第十部 終話 祈り
「それじゃあ、ウテナのアホさ加減にも決着が着いたということで」
ホントにもぅ・・・ウテナのせいで本題に入るのが遅れたわ。
「イヤ、もう・・・ゴメンて。本題進めて」
「はいはい。えっと、ここに居るみんなのこれからの役割について話すわね」
A2は3隻の戦艦を擁する組織よ。私たちA2の首魁としてはウテナだけども、A2そのものの指揮官は違うの。もちろんその1人が全て責任を負うことはないけれど。
「A2の総指揮と旗艦knee-Socksの艦長は私、ミシェル・リーが務めるわ」
コレは自然な流れ。ミシェル姉さんはある意味、A2で唯一外部との繋がりを持つ人物ですもの。Leefの存在(公にはもちろんできないけれど)が無ければ私たちは動けないのよね。自分たちが軍事行動を取るとなって、戦争で動くお金のケタがよく分かったわ。それともう1つ、姉さんの持つ情報網は必須。これを意のままに扱えるLeef党首っていう立場も持ってる姉さんは、私たちの弱点である〝政治力〟という点において、唯一力を持ってる。おそらく、他の誰よりも広い意味で全体を見渡せるのだから、実質的なA2のアタマとして姉さんが適任なのは間違いない。
「けれど、戦闘行動が起こった場合の総司令はフォレスタ・コールマンが執り、私が補佐に入ります。その場合も乗艦はknee-Socksよ」
コレに関しても、異論のある人は居ないでしょう。コールマンは元軍人なうえに、将官だった。pentagramを指揮していただけじゃなく、彼女たちを含むもっと大きな〝大隊〟を指揮していた唯一の人物ですものね。
「よろしく頼む。後でMhwパイロットそれぞれと少し話をするので、その時にまた」
「みんなちゃんと言うこと聞くのよ?それじゃあ、戦闘時における後の2隻なんだけど、knee-highはローズが、そしてthigh-highはセシル?お願いできるかしら?」
knee-highは住環境特化型艦だから、戦闘行動にはほとんど参加しない。なんだが私だけ安全なところに隠れてるようで気が引けるけれど、立ち位置的にも私なのよね。私の乗艦は打合せ済みのコトだったけれど、セシルにとっては寝耳に水だったようで、少し驚いた表情をしているわね。
「え?私ですか?局長じゃなくて?」
「ナニ言ってるのよ、セシル。あ~のボンクラに艦長なんてできるはずナイでしょ?むしろ、ウテナだと思ってたコトにビックリよ」
「あ・・・ソウデスネ、ハイ」
そりゃね?thigh-highは整備艦だから、ウテナって発想も無かったワケじゃないけど・・・いや、やっぱり無かったわね。当然、バカ弟子3人もあり得ない。それにね・・・
「セシル?体は大事にしなきゃダメよ?まぁ、そう言いながら艦長ってのもアレだけど」
一般常識としてまだ公表できる段階じゃないんだろうけど、隠してもムダね。ただでさえマドカが居るんだし、今となっちゃアンもウルも居るんだから。あの子たちの感じたコトを聞いたら、輪廻転生ってのも信じられるわよ?胎児恐るべしってね。
他の技術系、ウテナ、クルーガン、ヒュート、ジェイク、それにユウ。この5人は基本的にthigh-high乗艦ね。それと、奥さんと離れ離れはかわいそうだから、艦の操舵でミハエルもね。ナナクルとポーネルさん、それにフロイトさんとルアンクくんはknee-socksで、操舵はポーネルさん。他はknee-highでソッチの操舵はマギーね。
「もちろんそれぞれの移動は自由よ。knee-highが住居になるんだから、1番居ることになるのはknee-highだと思うけど。それとオピューリアとベルルーイ・・・舌嚙みそうね・・・オペとベルにはMhwオペレーターを頼みたいのだけど?」
「は、ハイ!こちらからもお願いします」
うんうん、2人ともいい返事。
「では、Re:D、伊邪那岐2機によるJabberwockをベル、Thekuynbout、木花之佐久夜、静御前で編成したOrionはオペが担当を。それと三姫なんだけど・・・」
実はコレが悩みどころなのよね。まだ指名が無いのはアリスなのよ。ぶっちゃけ、マギーとアリスは逆でもいいんだけど、大丈夫かな・・・
「アリス?アナタ一番年上なんだから、しっかり頼むわよ?」
「おっけ~」
あっはっは・・・心配しか残らない返事ね。まぁ、いつもこうだと言えばそうなんだけど。前のAttis救出作戦のときは、事前打ち合わせも何もなかったのに、ぶっつけでも連携してた3人だから、まぁ、アリスがコケても問題はナイとは思うんだけどね。ただ、アリスもマギーも言動がアレなだけで、ヤルことはキッチリ以上にヤル子たちだから、大丈夫かな。
「ユウ?ここで戦場でのMhw整備を知ってるのはアナタだけだわ。アホとバカ弟子3人だと、いろんな意味でタイヘンだとは思うけど、逆に得るものもあると思うの。ガンバってね」
う~ん、なんだか押し付け感があるんだよね~。もしかしたら部隊編成で一番の貧乏くじはこのユウ・ハートレイかもしれない。正直言ってウテナは当然ながら、3バカトリオだって、その技術力は世界に誇れるだけのモノはあるのよ。ウテナの下でやってるっていうのはそういうコトだし、実際、ウテナ自身もソコは認めてる。
私が心配してるのは、彼らのトンデモ感について行けるかってコトじゃない。ホンネを言うと、ユウの技術力が分からない以上、彼ら4人の技術力に置いて行かれてしまわないかってコト。そうなると最悪の場合、自分を卑下することになりかねない。ええ、私だって認めてるし、誇らしくも思ってる。ADaMaSの技術力は今や、ウテナ1人だけじゃない。ウテナを抜きにしたとしても、他の企業には追いつけない域にあると自負してる。
「ユウなら問題ないよ、艦長・・・でいいのかな?コイツは俺のAttisを整備してたからな。ADaMaS製Mhwにも慣れてる。それに、そもそもの腕は俺が保証するよ」
あら、そうなの?フロイトさんが言うなら大丈夫かしらね。あと2,3機のMhwを新規開発するし、整備系の人手は多い方がいいしね。
さぁてと、コレで粗方決まりね。これから先は〝イバラの道〟だわ。ローズの名を持つ私が言うのもアレだけど(声には出さないわ。イジられるから・・・)。可能なコトなら、少なくともここに居る誰も失わず、〝願う先〟に辿り着きたい。けれど、これから私たちが関わるのは〝戦争〟、それも、ソレそのものへの当事者として。ポーネルさんがウテナに向かって言ってたけど、〝屍を超えていく〟覚悟は全員が持たなけりゃいけない。その覚悟とはつまり、〝誰かの死〟だ。口が裂けても、「誰も死なない」なんてことは言えない。集まってくれたパイロットたちの中には、すでにソレや近い経験をしている人達が居る。彼らはすでに超えてきたんですものね。私たちが万が一のときにもたついてたんじゃ、彼らに合わせる顔がナイってもんよね。
それにしても戦争というものが、こうも恐ろしいモノだなんてね。これまでのADaMaSとしての戦争への関わり方なんて、ある意味、表面的なものでしかなかったってことをイヤでも感じるわ。ちゃんと、正しい意味で戦争と向き合うことが出来ているのは、最前線で戦う〝兵士〟だけなんだと思い知らされるわね。戦争はチェスなんかじゃない。自らの命と相手の命、そして大切な人の祈りを背負ったそれぞれの物語なんだ。
私たちの時代での戦争は、正直言ってMhwの性能に左右される。これから向かう先で、私たちADaMaSが手掛けたMhwが、私たちの願うMhwであることを祈るばかりだ。




