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第十一部 annihilation(消滅)
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第十一部 第9話 帰るべき場所

 「う~むむん・・・」

どう言ったらいいのか分からないって時に「う~むむん」なんて言う人、初めてだ。ウテナ・アカホシというADaMaS(アダマス)の局長やってるこの人は、ビックリするぐらい真っ直ぐなのに、恐ろしいほどに不器用(手は異常に器用)な人だ。

 局長の発案だって聞いたときには驚いたけれど、ダバイに行くって聞いた時、マドカたちと一緒だったとしても、ウテナ局長を映画とかに誘っちゃおうって考えてた。けれど言い出しっぺの局長は動く気配が無くて「もしかして残るの?」って思ったら、急に息が上がって苦しくなってきた。

 きっと「自分も残る」とか「2人キリになれる」とか考えちゃった弊害だったんだと思う。冷静に考えれば「恥ずかしくて舞い上がる」とかナイワ~って感じだけど、マドカとウルの2人にはきっとバレてるんだと思う。〝穴があったら入りたい〟ってのはこのコトかなんて考えてると、その2人が気を利かせたのか、メデタク私だけ残ることになった。

 かくして今、私はウテナ局長と2人で居る。局長といろんな話がしたいと思い、真っ直ぐな人だからとストレートに聞いたのは間違いだったみたい。ううん、質問がストレートであっても、受け取る局長がストレート過ぎてチガウ意味になったと言うべきかな。頭に流れて来た〝アン(私)の考察〟は、吹き出しそうになるのをガマンするのに予想以上の労力が必要だった。

 「私ってカワイイ?それとも美人?あ、もしかして、どっちでもなかったりします?」

せっかくなので、〝アンの考察〟項目を1つずつ利用してみる。

「ん?可愛いね。可愛いというカテゴリーならウルとかウチならセシルなんだろうけど、アンは一番可愛いんじゃないかな」

 この人は照れないしブレもしない。質問した本人を目の前にして真顔で言えることなの?ソレ。NEXTの私じゃなかったらこうもストレートに言われると逆にこちらが照れるところだ。けどコレは喜んでもいいんじゃないかな。一見すると(NEXTであれば)客観的な一般論に聞こえるけれど、より強力なNEXT-Levelを持つ私に聞こえたのは局長の主観による回答だった。

 「背が高い私みたいな人が傍にいると威圧的に感じます?」

「威圧・・・この場合のソレは体脂肪に左右される感性じゃないかな?ウチで言うとナナクルのMahal(マハル)は威圧的だけど、アンのsleeping(スリーピング)-beauty(ビューティー)はキレイだろ?」

これも喜んでいいらしい。体脂肪がどーのって言った直後に、例えがまさかのMhwだったのには笑ったけれど、sleeping-beautyはMhwの中でも頭長高がある。私に例えたソレをキレイだと言ってくれたんだから、局長は身長が高くスラっとした体形に美を感じる人だってことだ。よく「モデル体型だ」と言われる私は、これに該当する自信はある。けど・・・モデル体型にはよくあることで、ムネがコンプレックスとしてある。小さいつもりはないけれど、大きいと言われた試しもなければ自信も無い。これは〝アンの考察〟項目になかったけれど・・・うん、きっとムネは大事よね?

「ムネの大きい人と小さい人、どっちがどうとか、あったりします?」

「大きすぎず、小さすぎず・・・そうだね、アンはそういう意味では理想的だと思うよ?」

〝そういう意味〟ってところが・・・局長の答えらしい。しかしこれは素直に喜べないかな?女性のムネがナゼ膨らむのかはベンキョーになったけど、私のムネが理想的っていうのはつまり、〝女性にとって〟というイミであって、男性の求めるソレでも局長の好みでもない。ムネに関しては私と局長、まったくかみ合わなかったな。

 今更だけど、局長に女性の好みってものがナイのがよくわかる。それともう1つ。予想に反して局長は、機械や化学といった分野だけじゃなく有機生命体にも精通しているらしい。基本的には博識な人なんだろう。

 「人の心が読める人が一緒に居るとしたら局長は疲れたりしますか?」

「え?いや、疲れとか感じたこと無いけど?むしろそれで助かったってコトの方が多かったような気がするね」

これは聞くだけ野暮だった。こんな質問されて〝想像〟で答えるんじゃなくて〝実体験〟で答えが返ってくるとか・・・まぁ、あのマドカちゃんが妹なんだから当然と言えば当然か。だけど聞いて良かった。局長の考察が私の頬を朱に染める。

 あの日の夜、自分としても大胆な行動だったと思う。けど、その勇気が持てて本当に良かった。局長がヒトを自身の感情で見ることができるのかどうか懐疑的だったけれど、私は自身の感情で見ることができる対象だと教えてくれた(局長自身がそのことに気付いているかはやっぱり懐疑的だけど)。

 「最後の質問です!これからの闘いで、もしも私が死んじゃったら、泣いてくれますか?」

「バカなコトを言うな。もう聞こえてるだろ?次言ったらホンキで怒るよ?・・・アンが居なくなったら、僕はどこで泣けばいいのさ。それはホント・・・困るよ」

質問した瞬間、局長の内側で怒りが膨れ上がった。

 ココが勝負所だと思った自分が恥ずかしい。局長がどう思うかを考えられなかったことも・・・服装のことも!

 局長が〝死〟に対して抱く感情なんて、こんなシチュエーションじゃなかったら、私がNEXTじゃなくても解かってた。いや、状況のせいじゃない。単なる私の甘えでわがままなだけだった。そして、それはそうと、服装っていうのはちょっとイミが違う。今日の服装はキャミソールワンピ。暑かったから。けど、この服装で寝そべる局長の上からってことは・・・ちょっとだけ斜面になってる地面と重力のせいで・・・見えたかも・・・あぅ。

 恥ずかしかったはずなのに、私の頬を涙が伝う。それはそう。局長の想いがこれまでがまるでウソのように一気に流れ込んできた。でもそれはとっても心地いいものだった。

〝この子は何があっても護る。これが恋愛感情だと言うのなら、むしろそうであってくれ。アンが傍に居ないことは、何よりも苦しいんだ〟

こんなにも嬉しいことは無い。この人はきっと、誰よりも何よりも真っ直ぐな人だ。心で思っていることと言葉が一致する。ちゃんと理解することができる。言葉だけを聞いてその人を信じられる。

 これは私が子供のころ、そう、まだ家族の居る家があったころの感覚だ。ちゃんと帰る場所があるって安心できる。この人のところへ帰り、時間を過ごし、一緒に眠る。そんな当たり前の日常をこれほど嬉しく思える私は幸せ者なんだと思う。

「はい。隣に居たいです」

局長の咄嗟の動きに抱きしめられた私は、耳元で優しく言ってくれた言葉にそう答えた。


 この日の夜、ウテナとアンは夕食以降、誰の前にも姿を現さなかった。その間、アンは始終嬉しさと恥ずかしさが同居していたが、アンにはウテナの話す内容の半分も理解できなかった。

 その夜、会話に困ったウテナはついMhwについて話しだしてしまった。それはどこで終えればいいのかすら分からないままに熱を帯び、アンの頭をショートさせた。

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