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第八部 UNICORN's(可能性の獣たち)
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第八部 第4話 Knee-Socks(居場所)

 「アンっ!時間がないの!2機は抱えきれないから、もう1回ドッキングして!そしてすぐ、Kerukeion(ケリュケイオン)をパージしてっ!」

正直、ちょっと分からなかった。ドッキングしてもすぐパージ?それじゃあドッキングする意味ってあるの?けど、分からなかったのは私が状況に押されて混乱してたからだ。マドカちゃんがココまで上がって来てる。私たちを助けるために。けれど、2機分の重量があるintegrity(インティグリティ)は重過ぎるんだ。

 「分かった!お兄ちゃん!ドッキングするよっ!」

お兄ちゃんに声が届いていたかは分からない。けれど、あのマドカちゃんがああも余裕の無さそうな言い方してたってコトは、本当に時間との勝負だってことが分かる。実際、Mhw(ミュー)の外装が赤くなっていく様が見えてる。たぶん、今を逃したらドッキング時に露出する部分が摩擦熱に耐えられないってコトは私でも解る。ううん、今だって耐えきれるかどうか分からないぐらいには危険領域に居るはずなんだ。

 お兄ちゃんからの返事は無かったけど、コッチから強制的にドッキングをコール。Caduceus(カドゥケウス)とKerukeionのセンサーが働いて、この摩擦のある中、最適なドッキング位置に2機が誘導されていく。

「ビーッ!ビーッ!ビーッ!!」

ついに警告音がコクピット内で鳴り出した!ドッキングコール以降はオートだから何も出来る事は無い。普段だったらあっという間に終わるのに、実際摩擦が邪魔してるんだろうな、いつもより時間がかかってる。あんまりこんな経験したことないけれど、こういう時に待つっていうのは、何だか実際よりも長く感じるよね。

 視界の端、迫って来るcaduceusの背中の向こうに、NIGHT-Dale(ナイトデール)がチラリと見えた。アッチもたぶん重力に捕まったんじゃないかな?もしかすると見た目にもスンゴい推進力持ってる機体だろうから、まだこの位置からでも宙に戻れるのかも。にしても、もともと機体が赤いから摩擦熱の状況はよく分からないな。

 コクピット内の温度が上がったような気がする。パイロットスーツの中でじっとりとした汗ばみを感じ始めたころ、コクピット内にドッキングの衝撃が走った!Caduceusとコクピット内が繋がった瞬間、お兄ちゃんのコンソール目掛けて飛び込む。バイザー越しに見えるお兄ちゃんの顔は・・・そりゃ驚いてるよね。

「アン!何がどうした!?」

気持ちは分かるけど、説明は後!コンソールとお兄ちゃんの間に割って入って、コンソールですぐさまパージの実行!ぶっちゃけお兄ちゃんにお尻を押し当ててる気がしないでもないけど、兄妹だし、そもそも今はそんなコトを気にしてられない。

「お兄ちゃん!マドカちゃんが来てる!アレ!見える?」

さっきまでパニってた私とは一味違うわよ?無人になったKerukeionが一直線にNIGHT-Daleに向かうように調整しておいてあげた。どうなったかはちょっと確認する余裕無いけど、NIGHT-Daleの居た方向から爆発音が聞こえた。撃墜までは難しいだろうけど、コレでNIGHT-Daleの脅威は振りきれたはず!

 「な、何だ・・・?あれ・・・Mhw?」

うん、確かに。指さした先に見えるのは、パッと見、フード付きのマントにすっぽり覆われた女の子?って思ってたらマントが展開した!その広がっていく様子は、さながら天使が翼を広げていくかのようだ。そして、その中に居た少女・・・じゃないや、Mhwはとってもキレイ。全体的に細身で白。Mhwに性別は無いけど、どー見ても女性に見えるいいスタイルしてるわ。そんなに種類知ってる方じゃないけれど、これまでに知ったどんな機体とも異なる外観をしてる。それに・・・アレって装甲が透明なの?そんなコトってあり得る?

 普通、Mhwが艦載されずに大気圏を往来するなんてコトはない。作戦上、宇宙空間から直接Mhwで地上に降下してそのまま戦闘に入るって事例があるにはあったけれど、熱から逃れる遮熱版を使っている間は自由に動くこともできなかったから、地上からの迎撃に成す術が無かったって聞いたんだけどな?たぶんマドカちゃんの乗ってるあの機体、こちらの動きに合わせて自由に動いてやしないかい??

 よく見ると、広げた翼を背面に回しているのだけれど、そこから何かの粒子のようなものがキラキラと広がってるみたい。

「アレは・・・スゴいな。あの翼みたいなの、表面を少しずつ剥離させてるのか。それが遮熱版の役割を担ってる・・・のか?相変わらず、ADaMaS(アダマス)の技術ってのは理解しきれないな」

よーするに、熱を防ぐちっさなナニカをまき散らして、大気圏突入を可能にする空間を作ってるってコトかな?きっとその影響下に入ったんだろうけど、上昇していたコクピット内の温度が急激に下がってる。

 「アン。お待たせ。ユウさんももぅダイジョーブですよ~」

まるで迷子だった子供が自分を探している母親を見つけた時のように、Caduceusが白いMhwに優しく包まれた。2つのMhwが接触したはずなのに、コクピット内にはほぼ衝撃が無かったんだから驚きよね。

「マドカちゃん、なんでココに居るの?いや、おかげで助かったけどさ」

「ん~?ヤヴぁい!って思ったから?」

薄々思ってたけど、やっぱりマドカちゃんってNEXT(ネクスト)だったんだ・・・それもたぶん、とっても強力。そんなマドカちゃんが〝普通〟に過ごしてるADaMaSだったからこそ、私も何も気にすることが無かったんだなぁ。

 「ぷっ・・・なぁにソレ。マドカちゃんらしいけど。ところで・・・そのMhw、キレイね」

Snow-White(スノーホワイト)。私は白雪姫って呼んでる~。ってか、ADaMaS無くなったのにってトコには驚かんのね・・・」

あ!そう言えばそんな報道、あったな。すっかり忘れてた。けど何でだろう?思い出した今でも「何で?」って疑問、湧かないや。

「なんでかな?ADaMaSが無くなったって信じて無かったって言うか、マドカちゃんたちが元気にしてるって信じてたって言うか・・・」

「愛ね!」

「愛だわ!」

「いやいや、何言ってるんだ?2人とも。それよりさ・・・大気圏内で浮遊してるっていう現状に僕は驚いてるんだが?」

アレ?ホントだ!どういうこと?しかも燃えてる様子もないなんて・・・

「あー、ソレ、ウチのお兄ちゃんが、断熱圧縮がナンタラとか4層でウンタラ言ってたけど、私に理解しろなんてムーリー。後で本人に直接聞いてね」

うん?断熱圧縮?4層?・・・私にもムリね。たぶん聞くことも無いや。それより、私が気になってることは1つ。マドカちゃんの白雪姫、どの系統とも違う・・・

「私たちね、ちょっと戦う理由が出来たんだ。みんなそれぞれにMhwあるけど、白雪姫はお兄ちゃんの特別製。ねぇ、アンちゃん、ユウさん・・・望むならこのまま私たちの新しい街で過ごせるよ?」

マドカちゃんズルい。そりゃあ確かに、戦争とはあまり縁のない世界で過ごせるんなら、それがいい。けれどマドカちゃんは「戦う理由が出来た」って言った。この白雪姫はそのためにあって、マドカちゃんが乗るんでしょ?ねぇ、知ってる?私はすでにマドカちゃんを親友だと思ってるんだよ。何が出来るか分からないけど、今回みたいに助けられたんじゃなかったとしても、親友が闘う理由が、私の戦う理由にならない理由は無い。降りたらちゃんと言ってあげようと思う。これまでに友達は何人かいたけど、〝親友〟って呼べるのはマドカだけだよって。

 「一緒に行くよ。もちろん、ADaMaSのみんながどこに行こうと一緒に」

「・・・ありがと。じゃあ、Knee-Socks(ニーソックス)が下に来てる。降りるよ?」

広げてたマントが2機を包むと、一気に降下していくのが分かった。その進む先にチラっと見えたのは大きな戦艦・・・けど、Knee-Socksって、私も時折履くアレよね?もしも局長が名付けたんだとしたら・・・ちょっとヒクかな。

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