イチゴ
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「お母さま、曲者ですわ」
「外から、このカルボーアへ、おかしな者たちがやってきましたわ」
「リンラン、ランリン、一体、どういうことなの?」
「恐らく、ラッカセイの件の真犯人だと思いますわ」
「そう、そして、処分したのよね」
「・・・・」
「・・・・」
講堂から逃げかえるように、姿をくらましてきた次期女王の二人は、女王の問いかけに応えることが出来ないでいる。
次期女王の二人は、肌感覚ではあるものの、相対した曲者が、いとも簡単に、思い通りにできる対象とは、思わなかったようである。
本日の出荷を送り出したばかりの女王は、自らの大勢の娘の中で、頂点なる二人の赤い金髪娘の言葉と、その続きの言葉を詰まらせていることに、疑念と憤慨と憤りの心持をふつふつと沸き上げていく。
教会の祭壇のような場所の中心に鎮座している大きな鏡から完全に振り向き、二人に相対する女王は、更に問いかける。
「処分したのよね、解決したのでしょ、その報告に、ここまでやってきたのでしょ、自分の役目を放り出してまで」
「それが・・・」
「それが、なんなのです、もしや、取り逃したのでは・・・」
「取り逃しておりませんわ、今、講堂におりますわよ、そして、あの様子だと、この鏡の館へ向かってきますわ」
「なんですって」
「ですが、私たちの魔法が打ち消されましたわ、手練れ者ですのよ」
「それで、尻尾を巻いて逃げてきたのですの、そんなことでは、次期女王候補を取り消すしか、いたしかたない事ですわね」
「お許しを」
「お許しを」
「お前たちの赤き金髪は、希少でしょうから、高値が付くだろう、その身体で、カルボーアに貢献して頂きますわよ」
「おっ、おっ、お許しを、必ずや、解決いたします、お母さまのお手を煩わすことは、いたしません」
「いたしません」
「ここまで、やってくるのなら、私の目の前で、その言葉を証明してみせなさい」
「はい、必ず」
「処分して、ご覧に上げます」
回廊の途中で、床に腰を降ろして、休憩中。
これでは、本当にハイキングの途中の小休止ですわよね。
「ダメだ、マリーが眠っちゃったよ」
「あらあら、桃ちゃんを食べたばかりなのにね」
「桃とお茶をもらって、俺も、落ち着いたよ、でもさぁ、景色も何もない廊下じゃ、洞穴洞窟と大して変わりない感じかするね」
「本当ね、マークの言う通りね、そうか、洞穴の中に似ているわね」
「私たちって、洞穴とか、洞窟とか、坑道に縁があるのねぇ、ここは、土は無いけれども」
「なるほどね、それなら、オロチちゃんがいたら、心強かったわよね」
「そんな感じだね、ロコ、コンコンを斥候に出そうよ、この回廊は、本当に続くのか、魔法に惑わされているのか」
「コンコンが、戻れなくなっちゃうわよ」
「コンコンは、この国の入り口をチューちゃんと見つけられたじゃないか、白い氷と吹雪の罠の時も」
「ロコ、大丈夫よ、チューちゃんにつけたのと同じ、リードとハーネスを作ったから」
「ありがとう、ルル」
ロコは、コンコンにハーネスを装着して、自分の足首に繋いだリードに繋ぎ合わせた。コンコンの頭を両手で包むと、斥候の目的を説明している。説明を理解したようなコンコンは、緩いカーブを続ける長い回廊の前方へと走りだしていった。
「恐らく、この回廊は、目くらましよね、でも、その目くらましに入っちゃったから、出られない事には、危ないわよね」
「危ないんですか、この建物の本当の内部に、辿り着かないと女王にも会えないでしょう」
「エアル、落ち着いて、小休止ですよ」
なんだかんだ言いながら、今までも、のらりくらりと問題を解決してきた。
解決というよりも、成り行きで好都合な結果を手にしてきただけだが、今回は、女神二人も同伴しているのにもかかわらず、危ないなんて。困っちゃうよ。
待てよ、流れ星の直撃で命を落としそうになった時も、結構、危なかった記憶が戻ってきたぞ。
ふと、お茶を配っているロコの裾が翻っている所に、目が留まって動かなくなっちゃった。
イチゴちゃん
イチゴちゃんじゃないか、イチゴパンツ。
マリーに履かせるために、ロコが渡してくれたイチゴパンツよりも、小さなイチゴがいっぱいのイチゴちゃんパンツ。ロコって、こんなパンツ履いていたっけと思いながら、目が離せなくなってしまった。
一体、何個のイチゴちゃんが、パンツに描かれているのだろうか。俺の動きがストップしていることに、ロコも気が付いたらしい。
「マーク、マーク、しっかりして、まぁ、大丈夫よ、コンコンを待ちましょう」
「イチゴが、ひとつ、イチゴがふたつ、イチゴがみっつ、すとろべりー」
「何言っているの?イチゴが欲しいの?桃じゃなくて?出しましょうか」
出しましょうかって、言いながら俺の視線の先を追っていくロコは、自分の腿の奥、裾が翻っていることに気が付いてしまった。
「イヤンっ」
「でも、マーク、赤いのは、見えていないでしょ」
「えっ、赤いイチゴちゃんでしょ」
ロコは、パンツを履いているので、赤い禁断の果実を見せていないと安心しているが、そうではない。
「でも、マーク、やっぱり、私のが見たいのね、うふっ」
「そうじゃなくて、いや、そうだけど、イチゴパンツのことだよ、マリーの時といい、イチゴ柄が好きになったの?」
「ああっ、それ、マークの少女趣味に併せているのよ、ズッキューンでしょ」
「あっ、私のイチゴパンツ、返して」
マリーが、目をこすりこすり、ロコのパンツに手を伸ばしている。
寝ぼけちゃダメだよ。お前さんは、履いているんだよ。それは、お前さんのパンツじゃないんだよ、目の前のイチゴちゃんは。
レッド・ラッシュ!
摘ままれたパンツは、マリーに引っ張られて、膝までずり降りてしまった。
「ありゃりゃ~、あれっ~」
「ロコ、小休止だからって、すぐ、パンツなんか脱いで」
「脱いでないわよ、マークが剥ぎ取ったのよ」
「マーク!」
「ルル、勘弁してくれよ、マリーが引っ張ったんだよ、俺は・・・」
「何よ、マリーのせいにして、ウソツキ」
マリーは、俺の胡坐の上で、寝息を立てている。
本当かよ。
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