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NEXT  作者: system
第十二部 confrontation(対決)
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第十二部 第7話 ポーネル・ウィルソン

 「貴方は自分の進む道の選択を誤ったのです」

私はあの当時こう考えていた。「自分のような存在が自分だけのはずがない。そしてコレは、超能力といった類のものではない」と。遥か昔に超能力がもてはやされた時代もあったと聞く。その存在を示す言葉は、今もなお細々と人々の中にあるのだろう。もし超能力が存在するのだとしても、それは特異な脳が引き起こす限られた奇跡だったのだろう。

 私のコレはそれとは違う。コレは太古というべき時代に人が持っていたモノだと思う。まだ人間という生き物と認識すらしていない頃には当たり前に誰(というのもそぐわない存在だったろうが)もが持っていたのだろう。しかしその存在はやがて言葉を持ち、文明として発達すると引き換えに、コレを失っていったのだろう。

 地球という世界で人間は生物の頂点に立った。得た文明は、世界を宇宙にまで拡大した。その新たな世界で、人間は再び言葉を失った。もちろん文明が、宇宙に人類が存在することを助けはしたが、根本的に宇宙で言葉は他者に届かない。これを補完するため、人間の中に眠る遺伝子レベルだけで保管されていた能力を引き出した。それがこの能力の正体なのだろう。

 自分のような存在はこれから数を増す。個人によって発揮される能力も様々だろう。問題は、それらの能力を〝誰〟が〝どう〟扱うかだ。この能力は間違いなく、善行にも悪行にも活用できる。

 青年の頃に描いたその思いは、戦争に向かおうとするその世界に後押しされたのは間違いない。根底にそれがあったからだろう、私は「このチカラを持つ者たちが、正しい道を選んでほしい」と願うようになった。しかし戦争は私のような1人の人間に気を遣うことなどせず、アレイス・セウという存在を利用した者たちが世界を変え、いつしかNEXT(ネクスト)という人類が生み出された。

 人間1人が持ち得る力のなんと小さきことかを、我が身を持って痛感するようになった頃、私はADaMaS(アダマス)という振興会社の局長だと言うウテナ・アカホシに出会った。もしもその直後に彼の妹であるマドカ・アカホシに出会っていなければ、私の人生が充実することは無かっただろう。彼女を目にしていなければ、Mhw(ミュー)の開発企業であるADaMaSに協力するなどという選択肢はあり得ないことだった。

 その少女は実に不思議な魅力に満ち溢れていた。少女は私の視界に入るなり、いきなりその場を宇宙に変えてしまった。出会った場所は空港のロビー。多くの人が往来し、様々な喧騒に包まれていたその場所が、音も無く、星々の光が幻想的であるだけの空間へと変わり、不思議な感覚だったが私はそこに立っていた。同じ空間に立つことを許されたのは、私とその空間を作り出した少女、そして兄のウテナだけだった。

 その空間は正しく宇宙だった。その空間で言葉を発そうとしても、言葉を振動として伝えることができない。だが、少女の言葉は頭に届く。どうやらこちらの言葉も少女に届いているようだ。局長の言葉が頭に届くことは無かったが、幸運なことに同じ空間に居ることができたおかげなのだろう、彼の心に触れることができた。ウテナの〝信念〟を知ることができたのは、今思えば人生において最大の幸運だったのかもしれない。

 その時点ですでに、ウテナ局長には反物質の概念があった。今にして思えばさらに驚くことに、その反物質が時間の概念を崩す可能性をすでに予測していた。そしてそれを含めた外宇宙探索計画を心内に秘めていた。おそらく彼の場合、外宇宙探索が先にあったのだろう。それを成すために必要なピースの1つとして、反物質を見つけたのだろう。今となれば、その計画が具体的となるためのピースが揃っているが、彼はまだ机上の空論と言うに差し支えない理論を、自分の頭の中では明確な具体性を持って〝計画〟として描くことができていたという事実は、驚愕に値する。

 ウテナの計画の中にはNEXTの存在もあった。むしろ、NEXTこそが外宇宙に先行できる人類だと考えていた。ソレは私には、NEXTに対する正しい道を示しているように思えた。他者の持たない力を利己に使わず、他者と共有できる利の為に活用する。正直なところ、彼の心内はそんな崇高なモノではなく、自らの好奇心や探求心を満たすという思い(願いに近かったかもしれない)で溢れていた。そこに他者の利が存在することにも気づいてたが、そちらが〝ついで〟であることを「申し訳ない」とすら考えていた。もしも私の力を必要とする者が居るとするならば、私は彼にこの力を預けたいと思った。彼らの誘いを断る理由はどこにも無かった。

 NEXTとして覚醒した者は、他者と相対したとき、その者がNEXTかどうかを感覚的に知ることができる。そしてNEXTの中には、これからNEXTとして覚醒を果たしそうな者を見出す力を得ている者が居る。私もその1人だ。

 私がADaMaSで営業の窓口を行っている理由は、〝NEXTを正しく導くための入り口〟であるためだ。NEXT-Leve(ネクストレベル)lが開花するのは戦場に限った話では無いが、戦場で多いことも事実。いずれ戦争でNEXTとして覚醒してしまうのならば、私の考える間違ったNEXT-Levelの使われ方がされるのであれば、それを軌道修正する手段を残しておきたい。その手段こそがADaMaS製Mhwだ。そう、ウテナ局長の生み出すMhwは、NEXT-Levelの開花を促し、NEXTとして覚醒させる力が秘められている。それは超常的な力ではなく、NEXTの力でもない。ただ単純な、1人の人間の技術力によるものだ。

 ヒトには得手不得手がある。Mhwパイロットとしてもそれは同様だ。ADaMaSはそれを見抜き、得手に沿う機能を持つMhwを造り上げる。これに搭乗するパイロットはその得手が研ぎ澄まされることで、NEXTとしての覚醒が促される。だからこそ、局長は私を〝人選〟のポジションに置こうとし、私もそれを望んだ。

「貴方はNEXTの素質を十分に持っていた。しかしながら、それを手にする資質を育めなかった。それは貴方の弱さです」

「は?NEXT?そんなのどーだっていいだろ?」

ザイクン・ネップードはおそらく、覚醒すれば私を超えるほどのNEXTに成り得た素質を持っている。軍属に成るまでの人生が彼に及ぼした影響は大きいが、それでも、もし彼が〝狂犬〟ではなく他の部隊に属していたのなら、結果は違っていたのかもしれない。しかし、彼は自ら〝狂犬〟を選んだと聞く。私から言わせれば、ソレは彼の大きな過ちだ。もう道を戻ることはできないだろう。ならばせめて、進む道を途絶えさせるのも私の役目なのかもしれない。

「貴方、いろんなゲームの大会で優勝していますよね」

「なになに?僕のファンとか止めてよ?」

「ご冗談を。しかし貴方はオンライン上でのそれは常に2位。どうしても倒せない相手が1人だけ、居ますね?」

「あぁ?だからナンだよ!」

明らかに口調が変わった。苛立ちがNEXTでなくとも解かるようだ。

「アナタがどうしても勝てない相手、〝B/B〟・・・知っていましたか?コレ、Black(ブラック)Butler(バトラー)の略称で、中の人は私なんですよ」

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