第二部 第10話 耳と目
「ヴァンピア・・・なるほど、vampireのつづりを別読みしたのか・・・いい名前の付け方してるじゃないの」
私のMhw、カンゼオンってたぶん、全Mhwの中でもトップクラスに耳とか目とかイイMhwだと思うんだよね。だから聞こえちゃうんだけどさ・・・隊長、ゼッタイ噛んだと思うんだよね・・・むしろもぅ、敵ながらナイスフォローだよね。
「へ、へぇ・・・分かるのかよ。フロイトさんよぉ、あんたのAstarothだっけか?やっぱソレ、アンタ共々、野放しにするわけにゃあイカンわ」
あ、隊長ってばそのまま押し通すつもりだ。まぁでも、〝バンパイア〟なんてまんま過ぎるから、〝ヴァンピア〟の方がオシャレだしイイよね。けど、隊長って実はスンゴい人だったんだ・・・遠目でもあの動きが有り得ないってコトは分かる。ぶっちゃけ、上官だし隊長だからそれなりの対応はしてたんだけど、1ミリたりとも尊敬はしてなかったんだよね。けど、あんなの見せられたら、尊敬の1歩手前辺りまでは譲歩できるかも。とは言っても、この戦闘をリアルで見られるのは勉強になる。私って格闘に関しては人並み程度だから、映像からでも吸収できるところは吸収しとかないと・・・え?同じ部隊なんだから直接指導してもらえばイイって?ナイな。直接教わるのは生理的にムリ~みたいな?
「よく言う・・・アンタみたいなのがStareGazerに居ることこそ放置できんさ。その牙が仲間の多くの血を吸う前に、是非とも折らせていただきたいね」
さっきからこの人、ワリと上手いコト言うなぁ。コレは尊敬できるかも。ウチの人たちって面白味に欠けるから、参考にならないモン。個人的にはなんかこう・・・キメ台詞的なのほしいよね。ヴォルフゲン・フロイトだったっけ?この人の言葉でなんかパクリっぽくてもいいから、そういうの仕入れときたいよね。
さっきから両方とも動かないな。しかも、背中向け合わせたまんまだし。このままお互いに一歩ずつ前進して、10歩目で振り返って打ち合ったりして。昔の決闘でそんなコトしてる映画見たことあるけど、今時流行らないか。そもそも2機とも近接戦闘しか・・・ってあれ?赤い方は良く知らないけど、ウチの隊長の機体って・・・イザナギだっけ?ハンドガン持ってたよね。って言うか、私から見たらそもそも、ハンドガンがメイン武装で、2人が牙とか言ってる刃物って接近されたとき用のサブ武装じゃないの?銃剣的なヤツ。まさかなんだけど、あの人、存在を忘れてるってコトはない?・・・いや、さすがにさっきからアレ振り回してるんだから、きっと弾切れかなんかよね。ま、撃ってるトコ、見たことないけど。
「しまったな・・・さっき気付いたけどよ・・・オレマシンガン持ってるじゃないか。コレ使ってりゃあ、もうちっと戦況有利になったんじゃねぇのか?」
忘れとったんかーい!いや、予想通りだけどさ。しかもソレ自白するとかってドーなのよ?
「ソレ、撃てたのか。貴重な情報をありがとう。いや、私も拡散ビーム、忘れてたんだけどね。これでお相子かな?」
オマエもかーい!ナニ、このコント。さっきまでの緊迫した戦闘のスゴさが、きれいさっぱり消え去る衝撃。この人たち、ホントに命のやり取りしてる最中の人間?
「どう?ウル。ウチの隊長、まだ生きてる?」
いや、まぁ、気持ちは分かるけどさ、生きてる?ってヒド。うん、まぁ、今から返すウルのもどうかと思うけどさ。
「それがですねぇ、アイさん?予想外に生きてます。てか、ワリと健闘してます」
「えっ!?マジか!あのAttis相手に?ぜってー死んだと思ったのに」
「ADaMaS製のおかげですかねぇ?いや~Mhwの性能って、やっぱ大事ですね」
うん、みんなヒドさはそんなに変わんなかった。まだ動きから何かを学ぼうとしたウルの方がマシな気がするよ。
「それじゃ、第2ラウンドといこうかねぇ」
相手の人がしゃべり終わった途端、2人とも距離をとったな。振り返った隊長がめずらしくハンドガン構えてる。隊長の射撃って腕あるのかな?射撃に自信のある人って、オート照準切ってるって聞いたことあるけど、隊長にそれを期待しちゃいけないよね。でも、ブラフにはなってるっぽい。Attisの方はあの武器を開いて盾として構えてる。
こんなに遠く離れてるのに、画面越しでもビリビリした空気が伝わってくる。ちょっと感動・・・こんなコトってあるんだね。辺りに木々が茂ってるのに、不思議と静か。「キュッ」っていう音が聞こえたかと思ったら、隊長がハンドガンぶっぱなしだしたよ。でも、そんなに当たってない感じ。Attisは微動だにしてないし、周囲の木々が激しく飛び散ってる。・・・ん?飛び散ってる?・・・まさか隊長・・・
「ちったぁ惑わされてくれよ?大将!」
「ちっ・・・猪突猛進バカじゃないってことかよ!」
隊長の乱射はワザとだ。あの飛び散った大小様々な木片が、少なからずAttisの視界を邪魔してるんだ。だからAttisも不用意に動かないんだ・・・スゴい。その木片を突っ切るようにイザナギがAttisとの間合いを一瞬で詰めた!すんごい低い姿勢。あの低さでMhwをコントロールできるなんて・・・短い距離だけど、重力を無視してるかのよう。
隊長のイザナギがAttisの懐に飛び込んだ!そのままvampireをアッパーのように振り抜いたけれど、これまたとんでもない速さでAttisが間合いを開いた。・・・でも、あの距離じゃあ、Attisの爪も届かないんじゃ・・・
「もらっちまったモンは、しっかり返さないとな!」
Attisの爪が開いた!掌から出るっていうビーム撃つつもり?
「えっ!?」
・・・これは・・・隊長、よく頑張ったって思う。ウルだって、ビーム撃つって思ったよ。けれど、実際に飛んできたのはビームじゃなかった。まるで手首から先に見える5本の爪そのものが飛んで来るなんてね。ここで1テンポ反応が遅れたことが隊長の敗因かな。かろうじて爪はvampire2本で弾いたけれど、その陰に隠れるようにして一緒にAttisも突っ込んで来てた。
さっきの1テンポのせいで、Attisへの反応がさらに遅れる。さっきまで爪のあった場所にAttisのシールドより1周り小さい程度の実刀が生えてる。たぶんコレ、シールド内部に収納されてて、必要に応じてスライドして出て来るんだ。隊長のvampireは爪を弾くために使ったから2機の間には無かった。後ろに退こうとしたみたいだけど、Attisの突進力の方が圧倒的に速い。初速と最高速だもん。捕まったイザナギはチェックメイトってヤツ。Attisの振りぬいた実刀がイザナギの左腕を肩の辺りから斬り飛ばしちゃった。
「って、えっ!?ウソでしょっ!!」
どうしよう、やっぱり隊長のこと、3ミリぐらいは尊敬しようかな?切り飛ばされた左腕を残った右手のvampireで突き刺したかと思ったら、そのまま振り回すなんてっ!すでにvampireの射程外だったAttisの油断もあっただろうけど、リーチが倍以上になった連結?vampireがAttisの頭部を捉えちゃった・・・いや、ホントはキッチリコクピット狙ってたんだ・・・誰も予想しないようなキテレツ攻撃にも反応したAttisが沈み込んで逸らしたんだ・・・ヤダこの2人・・・エグいわ。ここまででウルだったら何回死んでるだろぅ・・・。
どっちが有利なのか、判別できんね、コレ。しょーがない。尊敬3ミリ分、ウルが起死回生の一発ってヤツをお見舞いしてあげよう!実はさっきから、主戦場に居る相手の大型陸戦艦、タゲってるんだよね。
「ちょっと!ウル!!さっきから一人で何言ってるの?分かるように教えなさい!」
「アイさん、今ちょっと忙しいです!すいません、とりま、ポチっとな!ですっ!!!」




