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穴探し

今日もご覧いただき、ありがとうございます


 小休止の雰囲気が、微妙な感じになってしまった。


 どうしても、ロコのパンツは、俺が降ろしたことにしたいらしいロコとルルは、イチゴパンツの可愛さをよそに、赤い衝撃の出し入れのみを追求している。


「マーク、私のサファイヤ・ブルーも見たいって言ってよ」

「赤も青も見たいって話じゃないんだよ、事故だよ」


「でも・・・」

「マークったら、うふふっ」


「ロコばっかり」

「違うよ、ルル、いつだって、青き草叢も見たいですから」


「本当?」

「本当だよ、でも、今のは、マリーがね」


「じゃぁ、見る?」

「い、いまは、ダメよ、ちゃんとお部屋でね」


「約束よ、ああ、約束だ」


「赤と青ばかりじゃ、許さないんだから」

「えっ?」


 小休止で床に腰を降ろしている俺達の真ん中に、腰に手を当てたプラムが立っている。


「ルル、マークの言う通り、マリーがロコのパンツを引っ張ったのよ」


 髪の毛通信がつけっぱなしで、状況を見ていたルルが、突然とこのタイミングで会話に介入してきちゃったのだ。

 今じゃなくても、声をかけるタイミングは、他にもあったと思うんだけれども、この誤解を解いてくれるのならば、プラムの介入は歓迎することである。


「マーク、ハタンのゴールドも忘れちゃイヤよ」

「そうですわ、ボタンのもですよ」

「ネクターのも・・・」


「黙ってなさい、エメラルド・グリーンが、次の番なのよ」

「プラムおねえたま、ズル~い」

 

 まぁ、これでこそ我がファミリーだよね。


 ちょこっと、おかしくなった雰囲気が、和みだして、小休止らしくなったことは、いいこととしましょうね。


 やっとこことで、みんなの笑い声が漏れ出した集団の中に、大きく緩くカーブしている回廊の向こう側から、銀色に光り、飛び跳ねるような塊が俺達の方へと向かってくる。先ほど斥候に出していたコンコンである。ルルの作り出した、ロコの足首に繋がっている伸び縮みするリードを手繰るように、その姿を大きくさせてきた。


「コンコン、おかえり、何かわかったの?」


 ロコが、飛びついて戻ってきたコンコンを抱きかかえて、斥候の報告に聞き入っている。勿論、動物と会話できない俺を含めたファミリーは、どんな内容かも分からないが、随分と長い報告をロコは、こんこんと聞かされている様子は見て取れている。


「マーク、この先も、延々と同じように、この回廊は繋がっているらしいわよ」

「やっぱりか、これじゃぁ、もう、後にも、先にも行けない感じだよね」


「マーク、考え方を根本から変えないとダメよ」

「クリスの言うとおりね、禁断の果実の樹木のときみたいに、襟巻に狐穴を開けさせられないかしら?」


「ティーナ、狐穴って?」

「ああっ、オミヤをお家に持っていく前に、生ける襟巻ちゃんが見つけた穴なのよ」


「ティーナ様、それなんですけれど、コンコンも、その時と同じ匂いを感じている様なんです」

「おんなじ匂い?」


「ロコ、あの時、探索させたのは、ネーブルの匂いだろ、ネーブルの匂いを追えるってこと?樹木のあそこまで、戻っちゃうわけじゃないだろうな」

「それは、なんとも、でも、この建物にネーブルがいるのかも?しれないってことはないかしら?」


 ここは、建物の中なんだから、穴なんて掘れるものではない。しかし、狐穴を開けたときの匂いをコンコン自体が認識しているとするならば、この幻影かもしれない無限回廊から抜け出せるかもしれないぞ。


 現状を策がない以上、駄目元でも、コンコンに試させるしかないだろう。


「ロコ、表じゃない建物の中で、狐穴を掘りだせるか分からないけれど、コンコンにやらせてみてくれないか」

「分かったわ、コンコンにお願いしてみるわね」


 再度、コンコンを抱きかかえたロコは、ネーブルの匂いを辿るように、狐穴を探して欲しいことをこんこんと伝えた。コンコンも気になっているネーブルの匂いを追跡することを許されて、本能に任せる行動をできることが嬉しいらしく、ロコの胸から飛び降りて、この回廊の床から、壁、天井とグルングルンと、縦横無尽に駆け巡り始めた。

 

 そして、コンコンは、床と壁の間に鼻先をこすりつけて、身体を捩じりながら、ドリルにでもなったような見たことのある動きをし始めている。穴など、何処にもない床と壁である、隙間さえ見当たらない所に、コンコンの鼻先が埋もれていく、そして、頭がスッポリと嵌まると、まるで頭のない狐が床の近くで、七転八倒しているかのようになってしまっている。


「コンコン大丈夫?」

「この襟巻は、優秀よね、私が作ったことだけのことはあるわよね、何か見つけだしたわよ」


「ティーナ様、大丈夫でしょうか」

「まぁぁ、見てましょうよ」


 コンコンは、何もない空間から、無理矢理に別の空間に潜り込んでいこうとしているのだろう。首だけではなく、身体の半分が、俺達の目からは、見ることが出来ないようにまでなってしまった。スルリと潜り込めないところを見ると、やっぱり、ゴリゴリと、無理矢理ねじ込んでいることが、よく分かる。


 コンコン頑張ってくれよ。お前さんは、只の襟巻じゃないはずだ、禁断の果実まで食らった襟巻じゃないか。

 コンコンの尻尾が、グルングルンっと回転翼の如くその速度を増していくと、パッとその姿の全てが消えて無くなってしまった。


「あっ、コンコン!」


 回廊の床と壁の間へと消えていったコンコンの形跡は、確認できなくなったが、ロコの足首に繋がったままのリードが、大きな魚に食らいつかれた釣り糸のように、壁の中へとグイグイと走り続けている。


「いいぞ、いなくなってないよ、ルルのリードが壁の間に引き込まれている、大丈夫、繋がっているよ」


 俺は、お昼寝中のマリーを抱きかかえたまま、リードが吸い込まれていく壁と床の間に近づいて、吸い込まれていくリードに手を触れてみると、一瞬にして、羽の生えた蛇の呪文移動に似た渦巻の中へと引き込まれてしまった。


「あっ、マークも、マリーも消えちゃったわ」

「ではでは、ロコちゃん、私たちも行きましょうかね」


 アルカティーナに促されて、クリスティー、ルルは、ロコの肩に手を載せる。ロコは、みんなが自分にしがみ付いたことを確認すると、リードが引き込まれていく壁と床の間まで近づいて、空間に引き込まれ飲み込まれていくリードに手を掴もうとしている。


「ロコ、しっかり」

「ロコおねえたま」

「おねえさま」


「あっ、プラムも三桃ちゃんも、お家からしっかり応援していてね」


 その言葉と共に、ロコと、その肩に触れている女神二人と、ルルの姿が瞬時に消え去った。


 当然のことながら、引き込まれていたリードも勿論のこと、今は、もう見当たらない。



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