第二部 第3話 神話
pentagram5人の前に並んだADaMaS製Mhw5機は青系等のカラーリングで統一されていた。太陽の光を反射させた各機体は一際美しく見える。ADaMaS製Mhwの特徴の1つとして、それぞれの軍において違和感が無いように配慮されているのだろう、StareGazer既存Mhwいずれかの外観を踏襲していることが多い。
A-111「伊邪那岐」アキラ・リオカ中佐の専用機だ。外観上はStareGazerで最初期から配備されている量産機、「REVAZZ」の前身機「VAZZ」に似ている。頭部にはブレード状のアンテナと、偏光器のようなゴーグルが装備されている。このゴーグルは、戦闘状況に応じて可動することで、メインカメラを保護する役割を持っているようだ。背部に存在するブースター類は、VAZZのソレと比較して大幅に増設されており、背中から突き出し背ビレかのように増設されたそれは、4つのスラスターが縦に並んで配置されている。これら1つ1つが独立可動をすることで、細かな調整が可能となるようだ。こうした背部の推進力強化は一般的にも見られるが、このイザナギが面白いのは、ふくらはぎ横に可動式スラスターが配備されている点だった。これらスラスターの位相を揃えることで、敵機との間合いを瞬時に詰める、もしくは広げることができるだろう。
イザナギの武装は2丁のハンドマシンガンのみだが、この銃底からは三日月の下側半分かのような実体剣が突き出ている。その位置は、グリップの手前にあり、あたかも銃を持つ手をカバーするかのようだ。完全に接近戦、それも超が付くほどの間合いでの戦闘が想定されたこのイザナギは、ダークブルーを基調とし、肩や肘、膝、ゴーグルやハンドガンなどを黒でペイントされている。
A-112「木花之佐久夜」。アイ・タマズサ少佐専用機だ。外観はREVAZZから白兵戦特化用に派生した「LENFLO」に似ている。ADaMaS製Mhwとしては珍しく、頭部のブレード状アンテナと背部に2基追加装備されている2連スラスターポッド以外に、目立つ外観上の変更箇所が無い。ただし、このスラスターポッドの可動範囲はかなり広く、基部が回転することで、脇から前面に対してスラスターを向けることも可能だ。そしてのその推進力に関して言えば、瞬発力はイザナギと並び、持続力は他を圧倒している。
指揮官機であることが前提で設計されているため、外見上に大きな影響を及ぼすことなく、各種センサー類、カメラ類の増設、強化が随所に施され、カラーリングはイザナギよりも一段濃いダークブルーが基調となっている。武装に関してもシンプルにマシンガン、シールド、サーベルとなっているようだが、左前腕部からはワイヤーアンカーが射出できるようになっているのが特徴的だ。
A-113「静御前」はリッカ・イズミ少尉の搭乗機だ。コノハナサクヤ同様に「LENFLO」の外観を持っている。カラーリングに関しては、イザナギよりも一段明るい青が採択されている。
この機体、他のpentagram配備機体と異なり、独自の「Double-Arms-System(DAS)」を搭載している。これはその名のとおり、武装が2対存在しており、背部には鎖でそれぞれの柄がつながれたサーベル、腰部リアアーマー基部にマウント可能なアームを介し、左右同時に斉射可能なガトリング、そしてシールドを両腕に装備している。DASはこれらを制御するシステムのことだ。
A-114「自来也」がタクヒ・メイゲツイン少尉の乗機となる。この機体はブルーとダークブルーが配色されているが、他の配色とは濃淡が逆である。やはり外見上は「LENFLO」だが、両腕が一回り大型化されているのが特徴的だ。これは専用大型武装である「黒王」を扱うことを前提とした処置だった。
「黒王」は超大型のナタ包丁のような兵装だ。その面積はMhwを完全に隠してしまうほど大きく、峰の厚みは通常のMhwの腕ほどもあるうえに、峯側先端辺りには、可動式のスラスターが装備され、これの取り回しを補助する仕様となっている。根本では本体からケーブルが前腕部に接続され、エネルギー供給が成される仕組みになっている。大剣である以上、攻撃特化型のように思えるが、実際には防御特化型の機体である。
A-115「観世音」。この機体は他と大きく異なる。その外観に採用されているのは、水陸両用にGMで開発されたMhw「legario」だがカンゼオンの目的は水陸両用ではない。legarioの頭部は円盤状の大きなものが横になっている(どら焼きを想像するとちょうどいい)が、この頭頂部が、まるで貝殻のように開く。頭頂部にあるアンテナが基部で回転し、内側から伸びているような形状は、まるで大型のパラボラアンテナを思わせる形状となる。この機体は電子戦闘に特化しており、そのジャミング能力は、設定如何でMhwを完全停止させてしまうほどに強力な機体である。
本来のlegarioは茶色を基調としているが、カンゼオンの機体色はやや明るめの青である。ただしこの機体、他のpentagram機体とは異なり、白がポイントに配色されている。カラーリングだけで見ればpentagramにあってもこの機体だけが異色である。
このカンゼオンを操るパイロットはウル・ハガクレ伍長だ。ちなみにこのカンゼオン、腕はあるが手が無い。代わりに、左に大型のクローが、右には前腕に対艦用大型砲が伸縮式で収納されている。他にも、腰部後方から尻尾のようなロッドが伸びており、その先にはトゲのついた鉄球が、頭部パラボラの外側には三角形の砲門を持つビーム砲が存在しており、もしも四つん這いになれば、猫のように見えなくもない。
「尻尾生えとりゃ~すっ!」
「コレ、絶対ウケ狙いだよな?実際に使えるのか・・・?」
「いやいや、アンタのエモノだって大概でしょうよ・・・それこそ使えるの?」
「黒王もちょっと羨ましいな~。けど、カッコよさなら断然、俺様のイザナギだろ?正に俺!ザ・オレ!」
「すいません隊長、おっしゃっている意味が解りません」
あまりにも独創的な各機体に搭乗者たちも色めきだっている。ADaMaS製Mhwを見た者の大半は、「よくこんなことを思いつく」と感嘆するようだ。
各機体には左胸部に共通したマークがあった。五芒星だ。黒地に青で描かれたそれは白で縁取られている。よく見ると五芒星に共通ではない箇所がある。イザナギは上部、シズカゴゼンは左上、ジライヤが右上、カンゼオンが右下で、コノハナサクヤは左下のそれぞれ先端、三角の部分が白くなっている。恐らく、部隊内のポジションを表しているのだろう。
一見するとタクヒの言うように、ウケ狙いなのかと疑ってしまいそうになるが、冷静に考えればこの5機、それぞれの特性を活かせば確かな強さを発揮することに気付いたアイは、実機を見るまでは保留としていた指揮役を引き受ける決断を下した。
「准将・・・ADaMaSってホントに凄いんですね・・・この部隊の指揮役、お引き受けします」
「本当かね?それは助かるよ。ありがとう」
「いえ、まだ不安は多分にありますが・・・」
「不安かね?」
「Mhwは最高ですよ、Mhwはね・・・。不安はパイロットの方ですよ」
「ああ、それは・・・ね。うん、手伝うからさ、頑張ろうよ、うん」
アイの口からは若干の笑いと同時にため息がこぼれ出た。