水溜まりとタッカ

今日もご覧いただき、ありがとうございます


「酸っぱさと、甘さが、絶妙なリンゴね」


「お母さま!」

「お母さま!」


「あっ、あっ、立っていられない」


 本当かよと目を疑う様な光景に、目を奪われているのは、俺達だけではない。


 ピンクゴールドの女王は、瞬時にマリーと同じくらい、そう、七つの美少女に変化して、今にも、お漏らししてしまうと膝を床に落として、ガタガタと震えている。


 まるで、生まれたての小鹿ちゃんみたい。ありきたりな表現しか浮かばないけれども。


 これは、マリーの言葉を操る成果なのだろうと思われるのだが、女王たるもの、それを当然に打ち消すことが出来るだろう。現に、次期女王は、言葉の魔力をリセットしていたではないか。

 しかし、目の前の光景は、打ち消すどころか、どんどん深みに嵌まっていくようにしか見えない。意地悪しちゃいたくなるくらいに、可愛い美少女のピンクゴールドちゃんがここにいる。


「これは・・・・どういうことだ、この身体は、ああっ、身体に力が入らない」

「お母さま」

「貴様ら、もう許さんぞ、今度こそ、始末してやる、ランリンいくわよ」


「やっかましい~っ、この、バカ妹、赤金髪だからって、偉そうにするんじゃないわよ」

「これでもくらえ、鬼は、外~」


 水のような空間の中では、おそらく、髪の毛の念通信が繋がっていなかったのだろう、ネクターが叫んだ後に、ハタンが、通信可能になったであろう付けっぱなしの髪の毛念通信で現れて、リンランとランリンに南京豆を投げつけた。


 この程度の嫌がらせで、処刑された事の腹いせなんて、到底出来ないだろうけどさ。


「イタっ、なんだ、このバカげた者は?」


「やかましい、私を子供にするなんて、ならば、お前の時間を奪ってやる」


 そう言いながら、ピンクゴールド美少女姿の女王は、力を込めた鋭い指先をマリーに向けて、聞き覚えのある言葉を言い放った。


「ショックっ~、ああっ~っ」


 美少女の女王、美少女のマリー、しかし、この旅は、美少女だらけだね、アルカティーナとクリスティーが大人に戻っていなかったら、美少女だらけの何とか大会みたいじゃんか。


 脱線ばかりで、ゴメンナサイ


 そんなことは、さておき、女王は、ショックを唱えながら、カグカグと震えながら、床に座ったまま動けなくなっている。先ほどよりも、見てわかるくらいに、ガタガタの震えが大きくなってきている。


 そして、美少女ピンクゴールドちゃんのガタガタと震える身体が止まった。


 我慢に耐えかねたのだろう美少女女王の周りに、水溜まりが広がり、その大きさをどんどんと大きくさせていく。

 こうなる結果を避ける為に、我慢に我慢をしていたことで、女王は、完璧な魔法を発動する❝ショック❞を唱えることが出来なかったようである。


 それでも、至近距離で呪文の直撃を受けたマリーの身体全体は、眩いばかりの光に包まれて染まっている。燃え尽きてしまいそうな勢いの光に包まれて、眩しさに目を開けて居られない。光の爆弾に飲み込まれてしまったようだ。


「女神様、なんとかしてください」


「ブルスカ・ショックっ~」


 すぐさまに、二人の女神も俺の言葉を待つことなく、マリーに魔法を投げかける。追い魔法の炸裂なのだろう。

 マリーを包む光の色が若干変化したように感じられた。


 光と光が絡み合って、揉みくちゃになりながら、光り輝くマリーを包む光が、やっとのことで解けるように、徐々に消えていく。


 そして、俺の目の前に、マリーの姿が戻ってきた。


 良かった、消えて無くなっちゃうのかと思ったよ。と思うのも束の間、ある違いに気が付くことになる。


「マリー!」

「マーク、ヤッターっ、やっと、お声が掛かったのねっ」


 マリーだ、七つのマリーでなく、十七のマリーが俺の目の前にいる。


「あっ、なんと、時間調整をしくじったか、十年くらいしか、お前の時間を奪えなかったのか?」


 腰を床に落としたままの女王が不思議そうにこちらを見ている。


「マリー、よかったよ、元に戻れたね」

「マーク、何?みんなも揃っているのね、この、可愛らしい女の子は?女神は?誰?新しい親戚ですの?」


「マリー、私たちが分かるの?」

「何を言っているのよ、やっと、私の出番なのね、オミヤだけじゃ満足できないもん」


 女王と次期女王の存在すらをも忘れちゃっている俺達に、怒りを頂点にした女王が、真っ赤な顔をして睨みつけている。

 そして、ドクンドクンと鼓動の音を響かすように、そのリズムに合わせて、幼い美少女の身体が、成熟した女性、本来の女王の姿へと戻っていく。


 完全なる姿に戻った女王と次期女王が、もう油断はするまいといった形相で相対して、近寄って来る。


「お前たちは、一体、何者だ」

「やっと、客人を持て成すような気持ちになれたのかな?お漏らしピンクちゃん」


「ええいっ、言うな!能書きは、いい、何者で、何をしにここへやってきたのだ」

「そんなに教えて欲しければ、じゃぁ、教えてやろうかなぁ」


「この野郎、これでもくらえ!」


 俺が言葉を発しようとした瞬間に、またしても、割り込みしてくるのは、この現場には、いない観覧組のハタンであった。

 豆まきが余程気に入ったようで、南京豆を力いっぱいに女王目掛けて投げつけた。来年の節分が楽しみである。


「痛い、お前は」


「見覚えあるのかな、俺達の家族だ、お前さんが、処刑した禁断の果実を口にした金髪娘だぞ」

「なんと」


「俺達は、禁断の果実を味見するために、別の世界から、はるばるこのカルボーアにやって来たってわけさ」

「別の世界の者など、外からここへ、来れるわけなかろう」


「なかろうと言われても、月食を掻い潜り、吹雪の白い世界を乗り越えて、緑の森まで辿り着いたのに、歓迎されないなんて、どんな国なんだい、ここは」


「外の世界か、それならば、外の世界へお帰り頂こうか」

「まてまて、ここへ連れてきた大勢の金髪娘、お前さんの一般金髪娘たちは、どこへやったんだ?」


「知らなくてもいいことは、知らずままでよい、禁断の果実は、もう口にしたのだろうから、それは、特別に許してやろう」

「どこへ、やったんだい、全員処刑したわけじゃないだろう」


「お母さま、この者たちは、外の世界の者のくせに、龍の花を知らないんですね」

「龍の花?」


「お前たちごときには、高嶺の花ってことだろう、知る由もないはずだ」


 龍の花の言葉を耳にして、二人の女神たちが顔を見合せて、首を併せて傾げている。どこかで聞き及んだその言葉を頭の中で反芻していく。


「龍の花って、ティーナ、タッカ聖女、金髪奴隷のことじゃないかしら?」

「ああっ、そういえば、聖女タッカ、巷では、下品な金髪奴隷の呼び名、いにしえより、金髪奴隷をさげすむ言葉、確かに」


 二人の女神には、龍の花と呼ばれる金髪奴隷が、密やかに各地で持てはやされていたことを思い起こした様である。そして、その金髪奴隷で伝説的聖女がタッカであり、龍の花を意味していることに気が付いた。


「この大勢の働きバチ金髪娘が、みんな、龍の花ってことなのかしら?」

「クリス、どうやらそうらしいわね、自分の娘を食い物にする人でなしね」


「ブランド名くらいは、知っているのか、それほど、やはり、有名か」

「なるほど、聖女タッカは、元々は、奴隷だった、ここが、生まれ故郷ってことね」


「何をいっているんだ」

「マーク、やっぱり、魔法使いの起源は、ここだったわ、私たちの魔法の起源は、聖女タッカだもの」


「聖女?タッカ?」

「タッカって、龍の花ってことだったのね」


「やかましい、タッカなど関係ないわ」

「大人しく帰らないならば、このまま、ゲトレの市場に送り込んでやろうか」


「ゲトレ?ゲトレにも、ここの金髪娘たちが、送られているのか?」

「ゲトレをしっているのか、なかなか知っているではないか、ゲトレ以外の市場にも、おくりこんでいるぞ」


 ゲトレという、ティーンを出て初めて訪れた土地の名前を聞いて、驚いたのと、本当に、身近に、考えも及ばなかった悪事や陰謀が存在していることに鳥肌が立つ気分になる。


 仮にも、自分の娘を絶え間なく、奴隷として、奴隷市場に送り込むことで、生きながらえているこのカルボーアの支配者に、言いようのない嫌悪感を覚える。ところ変われば、なんとやらで、精神構造も感じ方も俺達とは異なるのであろう。

 ここでは、このようなことも、得てして、違和感のないことなのかもしれない。


 本当に、外から来た俺達、外から見る者からは、全く、理解できない外道の輩の何者でもない。


 しかし、この外道が、外に娘を売り飛ばさなければ、俺達の世界に、魔法使いも生まれなかったことになり、ひいては、俺のご先祖も存在しないことになる。


 ひいては、俺自身も、こやつらの悪行が無ければ、生まれ出ることない。


 因果なこと、このうえない話だ。


「何を、考えている、猶予を与えてやっているのだ、返答くらいしたらどうだ」

「いちいち小うるさいお漏らし姉さんねぇ、美貌は、女神様並なのに、ただの、岡場所の女将ね」


「また、お前か、今度こそ、お前の時間を奪ってやる」

「ヤメロ、この外道!」


 マリーへと女王の指先が向けられて、ショックを唱える前に、俺は、指輪の石を右方向へと、かなり捻り込みながら、女王と次期女王の傍へと歩み出て、自分で唱えるのは、初めてかもしれない言葉を紡ぎ出すように発した。


 カ・シ・ム・カ・シ・ム・シ・マ・ウ・ラ


 女王と次期女王、そして、俺との四人の間に、旋毛風が舞い立ってくる。俺は、ふくらはぎと腿に痛いほどの締め付けを感じながら、四人を包み込む激流のような渦巻に飲み込まれていく。



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