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NEXT  作者: system
第八部 UNICORN's(可能性の獣たち)
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第八部 第2話 NIGHT-Dale(炎の輪郭)

 「I‘m(アイム) NIGHT-Dale(ナイトデール)

何なの?この機体。ナイトデール?さっきセウ中佐はコレのパイロットが、あの戦史に出てきたアラン・プロミネンスだと言ってた。セウ中佐と15年にも及ぶ長いライバル関係にあったパイロットだ。中佐と同じNEXT(ネクスト)なんだろうけれど、そうであろうとなかろうと、こんな人には今まで会ったコトが無い。

 子供の頃、かくれんぼをしても楽しくなかった。友達がどこに隠れてても、私にはその場所がすぐに分かった。ジャンケンをしようとしても、頭の中に勝手に相手が何を出そうとしているのかが流れ込んできた。それは大人に成って、軍人に成った今でも変わらない。

 「お兄ちゃん・・・この機体からはパイロットの意志が流れてこないの・・・パイロットか機体、もしかしたらそのどっちも、普通じゃないよ」

「アン、分かった。こんな場所でこんなのと出くわすなんて・・・タイミングも最悪だね」

私は自分のNEXT-Level(ネクストレベル)を理解してる。ソレを最大限に活用してこれまで(短いながらも)戦場で生き残れてきたけど、このNIGHT-Daleが相手じゃ、私は何の役にも立たないじゃない。相手の意思を察知できない私なんて、新人パイロットにすら勝てない。

 セウ中佐の方も、アレ、何だろう?SW(ソゥ)だってことは解ってるのに、なにかこう・・・人の悪意みたいなものに纏わりつかれているように見える。中佐を援護したくても、コッチもそんな状況じゃないし・・・ううん、こんな状況だからこそ、私に出来ることを考えなきゃ。それができなきゃ、私は本当にただの役立たずだ。

 あのNIGHT-Daleの大きさと機動性を考えれば、一般的なMhw(ミュー)よりも深くまで重力の影響範囲に降りられるはず。それはこのintegrity(インティグリティ)も同じ。けれど、質量が大きい分、あっちの方がデッドラインを超えた瞬間先に引きずり込まれるはずだ。

 もしもNIGHT-Daleのパイロットが本当にアラン・プロミネンスだとすれば、いくらお兄ちゃんだとしても追い込まれる確率が高いよね。相手も当然、重力には気を付けてるはずだけど、私たちに逆転の可能性があるとすれば、NIGHT-Daleを重力に補足させることだ。

 「お兄ちゃん!あのNIGHT-Daleを重力に捕まえさせよう!integrityのデッドラインは私がコントロールするから、誘い込んで!たぶん、NIGHT-Daleの方が先に捕まる」

「えっと・・・アン、なかなかムチャ言うね。それってつまり・・・」

「そうよっ!アイツを挑発してっ!」

「ってことだよな、やっぱ!よっしゃ、任せろ!」

こんなコト、お兄ちゃんじゃなきゃ頼めない。たぶんお兄ちゃんも、アレに勝てるとは考えてない。単純に、挑発に乗ればいつもよりも冷静さを何割か割けるって相手でもないんだから、アレの攻撃をひたすら避けまくることになるんだよね。見た感じ、NIGHT-Daleのメイン攻撃は射撃のはず。装備してないってことは無いだろうけど、あの巨体と異形で、格闘戦が得意とは思えない。私の能力が通じればもっとラクだったのにな。

 それにしても、何だろう?すごく気持ち悪い。セウ中佐に纏わりついてるSWからは何か〝意志〟のようなモノを感じるけど、それの本体である(はずの)NIGHT-Daleからは何も感じることができないだなんて。まさかアッチが本体ってことも無いだろうし。

 この相手・・・お兄ちゃんがここまで集中するのを見るの、(戦闘では)初めてだ。実際にintegrityの操縦をしているわけじゃない私でも、その凄さがビシビシ伝わってくる。お兄ちゃんって確か整備士のハズよね?ここまで来るとパイロットの方が天職だったんじゃないの?この状況でもう1つ分かったことがある。私が回避行動してないのに、NIGHT-Daleの攻撃をこうも躱せるだなんて・・・お兄ちゃんって実は凄いパイロットだったんだ。

「くっ・・・避けるだけで精一杯か・・・こっちの攻撃はまともにターゲットを取れない・・・アンっ!中佐の方はどうだ?」

「被弾こそしてないけど、手こずってる。SW全部落とすにはもう少しかかるっぽい!」

そう言えばSWの弱点の1つは、稼働時間の短さだって聞いてた。一般的なSWよりも大型っぽいけど、それにしてもあのSW、稼働時間が長い・・・このNIGHT-Daleという機体、シロートの私が見てもナゾだらけじゃない。

 お兄ちゃんの息が荒くなってきた。それに、そう言う私もだ。改めて、Mhwパイロットの凄さを実感するわ。こんなギリギリの戦いを出撃の度にしてたら神経がもたないんじゃないの?

「中佐の方にあった敵意が消えたっ!あっ!!」

って思ったら、すぐに3つの悪意が現れた。NIGHT-DaleっていくつのSWを装備してるの!?

「コイツっ!」

NIGHT-Daleが起動を変えて突っ込んできた。正直、私は反応出来なかったのよ。コクピット内にも伝わる衝撃があって、レールガンが切断された。すんでのところで上体を反らせたから撃墜は免れたけど、私はどうやって斬られたのか分からなかった。だって、NIGHT-Daleの両腕は見えてるし、右手には大型のライフル、左手は・・・腕にシールドこそ装備してるけど、その手には何も無い。

 お兄ちゃんがNIGHT-Daleから距離を取ってようやく分かった・・・腰のフロントアーマーの裏から展開してる隠し腕?みたいなモノがサーベルを握ってる。ってことはナニ?NIGHT-Daleって腕が4本あるってこと?ますますもって悪魔に見えてきた。

 「アンっ!機体がさっきよりも重いっ!」

お兄ちゃんの声にハッとした。斬られた衝撃とその方法が分からなかったことで私は無意識に怯えたんだ。その結果、私が「コントロールする」って宣言したデッドラインの確認を怠ったんだ。しまった・・・先に重力に捕まったのはintegrityの方だ。

 たぶん、integrityの最大出力ならまだ間に合う。けれど、余計な動きをする余裕は無いし、何ならNIGHT-Daleに向かって真正面から突っ込むような形になっちゃう。けど、迷ってる時間は無い。

「ゴメンっ!ヘマしたっ!正面から突っ込むっ!!」

推力エネルギーを全て背面に回して、最大出力で重力からの離脱を図る。重力からの脱出そのものは達成できるって分かってるけど、問題は進んだ先に居るアイツ。こっちのスラスター点火に合わせて、ライフルをコッチに向けてきた。どこかの部位を犠牲にしてでも、NIGHT-Daleを突破しなきゃ・・・

 NIGHT-Daleの持ってるライフルが光ったのは見えてた。けれど私は、NIGHT-Dale突破を運に任せてしまった。ちょっとカッコよく言えば、「イチかバチかに掛けた」ってところだと思う。2人に知られたらゼッタイ怒られる。私は目を閉じた。なのに、integrityが被弾したような衝撃は襲って来なかった。それどころか、身体が右後ろに引っ張られるような感覚だった〝G〟が、突撃方向を少し左に逸らしたことを教えてくれた。

 恐る恐る目を開けた私の目の前には、シールドを構えてintegrityとランデブーするセウ中佐の機体が映ってた。

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