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第三部 AIR-FORCE(空軍)
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第三部 第8話 バケモノ

 「そんなバカな・・・宇宙人が造ったとでも言いたいのか!」

REVAZZ(レヴァッザ)に乗るパイロットには、FAUABWS(ファウアバウス)の描く軌道がUFOに見えたのだろう。実際、FAUABWSは空中で静止しているかのように漂っているかと思えば、REVAZZの攻撃に合わせて急速移動して躱して見せている。その嘲笑うかのような振る舞いは、FAUABWSが強者であることを印象付けるに十分だ。相手に数多の攻撃を行わせ、それが全て通用しないと認識させた上での、トリック的要素のあるミサイル6発のみの発射は、相手に畏怖を与えた。

 FAUABWSの仕掛けた攻撃は、まだミサイル6発のみだ。しかし、その6発で仕留めたREVAZZの数は3機。先ほどのライフルと合わせればすでに4機を失った。それに比べて、REVAZZは全部で何発の弾丸を使ったのだろうか。

「あ、ADaMaS(アダマス)Mhw(ミュー)はバケモノか・・・」

REVAZZのパイロットは、全員がベテランの域にあったものの、誰一人として実際にADaMaS製Mhwと対峙した経験は無かった。初めてADaMaS製Mhwの戦闘を見たパイロットは、その所属を問わず、同じような反応を示すものだ。

 昔、「Mhwの性能が戦力の決定的差ではない」と言ったパイロットは、IHCが造り出した高性能Mhw、sks(スケィス)をREVAZZで圧倒した。そのパイロットの考えは正しい。戦力を決定づけるものは、Mhwの性能、パイロットの技量、友軍の編成、敵の編成、この他にも、気候条件に代表される戦域の状況など、複合的要素が絡み合っている。

 ADaMaSのウテナという技術者は本人がソレを意識していたとは思えないが、戦力を決定付けるだけのMhwを生み出した。Mhwパイロットの共通認識を根底から覆すほどのMhwが目の前に現れたとき、いや、人は未知の存在に遭遇した時、ソレを「バケモノ」と形容する。

「こりゃあ、空中での戦闘で後れをとることが想像できねぇな・・・地上戦もテストしておくとするか」

REVAZZのパイロットたちは、目の前でフワフワと下降してくるFAUABWSをただ唖然と見ていた。ここは戦場だ。目の前のFAUABWS以外にも、The(ジ・)kuynbout(クインバウト)pierrot(パイエロット)が存在していることは理解できている。そうした別の脅威がある以上、自機の動きを止めるという行為は自殺的行動に等しい。頭でそれが理解出来ていても、目の前で起きている事象や、今に至るまでの畏怖を含んだ経験が、彼らから()()()そのものを奪い去っていた。

まるで天使が舞い降りるときのような、Mhwとしては有り得ないほどに静かな着地だった。しかし、地上に降り立ったソレは、天使と呼べるような外見を持ってはいない。人類が初めて月面に降り立った時、人々が目にした白黒の映像の中で写る宇宙飛行士の方が似ている。

「地上戦となるとコイツは不要か・・・」

FAUABWSという機体名は、KissTiss(キスティス)型のMhwにFAUABWSを装着した状態を指す。その胸部に当たる部分が、まるでジェットコースターを降りるときに持ち上がる身体固定器具のように、肩部を基点として持ち上がる。そのまま、ポンチョを脱ぐかのようにユニットが単体で斜め上後方へ外れた。外れた後も胸部側にあったユニットは展開を続け、背部側と一直線上にまで到達すると、まるでホバータンクかのようにミサイルポッドとビームキャノンを前方に展開した状態で、Mhwの腰辺りの高さを維持して浮遊し続けている。さながら、空を飛ぶ魔法のマントが魔法の絨毯へと変わったといったところだろうか。

 「なるほどね・・・被るだけじゃなくて、乗ることもできるってか」

コクピット内のコンソール左上部にFAUABWSとPRIME(プライム)が並んで表示されている。赤い枠はPRIMEの方を囲んでいた。手元のレバーにあるボタンを押すと、その枠が下がり、FAUABWSに変わった。コンソールにはオートパイロットによる優先事項などの詳細と、それを変更する場合の画面に切り替わる。

「とりあえず、待機でいいか」

複数並んでいる指示項目のうち〝stay(スティ)〟を選択し、赤い枠をPRIMEに戻す。どうやらFAUABWS選択時でのレバー操作はボタンのみであり、機体そのものの操縦には影響がないようだ。

 「しまったなぁ・・・ユニット外した状態での試運転しときゃあ良かった・・・まぁ、やってないモンはしょーがないか。ぶっつけでも何とかなるだろ」

FAUABWS-PRIMEの背部では、腰部辺りにあったバックパック一体型のキャノンが通常のMhwと同じような背中の位置へとアームで位置変更されている。FAUABWS状態の場合は脇の下から砲撃するような位置だったが、これで両肩上からの砲撃位置となった。

 早速、両肩のキャノン砲が火を噴く。その直後、位置を変えようと動き出す。モデルとなったKissTissがそうだが、キャノン装備型Mhwの機動力はそれほど高いものではない。FAUABWS-PRIMEもその例に漏れずだが、あくまでADaMaS製Mhwの中ではという比較であって、他社製キャノン装備型Mhwと比較すれば機動性は高い。現状、相対しているREVAZZと比較した場合、同程度といったところか。

「もともと自分の脚で走ることなんて想定してない機体だからなぁ。もしかしたら、UNIT(ユニット)を外すこと自体、想定外なんかもしれんけどな」

FAUABWS-PRIMEには両肩のキャノン以外に攻撃手段が無いが、もちろん一般的な射撃武器を手に持つことは可能だ。だが、格闘となると話は違ってくる。ビームサーベルに代表される格闘専用武装類は、Mhwが携行するように規格されている。中には実体剣を装備するMhwもあるが、使用しない時でも手に持ち続けるようなことは無い。さらに斬撃武装ばビーム刃の精製を柄の部分で操作しているのではなく、手に持つことで回路が成立し、コクピット内でビーム刃のオン/オフを行う。FAUABWS-PRIMEの手には、その機能自体が存在していない。

 中距離戦を主戦場とするMhwにとって、必要なのは敵機との距離だ。「詰められても格闘戦で対応できる」より、「詰められたらそこで終了」とパイロットが認識することが重要となることから、中距離戦Mhwに格闘兵装が装備されていないケースは多い。敵機に距離を詰められることは、中距離戦Mhwパイロットからすればミスだ。ミスをカバーする手段が存在するよりも、〝ミスが許されない〟というプレッシャーの中に身を置くことで人間は〝集中力〟が増す。

 宇宙空間となれば話は違ってしまうが、地上戦における〝距離〟とは概ね前後左右であり、平面だ。地形的に上下が存在する戦場であった場合、一般的に有利と言えるのは〝上〟である。例えば、砲撃にしろ、狙撃にしろ、上からと下からではその射程距離が変わる。FAUABWSが空中を主戦場とするMhwでありながら、重量的に不利と成り得る中距離型Mhwである最大の理由がコレだった。〝地形を無視した地形的優位〟を常に確保する。それがFAUABWSというADaMaS製Mhwである。

「まぁ、地上戦はこんな感じか・・・使うこたぁ無いな。」

ベクスターはコンソールを操作し、待機しているFAUABWSへ指示を出した。FAUABWSが自動でPRIMEに後方から接近したかと思うと、頭から覆いかぶさるかのように、再び1つと成った。MhwとしてのFAUABWSが、再び空へ舞い上がる。

「地上戦で正々堂々ってワケにはいかないんだよね・・・悲しいけどコレ、戦争なのよね~」

高高度に位置取るFAUABWSに、REVAZZは成す術が無かった。

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