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第十一部 annihilation(消滅)
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第十一部 第10話 作戦

 「ちょっとまて!どっからだって!?」

A2にとっては〝3度目の正直〟だった。ヤーズ・エイトを消滅させ、パレス・キャニオン基地を消し飛ばしたValhalla(ヴァルハラ)は、次のターゲットにダバイを選んだ。

 ダバイという都市は海辺に位置しているが、海とはいっても〝湾〟であり、視線の向こうに水平線が広がるわけではない。見える距離の向こう側に別の大陸が見えている。そして都市そのものに軍事拠点があるわけではなく、湾から見れば都市そのものを挟む位置にある。もしその拠点を襲撃するのであれば海中から侵入したいところだが、湾口が自然に狭いうえ、海岸線に並ぶ都市部が邪魔をする。ならばと陸側から見た場合、砂漠を超える必要がある。これは自然の造り上げた防衛機構と言える地形だ。

 「海だよっ!うみっ!アイツら、都市の存在を無視して上がって来たって言ってるんだ」

砂漠を来たのなら嫌でも視界に入る。海中を来たとしても、狭い湾口の警戒網を無視して侵入することは不可能だ。誰にも、何にも気付かれずに突如湾岸に上陸することは不可能にもかかわらず、ディミトリーたちはソレをやってのけた。

 それほど大きくはない爆発音が聞こえる。艦の望遠でダバイ都市部を映し出すと、すでにそこかしこから黒煙が上がっているのが見えた。

「ダバイ対岸の地上から反物質でトンネルでも掘ったんだろ?それで湾内まで新しいルートを作ったのさ。気付いてみたらカンタンな話だけど・・・それにしても、都市部まで攻撃する必要はないはずだ」

 ブリッジの隅で黒煙の上がるダバイの様子を映し出すモニターをじっと見つめるウテナは、誰にともなく声を上げた。目的が〝StarGazer(スターゲイザー)拠点攻撃〟ならば、せっかく意表を突いた出現に成功した彼らとして、まっすぐに拠点に向かうべきだ。上手くすれば、防衛部隊の出撃前に拠点を叩けるというのに、炎の上がる都市から姿を現すMhw(ミュー)は無い。一瞬、〝また地中を移動〟しているのかとも思ったが、都市の望遠映像には新しく上がる火の手が止むことがない。

 「被害は心配だけど、もう手遅れだわ!ここはチャンスと捉えるべきよ。フォレスタ!全機出撃させて!」

ローズが振り向きながらコールマンに指示を出し、自身はMhwのもとへ向かおうと扉に向かって走り出したところで、コールマンはそれを静止させた。

「いや!3艦急速発進!!・・・チッ・・・ディミトリーのヤツ・・・」

ローズとは異なる指示を出したコールマンが見ていたものは〝全体〟だ。Valhalla出現の報と同時に、彼の脳裏には上空から見た場合の広大な地図が形成されていた。それは自分たちの位置から地図を広げ、ダバイを出現させると、望遠で見えた黒煙の位置をValhalla上陸位置としてポイントした。三角形で示された彼らの存在が、モニターで広がる黒煙に合わせて左へとゆっくり移動する。脳内でその動きが早送りされると、ディミトリー、ダバイ、A2の3点が一直線に並んだ。

 急速にエンジンが点火されると、A2の3艦はわずかに浮上し、knee-high(ニー・ハイ)だけが左に、あとの2艦は右に進路を取った。彼らの居たその場所に、反物質の矢が飛来するのが見えた。もしもあのままMhwを発進させていたら、最悪は全滅、よくても数機のMhwとそのパイロットを失っていただろう。

 「ちょっとフォレスタ!コレが解かってたの?」

「う~ん、解かってたって言うより、経験かな?貫いて余りある武器が手にあると、初手で一気に形勢を決めたいモンだよ」

「フォレスタって思ってたよりもゼンゼン戦い慣れてるのね・・・いいわ。それじゃあ午前の作戦どおりに!」

 まだディミトリーたちの動きを知ることのなかった午前中、Valhallaとの会敵を想定したブリーフィングが行われていた。海側からの侵攻は予測されていなかったが、今の反物質でStarGazer軍施設が消滅した以上、それは大した問題ではない。

 「フロイトには悪いけど、ディミトリーと対峙するのは三姫と・・・ウテナ、キミの役割だ」

すでに歴戦のパイロットがMhwと共に多数、Valhallaへ合流していることは確認されている。戦闘となればそれだけで十分に厄介な相手だが、彼らにはカーズとザイクンが居る。この2人はそのMhwと相まって、ディミトリー同様に気の抜けない相手だ。

 「・・・え?う~ん・・・なら俺は何をしろっての?」

Jabberwock(ジャバウォック)の2人にはカーズを相手してもらいたい・・・と言うか、あの機体をまともに相手できるのは2人ぐらいしか思いつかないんだよね」

 狂犬のカーズ。その名を聞いた時、フロイトの気持ちは揺らいだ。その強さに裏付けされた危険性を身をもって知っている。確かに、あのLaevateinn(レーヴァティン)とタイマンできるパイロットが居るとすれば、その搭乗Mhwも含めてフロイトとアキラ、そしてたぶん、beauty(ビューティー)beasut(ビースト)に乗るウルぐらいだろう。何より、カーズとはヤーズ・エイトでの因縁がある。

 「・・・解かった。確かにヤツは放置できない・・・アキラもそれでいいか?」

「ん?ああ。オマエがいいなら構わねぇぜ?この前局長とヤりあってたヤツだろ?見てて解かったけどよ、アレはヤバい」

「ああ、実際にヤり合ったら、もっとヤバさが解かるさ」

2人の男は黙って互いに拳を突き出し、軽く拳どうしを打ち合わせた。その様子を見届けたコールマンは、別の方向へ視線を向ける。その先に居るのはOrion(オリオン)の4人だ。

 「じゃあベルルーイ?2人のサポートをよろしく。そしてOrion・・・キミたちにはもう1人のザイクン・・・ゲームマスターだったかな?を頼みたい。それとね・・・」

ザイクンは直接的にタクヒ・メイゲツインを討った男だ。そしてそれが発端となり、ケビン・エデューソンは散った。示し合わせたワケでもなく、4人の目つきが鋭くなる。そしてその男は、ジェイク・ハローウッドを撃ち抜いた男でもある。コールマンが視線を移した先に居たのは、ポーネル・ウィルソンだった。

 「ポーネルさん、貴方の機体データ、見ましたよ。貴方もOrionと行動を共にしてもらいたい。おそらく貴方なら・・・彼を止められる」

指名を受けた当のポーネルに驚いた様子は無い。むしろ解かっていたかのようだ。あまり見ることは無いが、ポーネルの口元がニヤリと緩む。

「願っても無い。ただ・・・彼を止めるだけで収まらないかもしれませんので、ご容赦を」

 普段の紳士はどこかに隠れた。その冷たい笑みには、むしろ死神すら連想させる。誰もがこの人物はやはり怒らせてはならないと再認識するに十分な殺気だ。

「え、ええ・・・まぁ、ソレならソレでいいですよ・・・(おお、コワ)。それじゃ、オピューリア?後のコトはヨロシクね・・・」

オピューリアも氷の笑顔に引いているかと思いきや、ポーネルさんに駆け寄るとその手を握って「よろしくお願いします」と笑顔だ。気のせいか、リッカのオピューリアを見る目がいささか怖い。

「では、本命のPluriel(プルリエル)ですが・・・局長、あくまで対話の可能性を探ってください。それが無理だと判断したのなら、ムリはせず、全機の合流を待ちます。他のパイロットとMhwは、他のMhwを一切近付けないでもらいたい。極論、Pluriel、Lævateinn(レーヴァティン)Freikugel(フライクーゲル)の3機以外、全Mhwの相手をお願いする」

驚いた様子を見せたのはクルーガンとヒュートだ。慌ててナナクルやローズを見るが、2人は冷静そのもののようだ。

「ちょっとまってくださいっす。その3人以外もエース級なんすよね?それ全部相手しろって言ってるっすか?」

「それもそうだがクルーガン!何機いるか知らないが、その部隊全部をヤツら3機から引っぺがさなきゃならないんだろ?できるか?そんなん!?」

少々慌てふためく2人を優しく見つめる目が2人分あった。ナナクルとローズだ。

 「2人とも落ち着け。その役割は俺の仕事だ。Failwaht(フェイルウォート)には打って付けだからな」

「そうよ?そして私のblue-rose(ブルーローズ)のウィップも、ソレに役立つわ。だから、ね?アナタたち2人には私たちのカバーをお願いしたいのよ」

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