肉まん
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渦巻の中にファミリーが飲み込まれている。
何処に辿り着くでもなく、正に、水の中を漂っているような感覚が、身体中を包んでいる。
「みんないるわね、この空間は、まるで、羽の生えた蛇の呪文での移動に似ているわね」
「本当ね、でも、ちょっと違うわね」
「そうね、何だか水の中にいるみたいね」
俺達は、何処かへと流されている感覚だけに、身を委ねて流されちゃっているだけである。激流でもなく、緩流というわけでもなく、ぼんやりと、行きつく先に流されている感じなのである。
その中で、ちょうど顔の辺りに何やら柔らかい物が触れている感じがしている。
マリーをおんぶしたことで、自由になった両手を前に出して、目には見えない感覚だけの大きな膨らみを鷲掴みにして、モミモミとしてみる。
確かな感触が、水の中でも感じられる。柔らかなの中にしっかりとした弾力。
掌からはみ出る大き目の肉まん、みたいな形状の見えないもの。
しかしながら、なんだろうか、懐かしいというのか、覚えのある感触が掌にひしひしと伝わってくる。眼には、捕らえることのできない、見えない二つの大きな膨らみ、その肉まんの捩じり部分のさきっちょが、尖がっていることを俺の掌は、察知する。
感覚だけで、両手の親指と人差し指で、それぞれのさきっちょを摘まんで右は、右に、左は、左に、鍵を開ける動作と、鍵を閉める動作を同時に左右の手で自然な動きとして行ってしまった。
その瞬間に、空間の扉に辿り着いたように、俺達を取り囲んでいる水のような流れが止まって、身体の周りから、纏わりついていた水が解き放たれていくような感覚に変わってきた。
「あんっ」
「あん?」
何もなかった空間から解き放たれたのだろう。
とてもやさしい空間移動がされたようだ。とっても、ソフトランディングでいい感じです。ということに感動していた瞬間に、俺の目の前、直前に、ピッタリと密着しながら、ネーブルが出現した。
「ネーブルじゃないか」
「いやん、マークが、イタズラしていたのね」
イタズラなんて、していないよと言おうとしても、俺の両の手は、ネーブルのオッパイを鷲掴みにしたままの状態であった。そうすると、さきっちょのトンガリ君は、やっぱり、ネーブルのさきっちょちゃん、だったんだろうと確信できた。
「マーク、申し訳ないんだけど、もう、放して、ちょうだいよ、変な感じが、しちゃうから」
「あっ、ごめんよ、さきっちょ、まで・・・」
「マーク、ネーブルのさきっちょ、どうしたの?」
「呼び鈴、いや、鍵開け方式、いや、鍵閉め方式かもで、今の空間から出て来た感じだったんだけど」
「マーク」
オロチちゃんが、飛びついてしっかりと抱き着いてくる。俺も抱きしめてあげると、オロチちゃんの背中に少し硬めの出っ張っているものが、とても気になるのにハッとしてしまう。
「オロチちゃん、あれ、背中から何か出ているの?」
「そうなのよ、スダチちゃんに、肩甲骨で羽を作られたのよぉ~」
「マーク、みんなに合流できたわ、城は、完全に制圧しましたわよ、敵は、一匹もいなくなりましたわ」
「ネーブルじゃぁ、成功だね」
「マーク、オロチちゃんを飛べるようにしたのは、私、スーチンよ、すごいでしょう」
「それは、すごいよ、感心感心、カボスちゃんも、頑張ってくれたようだね」
「はいマーク、スーチン、オロチちゃんのことよりも、永久階段、無限階段の先、城の最上階から、ここまで来たのを伝えなきゃ」
しかし、冷静に周りを見渡して見ると、オロチちゃん達と合流で来たここへは、いいのだけれど、身体中に纏わりついていた水のような感覚は、無くなったのだが、何もない空間からは、抜け出た訳では、無い様である。
教会の入り口を入った俺達と、城の最上階にあった鏡の中に入ったオロチちゃん達と出会えたこの空間は、一体なんなのだろう。
カルボーアにおいて、ファミリーと味方の全員が揃って無事を確認できたことは、良いことに違いないけれど、捻じ曲げられた空間から出られなければ、どうにもならない。この空間では、魔法や羽の生えた蛇の呪文も効果が期待できないように思えてならない。
周りを全員が、見渡しているなか、ルルが、無の空間の中から、何かが見えるモヤモヤの裂け目のような場所を見つけたらしい。
「ちょっと、ここから、何か見えるわよ」
呼びつけられて、何かが見える隙間を全員で覗き込むと、天使の笛とペテン師の笛の幻影で見たピンクゴールドの髪を優雅になびかせている女神の如き美女が、大きな鏡の前に立っているのが見えている。
「あっ、城の最上階にあった鏡と同じね」
「本当だわ、あの城の鏡に飛び込んで、ここまで来たのよね」
それならばと、俺は、ピンクゴールド魔女の鏡を目掛けて、モヤモヤの晴れ間に手を伸ばしていくと、いきなり背中の重みが消え去って、俺の前にマリーの後ろ姿が見えたかと思うとピンクゴールドの鏡目掛けて飲み込まれていく。
「マリー、どこ行くんだよ」
「マーク、オシッコぉ~」
「オシッコは、そっちじゃないよ」
手を伸ばすも、間に合わない。
そのまま俺も決意も何もないまま、後を追うしかない。
そして、その一瞬の出来事を呆気に取られながら見ていたみんなも、すぐさま、追随して、向こうに見えるピンクゴールドの前に立っている鏡を目掛けて、飛び込んでいった。
「何者だ」
甲高い耳をつんざくような声が鼓膜を振動させる。
俺達全員の目の前に、神々しい貫禄を纏ったピンクゴールドの髪を美しく靡かせる美女女王が現れた。そして、彼女の前には、講堂内で、ショックの言葉を投げつけて姿をくらました次期女王のランリンとリンランの姿も目に飛び込んでくる。
「この者たちですわ、お母さま」
「今すぐに、処分してみせますわ」
「うるさいなぁ、オシッコ、ちびっちゃったじゃないよぉ~っ、バカぁ~」
マリーは、まだ、お昼寝の寝起きで寝ぼけ眼が続いたままだ。ただ、オシッコが引き金になって、かんしゃくを起こしてしまっているのだろうね。
腹いせに右手に握りしめていたジョナゴールドをどことはなく投げつけた。
放物線の弧を描くように、意外にも長く飛んでいくジョナゴールドは、女王の手に収まるべく収まったように受け止められた。
「ほほう、リンゴだな、赤と黄の美しい新種か?」
「あっ、私のジョナーよ、食べちゃうと、オシッコもれちゃうんだからねっ」
女王は、俺達のことは、もう、二人の次期女王に任せたとばかりに、全く気にする素振りもみせないまま、ドレスの腕でリンゴを拭くと、ガブリとかぶりついた。
「うん、いい味だわ、さっぱりとした酸っぱさねぇ、ねぇ~」
リンゴをかじると歯茎から、血が出ませんか?
どうしても、言ってみたくなりませんか?なりませんよねぇ。
失礼。
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